ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

電子書籍元年2010 №17 「新聞の未来」

2010-10-23 | Weblog
 本と雑誌は、新聞によく似ている。まるで三兄弟のようです。まず共に紙に印刷されている。定価販売が法律で認められ、また共に凋落の道を歩んでいる。
 『新聞消滅大国アメリカ』2010年5月刊、幻冬舎新書。著者の鈴木伸元氏はNHK記者で、「NHKスペシャル」や「クローズアップ現代」などを担当。
 アメリカでは、またイギリスやフランスでもさらには日本でも、新聞が崩壊に向かっているという。なかでも新聞大国アメリカでは、ニュース紙ペーパーの多くが消滅してしまった。残った新聞も、販売部数と広告収入の激減で、苦境に追いやられている。この本を読んで、わたしは大きなショックを受けた。今回のブログは同書を参考に、「新聞」を考えてみます。

 ニューヨークタイムズの記者たちに流行したジョークは、「もし新聞業界で百万長者になりたいのなら、どうしたらいいと思うか」。答えは、億万長者から始めるのがいい。投資した資産が、どんどん減ってしまうのである。これはジョークではない。笑えない。アメリカの新聞記者のほとんどが「紙の新聞はその内に、あるいは早晩、消えうせる」と断言する。

 出版業界では新聞に近い雑誌も、部数減と広告収入減のダブルパンチを受けている。長年愛読されたはずの著名雑誌までもが、毎月毎号の赤字に耐えられず、休廃刊してしまった。いまもこの傾向は止まらない。そして出版社と書店の廃業・倒産には目を覆う。コミックも本も苦しい。

 日本の新聞の広告費は2009年に6,739億円と低下し、ネット広告7,069億円に抜かれてしまった。メディア別の広告収入は、トップがテレビ 17,139億円で前年比▼10%、ネット+1%、新聞▼19%、雑誌▼26%、ラジオ▼12%。ネット広告以外、すべて総負けの状態である。

 電通調査「2009年日本の広告費」で、メディア別の広告料を2000年と2009年でみると(金額単位は億円、伸長率%は小数点以下四捨五入、以下同様)
        新聞   雑誌   ラジオ  テレビ インターネット
 2000年  12,474   4,369   2,071  20,793    590
 2009年   6,739   3,034   1,370  17,179    7,069
 伸長率%   54     69     66    83     1198
 伸びているのは、やはりネット広告のみである。新聞はほぼ半減している。<小田光雄著『出版状況クロニクルⅡ』2010年7月刊、論創社発行>

 荒っぽい質問だが、「生活するうえで下記のうちからひとつしか利用できないとしたら、どのメディアを選びますか? テレビ、ラジオ、新聞、パソコン、携帯電話…」。NTTアドの調査結果です。数字は%。

       テレビ   新聞  パソコン  ケータイ
 20代男    13    2     46    28
 20代女    18    2     28    46
 60代男    44    14     23     6
 60代女    52    14      8    12

 若いひとほどPCと携帯電話を選び、新聞はわずか2%である。
無人島にひとり住むなら「百科事典を持っていく」。いまでは化石で、神話のような回答のようだ。ネット接続のPC1台あれば、孤島でこと足りる。
 立花隆氏は東大で10年ほど毎年、講義を受け持っているが、開講初日にはいつも「新聞を読んでいますか」と質問し、読んでいる学生に挙手させてきた。「かつて200人の中で、半分くらいが新聞を読んでいたが、直近ではその大教室で、2~3人しか手を挙げなかった」

 ところで新興国の新聞事情をみると、各国ともこの数年、販売部数は伸びている。2006年と2008年の対比でみると、伸び率%は、
  ブラジル      +21
  インド        +20
  南アフリカ共和国 +12
  チャイナ      +4
  ロシア       +2
 しかしこれらの国も、インターネットの普及とともに、近いうちにマイナスに転じるであろう。自由な表現が制圧されているチャイナやロシアの伸び率がわずかなのは、まもなく新聞の凋落が始まることの前兆に思えてならない。中ロ両国のPC普及率は高い。

 ITの進化と共に、10年か15年後か、あるいはもっと短い期間で、メディアのどれもが、大きく変化してしまっているであろう。アメリカのマスコミ関係者は一様に語る。「問題は、どのように変わるのか、いまはまったく予想がつかないということです」
<2010年10月23日>あえて実名記載です。南浦邦仁、2011年5月8日。
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