ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

月給倍増 (幸福について14)

2012-02-15 | Weblog
 かつての日本に所得倍増という計画がありました。昭和35年6月の安保反対の大闘争のあと、翌月に内閣を岸信介から引き継いだ首相池田勇人は、持論の「月給二倍論」を発展させた「所得倍増計画」を発表しました。「わたしはウソを申しません」が当時、流行語になります。またこの年の成長率は13%を超え、倍増計画は数年にして達成されました。現在の日本ではまるで夢であったような実話です。

 そしていま中国が同様の方針を打ち出しました。2月9日の日経新聞によると、「中国政府は8日、2015年までの5カ年計画で、最低賃金を毎年13%以上引き上げる方針を打ち出した」。また2015年までに都市部での新規雇用を4500万人増やして、都市での失業率を5%以内に抑える目標も掲げた。
 人件費の上昇で製造業などは負担が大きくなるが、国民の購買力向上で販売高、内需が拡大する。各地で起きているストライキなどの賃上げを求める動きに配慮した発表ともみられています。
 しかし中国は広い。地方ごとで経済発展状況が異なるため、最低賃金に格差がある。広東省深玔市の最低賃金は月1500元(約1万8000円)と高い一方、内陸部の江西省は610~870元(7300~10400円)。
 現地の日系部品メーカーは「過去5年間で人件費は2倍程度上昇した。日本向け部品の価格は、引き上げが難しいため、さらにコストが上昇すれば、東南アジアへの工場移転を考えなければならない」

 東アジア各国の人件費(実勢月収)概数をみてみましょう。
  中国    462米ドル(35600円)指数100
  タイ    427(32900円) 92
  ベトナム  152(11700円) 33
  カンボジア 125(9600円) 27
  ミャンマー 52(4000円) 11

 年収・月収・指数をJETROの発表でみてみます。一般ワーカーの実勢賃金です。例えば深玔市の最低賃金は上記月約1万8000円ですが、下記では実勢27400円ほどです。KLはクアラルンプール、ラオスは未調査。
  マレーシアKL  年収5615米ドル・月収468ドル・36000円・指数100
  中国 上海       5609・467・36000円・100
  中国 深玔       4265・355・27400円・76
  タイ バンコク     5125・427・32900円・91
  フィリピン マニラ   3897・325・25000円・69
  インドネシア バタム島 3451・288・22100円・61
  インドネシア ジャカルタ3247・271・20800円・58
  ベトナム ホーチミン  1891・158・12100円・34
  カンボジア プノンペン 1504・125・9700円・27
  バングラデシュ ダッカ 1015・85・6500円・18
  ミャンマー ヤンゴン  629・52・4000円・11
 日本貿易振興機構JETRO「第21回アジア・オセアニア主要都市/地域の投資関連コスト比較」2011年4月より。

 大前研一氏は日本を月収20万円としてブルーカラーの数字を、
  日本   20万円(指数100)
  中国   4万円 (20)内陸部です。5年後には10万円の予測。
  タイ   3万円 (15)
  ベトナム 1万円 (5)
  ミャンマー 2千円(1)日本のなんと100分の1。

 ベトナムもこれから大幅に人件費が上昇するとみられています。日本企業がミャンマーに注目するのは、「ポストベトナム」だそうです。勤勉で手先が器用で忍耐強いミャンマー国民は、世界の企業から垂涎の的の労働力なわけです。また未開発の資源がたくさん眠っています。
 しかし経済的な成長と高収入が幸福を実現するのでしょうか? ブータンのG N Hでもみましたが、やみくもなG D P志向は国民を不幸にしてしまいます。
 
 ミャンマーのタウンルイン副鉄道相はダウェー地区開発について、市民グループに対して次のように語っている。「経済開発は国の発展だけではなく、地元住民のためのものだ。開発が住民に悪影響を与えるのなら、慎重に検討せざるを得ない」
 キンマウンソー第2電力相はダウェー開発プロジェクトのうち、石炭火力発電所の建設を、環境汚染の危険を理由に中止した。
 またテインセイン大統領は昨年9月、反対世論が沸騰した中国企業による北部カチン州のイラワジ川巨大ダムの建設の中断を発表し、国民の信頼度が高まっている。
 市民グループは「地元に雇用をもたらす開発自体に反対はしない。しかしこれまで開発とは無縁だった住民は、公害や環境破壊など負の側面をまったく知らないのだ」(毎日新聞1月13日 東京版朝刊)

 ビルマ(ミャンマー)にとって、いちばんの難問はこれから押し寄せる外資を国民のためにどう生かすか、という点にある。ビルマが資源大国ならではの罠に陥り、外国人投資家や国内のエリート層が暴利を貪る一方で、一般市民がないがしろにされるリスクはもちろんある。(「Newsweek」2月8日)
<2012年2月15日 連載名を「幸福について」に変更しました>
コメント (2)
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