世の中に不思議なものは数多いですが、お金はその筆頭かもしれません。無ければおおむね不幸ですが、余るほどたくさんあるからといって、必ずしも幸福であるともいえません。骨肉の争いは貧乏人にも、大富豪の肉親間にも起こります。かえって富が大きいほど、その激しさと醜さはひどいものがあります。奪うものが乏しい所には、大戦争は起きようがありません。
日本列島の内戦史は、弥生時代にはじまるといいます。蓄積の乏しい縄文時代には、ケンカはあっても戦争はなかった。食糧の備蓄がはじまった弥生から、富の奪い合いの戦闘がはじまったと、考古学者はいいます。
だいたい紙切れが1万円だったり千円だったりします。一体1枚の製造原価はいかほどでしょう。日本のお金でいちばん価値が高いのは、1円玉だそうです。そもそも材料のアルミニューム代は一個作るのに20銭かかるそうです。製造費などを加えたら、1円近い原価になりそうです。もっとも原価率の高い貨幣でしょう。たかが1円と笑えません。バチが当たります。三味線並みの話しですが。
10円玉も銅が95%を占めています。これも原価率は低くはないはずです。反対にいちばん安く製造出来るのが、やはり1万円札でしょうね。
かつての十万円記念金貨は金の含有量が少なく、ニセ硬貨が出回ったのはなるほどと思います。金貨の正式名は「天皇陛下御在位六十年記念硬貨」。1986年(昭和61年)に発行されました。
池上彰、岩井克人おふたりの対談から「お金のギリシャ哲学」を紹介します。岩井は、人類の知恵の根っことお金は、切っても切れない縁にあるといいます。英国のシーフォードというギリシャ古典研究家の数年前の発表に、岩井は衝撃を受けたそうです。わたしも驚きました。
<岩井> 古代ギリシャが哲学や科学、民主主義や文学に至るまで、現代文明の基礎を生むことができたのはなぜか。その理由が「ギリシャが世界史で初めて完璧な貨幣経済になったから」だと、シーフォードはいうのです。紀元前7世紀頃からドラクマという貨幣が流通し始めました。
<池上> 経済学者ではなくギリシャ古典学者が貨幣を論じるというのが興味深いですね。でも、貨幣経済の誕生と哲学や科学や文学に、どんな関連性があるのでしょうか?
<岩井> お金というのは、貝殻や金属としての価値をはるかに超えた、抽象的な価値として人々の間で流通します。貨幣経済に生きることによって、ギリシャ人は、この世界には具体的なモノとは次元を異にするイデアとでもいうべき普遍性があることを、日常的に知ることができたわけです。
現実の具象から、普遍的な抽象を取り出し法則化する。これは哲学や科学です。お金を使う時は、人間は身分を超えて平等になる。これが民主主義です。お金によって共同体的な束縛を失った個人が起こす悲劇や喜劇を描くのが文学です。すべてお金がイデアであることが生み出しているのです。
<池上> 人間の文明が誕生するよりも、お金が生まれた方が先だったというわけですか。ということは、文明がある限り私たちは未来永劫お金から離れることはできないということになる。
う~ん。うなってしまいます。2700年も前に、世界史上はじめての貨幣経済を構築したギリシャ。そこから哲学や科学、文学さらには民主主義まで発展させてきたのは古代ギリシャ人だったのですね。
そのギリシャは日本のオリンパスをはるかに凌駕する粉飾決算を引き金に、欧州のみならず世界経済を揺るがしているわけです。ぜひ2700年間の金銭哲学を活かして、偉大なるお金思想を世界に向けて開花させていただきたいものです。
ところでオリンパスの社名は、ギリシャ神話の山、オリンポスからきています。ギリシャは金銭哲学と実に縁が深い。次回は「神とお金」について、考えてみたいと思っています。
○参考引用資料
池上彰・岩井克人対談「お金の正体とは何か?」『日経ビジネス』1月16日号
<2012年2月19日>
日本列島の内戦史は、弥生時代にはじまるといいます。蓄積の乏しい縄文時代には、ケンカはあっても戦争はなかった。食糧の備蓄がはじまった弥生から、富の奪い合いの戦闘がはじまったと、考古学者はいいます。
だいたい紙切れが1万円だったり千円だったりします。一体1枚の製造原価はいかほどでしょう。日本のお金でいちばん価値が高いのは、1円玉だそうです。そもそも材料のアルミニューム代は一個作るのに20銭かかるそうです。製造費などを加えたら、1円近い原価になりそうです。もっとも原価率の高い貨幣でしょう。たかが1円と笑えません。バチが当たります。三味線並みの話しですが。
10円玉も銅が95%を占めています。これも原価率は低くはないはずです。反対にいちばん安く製造出来るのが、やはり1万円札でしょうね。
かつての十万円記念金貨は金の含有量が少なく、ニセ硬貨が出回ったのはなるほどと思います。金貨の正式名は「天皇陛下御在位六十年記念硬貨」。1986年(昭和61年)に発行されました。
池上彰、岩井克人おふたりの対談から「お金のギリシャ哲学」を紹介します。岩井は、人類の知恵の根っことお金は、切っても切れない縁にあるといいます。英国のシーフォードというギリシャ古典研究家の数年前の発表に、岩井は衝撃を受けたそうです。わたしも驚きました。
<岩井> 古代ギリシャが哲学や科学、民主主義や文学に至るまで、現代文明の基礎を生むことができたのはなぜか。その理由が「ギリシャが世界史で初めて完璧な貨幣経済になったから」だと、シーフォードはいうのです。紀元前7世紀頃からドラクマという貨幣が流通し始めました。
<池上> 経済学者ではなくギリシャ古典学者が貨幣を論じるというのが興味深いですね。でも、貨幣経済の誕生と哲学や科学や文学に、どんな関連性があるのでしょうか?
<岩井> お金というのは、貝殻や金属としての価値をはるかに超えた、抽象的な価値として人々の間で流通します。貨幣経済に生きることによって、ギリシャ人は、この世界には具体的なモノとは次元を異にするイデアとでもいうべき普遍性があることを、日常的に知ることができたわけです。
現実の具象から、普遍的な抽象を取り出し法則化する。これは哲学や科学です。お金を使う時は、人間は身分を超えて平等になる。これが民主主義です。お金によって共同体的な束縛を失った個人が起こす悲劇や喜劇を描くのが文学です。すべてお金がイデアであることが生み出しているのです。
<池上> 人間の文明が誕生するよりも、お金が生まれた方が先だったというわけですか。ということは、文明がある限り私たちは未来永劫お金から離れることはできないということになる。
う~ん。うなってしまいます。2700年も前に、世界史上はじめての貨幣経済を構築したギリシャ。そこから哲学や科学、文学さらには民主主義まで発展させてきたのは古代ギリシャ人だったのですね。
そのギリシャは日本のオリンパスをはるかに凌駕する粉飾決算を引き金に、欧州のみならず世界経済を揺るがしているわけです。ぜひ2700年間の金銭哲学を活かして、偉大なるお金思想を世界に向けて開花させていただきたいものです。
ところでオリンパスの社名は、ギリシャ神話の山、オリンポスからきています。ギリシャは金銭哲学と実に縁が深い。次回は「神とお金」について、考えてみたいと思っています。
○参考引用資料
池上彰・岩井克人対談「お金の正体とは何か?」『日経ビジネス』1月16日号
<2012年2月19日>