ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

腹いっぱい! <幸福について16>

2012-02-20 | Weblog
 米国の心理学者のマズローがとなえた「欲求の5段階説」は有名です。発表されてから半世紀はたつはずですが、いまだによく言及されます。やはり真理を射抜いているからでしょう。
 彼によれば、人間の欲求は低次元から高次まで5段階からなっている。まずいちばん基本が生理的欲求。そして第2段階が安全欲求で、第3が所属の欲求、第4に承認、最高位は達成が困難な自己実現の欲求。
 最底辺に位置づけられる「生理的欲求」とは、水を飲み食べ物を摂取して生きていくという動物にとって最も大切で不可欠な要素です。もしも所属メンバーが食べ物を入手できない組織なり国家があるとしたら、そのリーダーは存在してはいけない。滅びるべき指導者のはずです。いままた北朝鮮がそのような危機にあります。

 ソウルのジャーナリスト、朴承氏が北朝鮮住民6人の肉声を伝えています。昨年の12月末の金正日死去後から1月11日まで、中国国境に近い北朝鮮に住むひとたちの貴重な声です。彼らは命がけです。もしもこのような話しをしたことが官憲に密告されれば、収容所に放り込まれるのは必至です。6人の悲痛な叫びから、「食事」に関する部分だけを抜粋しました。

Aさん 近ごろは食糧配給もないし、月給もすぐもらえません。情けない暮らしです。月給は三千ウォン(2400円)ちょっとで、お米二キロしか買えない。それで家族がどう暮らしますか。山に畑をつくって、そこから収穫したものを食べてますよ。

Bさん 配給も出ません。鉱山などで働いている人々は配給が出ますが、小企業所で働いている人には配給がありません。秋に農場に行って、ジャガイモを二百五十キロもらいました。三人の家族で、ジャガイモ二百五十キロがすべてです。母が商売をしておりお米を少しずつ買って、ジャガイモなどと混ぜて食べてます。母は副食物の商売をしています。畑で育てた白菜などを持って来て、夏に植えたトマトなどを秋に売ります。

Cさん 私は、中国とつまらない商売を少しやっています。一日儲けて、シレギグック(干し菜のスープ)にご飯を食べてます。ご飯は、トウモロコシにお米を少し混ぜて食べてます。暮らすのが大変です。配給は全然ありません。

Dさん 私は薬草商売をしています。農村の人々が掘って冬に乾かした薬草を買って来て、売る。たとえば五ウォンで買って七ウォンで売り、二ウォンの利益(1円60銭)で暮らしています。夫婦と子供一人の三人家族ですが、国家が配給するものは一つもないので、自ら商売して儲けて暮らさなければなりません。(ため息をついてから、これからの北朝鮮について)人民たちが安心して暮らせる気楽な国になったらいいと思います。食べる問題さえ解決されれば、何の懸念があるでしょうか。配給もなく、自らの力で暮らさなければならない。それがどれほど大変か。疲れて苦しいですよ。

Eさん 人が生きる上では、お腹がいっぱいになってこそ幸福なのに、米粒を数えるようにしか食べられないので、本当にとても大変です。一日でも早く豆満江を渡らせてくれるなら、私は靴下を脱いで素肌の足でも川を渡ります。(配給は)少しずつしかもらってません。とても足りません。…あるときはトウモロコシひと掴みしか出ません。この程度で、どうやって暮らすことができるというんですか。

Fさん 夫と娘と三人で暮らしていますが、食事は一日に一食くらい。ほとんど食べられません。悲惨な暮らしです。…(家族を残してひとりで)北朝鮮から脱出したい。私はいま、暮らすのが大変だ。川を渡れても渡れなくとも、たとえ途中で(射殺されて)死ぬことがあっても、命をかけたい女です。たった一日でも腹一杯食べることが、最大の幸せだと思っています。

 これまで北朝鮮に食糧支援をしていた中国は、ずっと送っていないという。おそらく北朝鮮をとことん困窮させ、追いつめられた金政権が中国に土下座し救いを求めれば支援する。そして完璧に属国化する。実質は国というよりも「半島省」であろう。狙いは豊富な鉱物資源などであるとしか考えられない。人口が餓死で大幅に減ろうが、中国の支配層には関係のない話しなのであろう。中国はそういう戦略をたてる国のようだ。
 北朝鮮の実情は、あまりにも悲惨である。何とか、みなが腹いっぱい食べる方策はないのであろうか。なお世界70億人のうち10億人が飢餓状態ともいう。
参考書 「北朝鮮市民への携帯電話」朴承 『諸君!』2月臨時増刊号 北朝鮮特集 文藝春秋
<2012年2月20日 書くつもりだった「お金の話し」は延期しました>

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする