ふろむ播州山麓

旧住居の京都山麓から、新居の播州山麓に、ブログ名を変更しました。タイトルだけはたびたび変化しています……

京のタクシードライバー <幸せシリーズ26>

2012-03-23 | Weblog
 友人から聞いた話しです。時間が間に合わないので、自宅の太秦からJR京都駅までタクシーで向かったそうです。太秦はなかなか読めない地名ですが「うずまさ」。東映の映画村や弥勒菩薩の広隆寺が有名です。京都駅までならタクシー料金は3千円くらいするのでは、といらぬ心配をしてしまいました。
 ところで偶然に乗ったタクシーの運転手さんが、とても感じのいい方でまた話し好き。わたしの友人は女性ですが、話しを聞き出すベテランです。彼女のブログ「太秦からの映画便り」が好評ですが、いつも映画監督とのすばらしい対談を掲載しておられる。映画好きにはおすすめブログです。

 さてその運転手さんですが、語られた経歴が実にユニークです。ほんの数年前まではサラリーマンでした。社名を聞けばだれでもが知っている超有名企業。今年度も大黒字を計上する優良大会社です。彼は役員でした。何期でも続けられたのに、わずか1期2年で会社を辞めてしまった。奥さんは何といったでしょうね。
 退職金はかなりの額でしょう。まず夫婦で海外旅行三昧。また車が好きなので高級外車も購入。しかし退職後1年ほどで、落ち込んでしまったそうです。「残りの人生、何をして生きていけばよいのか……?」
 悩んだ挙句の結論は、自分が好きなことに生きがいを求めよう、ということだったそうです。好きなのは自動車の運転と京都。東京人の彼はまず、京都の岡崎に中古の狭いマンションを購入しました。東京の自宅には妻と独身の息子がふたり住まい。単身の彼は京の町を毎日走りたくて、タクシー会社に就職しました。
 「京都は大好きで若いときから何度も旅行で来ていました。名所旧跡も結構くわしいのです。いまは観光のお客さんを案内してあれこれ説明するのが、最高の楽しみです。地元のお客さんにも喜んでもらっていますよ。というのは京都の道路は、ほぼすべて走って覚えました。通り名をまず記憶し、数え切れないほどの町名もいま覚えつつあります」
 勤務は週4日ほど。休日にはいつも未開拓地を訪れる。また読書家で、京都の歴史や宗教、食や伝統工芸そして庭園史や風俗にも精通しておられるそうだ。「しかし大切なのは、知ったかぶりをしないこと。自分は詳しいと自負されているお客さんを、決して越えてはいけませんからね」
 東京の奥さんは度々京都にやって来る。何しろ狭いながらも無料の宿があるのです。「不思議なもので、退職してから夫婦仲がよくなりました。役員といってもサラリーマンですよ。かつては自分が幸せだと思ったことは本当に少なかった。いまが最高の人生です」

 このブログ前々回でセレブな奥さま方を紹介しました。京の料亭に来た彼女たちがこの話しを聞いたら、どう思うでしょうか?
<2012年3月23日>
コメント (2)
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