あんたはすごい! 水本爽涼
第七十一回
「あっちは偉く盛り上がってるな」
別に愚痴を吐くつもりはなかったのだが、今ひとつ面白くなかったのか、自然と口にしていた。
「あらっ! 少し焼いている? 満君」
しまった…と思った時は、もう遅かった。早希ちゃんの餌に私は、まんまと釣り上げられた格好だった。
「馬鹿なことを云うんじゃないよ。どうして俺が焼かなきゃなんないのさっ」
「フフッ、それわね、少し私に気があるとかぁ~」
「怒るぜ」
私は笑って軽く流した。
「冗談よぉ~、満君たら、本気にするんだから」
その時、ママが氷を補充したアイスペールをカウンターへ置いた。
「はいっ!」
「あっ! どうも…」
早希ちゃんはアイスペールを持つと、元のボックスへ戻ろうとした。
「ほどほどにねっ」
「はいっ!」
後ろ姿の早希ちゃんにママが言葉のボールを投げ、早希ちゃんは振り向かずにそのボールを掴(つか)んだ。いつもながら気持ちがいい返事をする早希ちゃんである。もちろん、ママに対してであり、私に対してではない。その早希ちゃんは、もう、カウンターから遠ざかっていた。

第七十一回
「あっちは偉く盛り上がってるな」
別に愚痴を吐くつもりはなかったのだが、今ひとつ面白くなかったのか、自然と口にしていた。
「あらっ! 少し焼いている? 満君」
しまった…と思った時は、もう遅かった。早希ちゃんの餌に私は、まんまと釣り上げられた格好だった。
「馬鹿なことを云うんじゃないよ。どうして俺が焼かなきゃなんないのさっ」
「フフッ、それわね、少し私に気があるとかぁ~」
「怒るぜ」
私は笑って軽く流した。
「冗談よぉ~、満君たら、本気にするんだから」
その時、ママが氷を補充したアイスペールをカウンターへ置いた。
「はいっ!」
「あっ! どうも…」
早希ちゃんはアイスペールを持つと、元のボックスへ戻ろうとした。
「ほどほどにねっ」
「はいっ!」
後ろ姿の早希ちゃんにママが言葉のボールを投げ、早希ちゃんは振り向かずにそのボールを掴(つか)んだ。いつもながら気持ちがいい返事をする早希ちゃんである。もちろん、ママに対してであり、私に対してではない。その早希ちゃんは、もう、カウンターから遠ざかっていた。