あんたはすごい! 水本爽涼
第八十回
これは全く予想外の展開で、これでは大玉と小玉の関連は…などと小難しく考えている雰囲気ではない。加えて、カラオケの音量が、けたたましく、耳障(ざわ)りなくらいだ。当然、ママや早希ちゃんと語らう機会もないだろうと思え、多くの客で、ごった返す中、私は早々に帰ることにした。結局、この日はママに頼んで作って貰ったコーク・ハイを一杯、飲んだだけだった。
「また、来ます。お勘定、この次に回しといて…」
小忙しく手を動かすママへの気遣いで、そう声をかけ、私は店を出ようとドアに向かった。
「悪いわねえ。また、お近いうちに…」
手を止める余裕もないほどのオーダー対応を余儀なくされているママだが、ほんの束の間、手を止めてニコッと笑ってくれた。こういう小さなサービスが顧客を掴(つか)んで離さないのだろう。私はここでも一つ、商売の有りようを勉強させて貰った気がした。
こうして、この一日は流れ去り、いよいよ歳末商戦の師走に突入していった。みかんでの確認の機会を逸した私だったが、実は他にも目的はあり、訊ねたいと思っていたのである。沼澤氏とは、ここしばらく出会わず、胸襟を開くチャンスに恵まれていなかった。氏に出会ったなら、会社のことも玉のことも洗い浚(ざら)い話して、今後の対策や心構(がま)えなども訊きたい、と思っていたのである。

第八十回
これは全く予想外の展開で、これでは大玉と小玉の関連は…などと小難しく考えている雰囲気ではない。加えて、カラオケの音量が、けたたましく、耳障(ざわ)りなくらいだ。当然、ママや早希ちゃんと語らう機会もないだろうと思え、多くの客で、ごった返す中、私は早々に帰ることにした。結局、この日はママに頼んで作って貰ったコーク・ハイを一杯、飲んだだけだった。
「また、来ます。お勘定、この次に回しといて…」
小忙しく手を動かすママへの気遣いで、そう声をかけ、私は店を出ようとドアに向かった。
「悪いわねえ。また、お近いうちに…」
手を止める余裕もないほどのオーダー対応を余儀なくされているママだが、ほんの束の間、手を止めてニコッと笑ってくれた。こういう小さなサービスが顧客を掴(つか)んで離さないのだろう。私はここでも一つ、商売の有りようを勉強させて貰った気がした。
こうして、この一日は流れ去り、いよいよ歳末商戦の師走に突入していった。みかんでの確認の機会を逸した私だったが、実は他にも目的はあり、訊ねたいと思っていたのである。沼澤氏とは、ここしばらく出会わず、胸襟を開くチャンスに恵まれていなかった。氏に出会ったなら、会社のことも玉のことも洗い浚(ざら)い話して、今後の対策や心構(がま)えなども訊きたい、と思っていたのである。