あんたはすごい! 水本爽涼
第八十四回
私の勘は、ものの見事に当たっていた。これが宝クジなら、ほぼ間違いなく億万長者になっているように思えた。その日の夕方、私はA・N・Lで軽い夕食を済ませ、みかんへ寄った。準備中の札のかかったドアを開けると、客は誰もいなかった。時間が時間だから、まだ分からんが…と思いつつ、ドアを閉じた。
「いらっしゃい!」
声が重複して響いた。見れば、早希ちゃんの横にママがすでにいて、二人はカウンターの酒棚前に立っていた。先に電話してあるから、これも当然か…と、思いつつカウンター椅子へ座った。
「この前はサービス出来なかったから…」
ママはニッコリと愛想笑いして私を見た。一応、剃り残しはないな…と思いつつ、顎(あご)の辺りに目をやった。
「そうそう、声もかけられなかったからさあ、ごめんね」
早希ちゃんから殊勝(しゅしょう)な言葉が出た。不吉だ…と思った。
「で、その後は、どう?」
「その後って?」
早希ちゃんが、マジで訊いた。
「だから、混んだ日から、何か変わったことはなかった? ってことさ」
「それがさあ~、混んだ後、二日は閉めてたからね。あったのかも知れないけど、なかったわけ…」
「そうか…。店やってたら、混んでたかもなあ」
私も早希ちゃんの云い分には一理ある、と思った。

第八十四回
私の勘は、ものの見事に当たっていた。これが宝クジなら、ほぼ間違いなく億万長者になっているように思えた。その日の夕方、私はA・N・Lで軽い夕食を済ませ、みかんへ寄った。準備中の札のかかったドアを開けると、客は誰もいなかった。時間が時間だから、まだ分からんが…と思いつつ、ドアを閉じた。
「いらっしゃい!」
声が重複して響いた。見れば、早希ちゃんの横にママがすでにいて、二人はカウンターの酒棚前に立っていた。先に電話してあるから、これも当然か…と、思いつつカウンター椅子へ座った。
「この前はサービス出来なかったから…」
ママはニッコリと愛想笑いして私を見た。一応、剃り残しはないな…と思いつつ、顎(あご)の辺りに目をやった。
「そうそう、声もかけられなかったからさあ、ごめんね」
早希ちゃんから殊勝(しゅしょう)な言葉が出た。不吉だ…と思った。
「で、その後は、どう?」
「その後って?」
早希ちゃんが、マジで訊いた。
「だから、混んだ日から、何か変わったことはなかった? ってことさ」
「それがさあ~、混んだ後、二日は閉めてたからね。あったのかも知れないけど、なかったわけ…」
「そうか…。店やってたら、混んでたかもなあ」
私も早希ちゃんの云い分には一理ある、と思った。