あんたはすごい! 水本爽涼
第七十八回
居間の側壁近くには、私の都合でそうなったのではないが、お誂(あつら)え向きの彫刻の美術像があり、そこへハンガーを掛けておくのが習慣となっていた。私の課長昇進を祝って、上司の鳥殻(とりがら)部長から戴いた銅像なのだが、大き過ぎてどうも置き場がなく苦慮していると、上手(うま)くしたもので居間の一角にスッポリと収納できるスペースを見出(みいだ)し、そこへ置いたのだ。丁度、像の一部の出っぱりにハンガーの掛け金が、これも上手い具合にピタリと合い、そこへ掛けておくのが私の常識となっていた。この日も当然のように掛けてあったのだが、私はバタついてハンガーを手に取り、背広上着のポケットを、まさぐった。すると、やはりあの時にポケットへ入れた紫水晶(アメジスト)の小玉が出てきた。どこへやったとか、置いたり出したことが一切ないのだから、それは当然なのだが、そのガラス玉状の小玉は紫がかった透明色で、これといった何の変哲もない、ただの水晶玉として私の目の前に存在した。上、右、斜め、左、下と透かして見たが。やはり、ただの石であった。もし、私の推理通りに、みかんの酒棚に置かれた玉に呼応して、この玉が異様な光を放っていたとすれば、これはもう、科学を超越した大ごとなのである。よし! この次、みかんへ行き、酒棚の玉が異様な光を帯びて渦巻いた時に、この小玉がどうなるかだ…と、私は確認してみることにした。加えて、その時点で私の身や周辺で何が起こるかも確認せねば…と思った。
第七十八回
居間の側壁近くには、私の都合でそうなったのではないが、お誂(あつら)え向きの彫刻の美術像があり、そこへハンガーを掛けておくのが習慣となっていた。私の課長昇進を祝って、上司の鳥殻(とりがら)部長から戴いた銅像なのだが、大き過ぎてどうも置き場がなく苦慮していると、上手(うま)くしたもので居間の一角にスッポリと収納できるスペースを見出(みいだ)し、そこへ置いたのだ。丁度、像の一部の出っぱりにハンガーの掛け金が、これも上手い具合にピタリと合い、そこへ掛けておくのが私の常識となっていた。この日も当然のように掛けてあったのだが、私はバタついてハンガーを手に取り、背広上着のポケットを、まさぐった。すると、やはりあの時にポケットへ入れた紫水晶(アメジスト)の小玉が出てきた。どこへやったとか、置いたり出したことが一切ないのだから、それは当然なのだが、そのガラス玉状の小玉は紫がかった透明色で、これといった何の変哲もない、ただの水晶玉として私の目の前に存在した。上、右、斜め、左、下と透かして見たが。やはり、ただの石であった。もし、私の推理通りに、みかんの酒棚に置かれた玉に呼応して、この玉が異様な光を放っていたとすれば、これはもう、科学を超越した大ごとなのである。よし! この次、みかんへ行き、酒棚の玉が異様な光を帯びて渦巻いた時に、この小玉がどうなるかだ…と、私は確認してみることにした。加えて、その時点で私の身や周辺で何が起こるかも確認せねば…と思った。