あんたはすごい! 水本爽涼
第七十二回
「ねえねえ、会社で何があったの?」
「えっ? ああ、さっきの続きね。会社の契約が俄かに入り出して、課の成績が急アップ!」
「あらまあ」
「その原因というのは、取引先の新製品が馬鹿売れしたからなんですが…」
「それって、このせいなのかしら?」
ママは背の酒棚に飾られた水晶玉を指さした。
「ええ、まあ…。考えようによっては、これも偶然なんでしょうが、その逆も考えられる訳で…」
「なんか、もうひとつ煮えきらないわね」
私は防戦一方になった。ママの疑問を完全否定し得る根拠がないのだった。そうかといって、玉の霊力のせいです…と断言できる根拠もないから、話に鋭く踏み込めなかった。
「ママの方は?」
「私? 私の方…。そうねえ…、そんなに変わんないけど、金離れのいいお客様が付いたことくらいかしら。まあまあね…」
そう云うと、ママはニコリと笑った。女性ならいいが、女性ではないから、美形でも今ひとつ、グッと、そそられるものがない。もう一人の早希ちゃんは真逆で、そそるものはあるが、どうも癒(いや)されなかった。気持が少し昂(たかぶ)っても、カウンターぎみのパンチある言葉で萎(な)えた。他の客には結構、色っぽく話しかけるのだから、私には解(げ)せなかった。

第七十二回
「ねえねえ、会社で何があったの?」
「えっ? ああ、さっきの続きね。会社の契約が俄かに入り出して、課の成績が急アップ!」
「あらまあ」
「その原因というのは、取引先の新製品が馬鹿売れしたからなんですが…」
「それって、このせいなのかしら?」
ママは背の酒棚に飾られた水晶玉を指さした。
「ええ、まあ…。考えようによっては、これも偶然なんでしょうが、その逆も考えられる訳で…」
「なんか、もうひとつ煮えきらないわね」
私は防戦一方になった。ママの疑問を完全否定し得る根拠がないのだった。そうかといって、玉の霊力のせいです…と断言できる根拠もないから、話に鋭く踏み込めなかった。
「ママの方は?」
「私? 私の方…。そうねえ…、そんなに変わんないけど、金離れのいいお客様が付いたことくらいかしら。まあまあね…」
そう云うと、ママはニコリと笑った。女性ならいいが、女性ではないから、美形でも今ひとつ、グッと、そそられるものがない。もう一人の早希ちゃんは真逆で、そそるものはあるが、どうも癒(いや)されなかった。気持が少し昂(たかぶ)っても、カウンターぎみのパンチある言葉で萎(な)えた。他の客には結構、色っぽく話しかけるのだから、私には解(げ)せなかった。