あんたはすごい! 水本爽涼
第七十五回
お通夜な気分はいいが、いつまでも客二人に思い通りに唄わせておく、というのも少し腹立たしかった。そんな思いで烏賊(いか)さしを摘(つま)み、チューハイをキュッ! と、またひと口やった。そして徐(おもむろ)に酒棚の水晶玉を見上げたのだが、いつの間にやら消えた異様な光は復活して渦巻いていた。光ったり消えたりと、安定しなかったが、どこか、玉が私の心理を透かして見ているような気がした。ダブルにチューハイで、少しホロ酔いだからか…と、私は思った。ボックス席のカラオケショーが終わり、フラフラと客が立ったのは十一時頃だったと思う。
「ママ、お勘定!」
早希ちゃんの、やや大きめの声が飛んできた。
「は~いっ!」
客二人が勘定を済ませて帰ると、やっと店全体がいつもの静けさを取り戻して落ち着いた。玉は、すでに元の状態に復帰し、光の渦は消えていた。その時、私は閃(ひらめ)いた。待てよっ! ひょっとすると、客二人に唄わせておくのは腹立たしい…と思った刹那(せつな)、玉は光を発して渦巻いたのではないだろうか…と。そのことは、私の気持を玉が読み取り、霊力を発して私の望みを叶えてくれることを意味する。いや、まさか、そんなことは…と私は思ったが、黄や緑色を発して渦巻く常識ではあり得ない現象を目(ま)の当たりにしている私には、この発想を完全否定することは難しかった。
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第七十五回
お通夜な気分はいいが、いつまでも客二人に思い通りに唄わせておく、というのも少し腹立たしかった。そんな思いで烏賊(いか)さしを摘(つま)み、チューハイをキュッ! と、またひと口やった。そして徐(おもむろ)に酒棚の水晶玉を見上げたのだが、いつの間にやら消えた異様な光は復活して渦巻いていた。光ったり消えたりと、安定しなかったが、どこか、玉が私の心理を透かして見ているような気がした。ダブルにチューハイで、少しホロ酔いだからか…と、私は思った。ボックス席のカラオケショーが終わり、フラフラと客が立ったのは十一時頃だったと思う。
「ママ、お勘定!」
早希ちゃんの、やや大きめの声が飛んできた。
「は~いっ!」
客二人が勘定を済ませて帰ると、やっと店全体がいつもの静けさを取り戻して落ち着いた。玉は、すでに元の状態に復帰し、光の渦は消えていた。その時、私は閃(ひらめ)いた。待てよっ! ひょっとすると、客二人に唄わせておくのは腹立たしい…と思った刹那(せつな)、玉は光を発して渦巻いたのではないだろうか…と。そのことは、私の気持を玉が読み取り、霊力を発して私の望みを叶えてくれることを意味する。いや、まさか、そんなことは…と私は思ったが、黄や緑色を発して渦巻く常識ではあり得ない現象を目(ま)の当たりにしている私には、この発想を完全否定することは難しかった。