水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ①<31>

2014年12月16日 00時00分00秒 | #小説

 ⑤案は、如何(いか)にも①の見過ごす案に陥(おちい)る危険性が高い。というのも、この天候だから考えているうちにウトウトと眠り、気づけば昼過ぎということもあり得た。僕達はよく眠るのだ。だいたい、一日の三分の二は眠っている。これは危うい危うい…と、小次郎は否決した。ということで、残った⑤案の警察猫のぺチを呼ぶ・・に小次郎の思案は固まった。他力本願ながら、④のように戦うことは避けられる。だいいち、あの与太猫のドラに勝てるとは思えなかった。他国ではないが、他猫の加勢を頼む集団的自衛権とかの話にはならない。さて、そう決まれば、ただちに動くだけである。小次郎は素早く立つと、床下から潜(もぐ)り、庭の足継ぎ石の前から外へと躍(おど)り出た。地面は早くも雪が積もり、薄白くなっていた。幸い、物置の軒(のき)下にドッペりと籠(こも)るドラの位置からは正反対である。小次郎は、スタコラと警察猫ぺチがいる猫交番へと急いだ。
 猫交番は里山の家から徒歩三分ばかりの所にあった。もちろん、猫足での三分である。割合、近かったから、小次郎には何かと好都合だった。
 猫交番のぺチは、ウトウトしていた。猫交番は誰かが捨てたリンゴの木箱で出来ていた。出来ていた…と言えば語弊(ごへい)があるから言い直せば、横向けに置かれていた・・というのが順当なものだった。
『あの、もし…』
 鼻頭を小次郎にナメナメされた猫巡査のぺチは、目覚めたのか薄目を開けた。


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