水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ①<44>

2014年12月29日 00時00分00秒 | #小説

「ははは…そう言うな。ココが違うんだ!」
 自慢たらしく里山は長々と続く延長コードと工夫したスイッチ板を示した。まあ、工夫のあとが見られなくもない代物だな・・と小次郎は即断したが思うに留(とど)めた。ひと言でいえば、大したことはない・・のである。だが、飼ってもらってる手前、口が裂(さ)けてもそうは
言えない。辛(つら)いのは人間だけでなく、動物は皆、なにかしら辛いのだ。
「なるほど!」
 一応、感心した素振りを見せ、小次郎はそう言った。
「ちょっと、押してみな…」
 里山はスイッチ板を指さした。スイッチ板は押しボタンが子猫でも押せる形に平たく改造されていた。まあ、改造と言っても接着剤と接着テープで薄い硬化プラスチックの板を接着させただけの誰でも出来そうな代物(しろもの)だったのだが…。
 小次郎は里山に言われるまま、恐る恐る片足の肉球でプレート状のスイッチ板を押してみた。と、同時に鋭い音がビィ~~!! っと響いた。小次郎はビクッ! として押した足を慌(あわ)てて上げた。すると忽(たちま)ち、音は止まった。
「あなた、どうかした!」
 そのときである。眠そうな沙希代が寝室からバタバタと小走りで現れた。
「んっ? ああ…いやあ、なんでもない。驚かしたな」
 沙希代は警報ブザーとスイッチ板を見て、なんだ、いつもの…と、寝室へ戻っていった。沙希代は里山の下手な機械工作の趣味を知っていた。


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