水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ①<38>

2014年12月23日 00時00分00秒 | #小説

「で、話というのは?」
『実はですね。与太猫のドラについてなんですが…』
「与太猫のドラ?」
 初耳の里山は、分からないから首を捻(ひね)った。
『あっ! ご主人は知らないですよね。ドラは猫仲間から与太猫と呼ばれているゴロツキ猫なんですよ』
「ほう、そうなんだ…。で、そのドラが?」
『はい、それなんですが、物置前の軒下(のきした)に味を占めたみたいでして…』
「なるほど! 不法侵入ってやつだ。家主の許しも得ずに厚かましい奴だ!」
『一応、交番に対応してもらったんですがね』
「交番?!」
『猫の世界にも警察はあるんですよ』
「ほぉ~、それも初耳だ。交番ねぇ~、大したもんだな」
『大したかどうかは分からないんですが、とにかくぺチ巡査に来てもらったん訳です』
「ぺチ巡査?」
『ええ、交番の巡査です。もうお年で退職前なんですが…』
「ははは…退職前か。俺の方が若いってことだ」
『はあ、まあ…。で、ぺチ巡査の効果は余りなかったんですが…』
「なかったんかい!」
 一人と一匹の会話は、完全な漫才になっていた。


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