水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ①<42>

2014年12月27日 00時00分00秒 | #小説

『防犯装置ってことですね?』
「ああ、そうだ。ドラの場合、別に何もしないから防犯っていうほどのことじゃあない。迷惑防止装置ってとこだ。人間世界では、迷惑をかけるだけでも防止条例違反で警察 沙汰(ざた)になるとこもあるからな。ドラの奴、猫でよかったよ」
『人間だとホームレスってとこですか。僕もそうだったんですが…』
 公園に捨てられた経緯(いきさつ)を想い出し、小次郎はテンションを下げた。
「いらんことを想い出させてしまったな」
 そのとき、遠くから沙希代の声がした。
「あなたぁ~、大丈夫! 長いお風呂ねぇ~!」
 里山は、しまった! と思った。ついつい長話になってしまった。とりあえずシャワーで体裁(ていさい)を取り繕(つくろ)おう…と、里山は慌(あわ)てて脱衣した。
『それじゃ、僕はこれで…。また夜にでも』
 そう言ったあと、猫語でニャ~~と鳴き、小次郎は浴室からキッチンへ戻った。
 次の日の会社の帰り、里山は、たまに寄る電気街のとある商店で必要部品を見繕(みつくろ)って買って帰った。
「どうだ? ドラは来たか?」
『いえ、今日も来てません』
「そうか…それはよかった。ははは…早く作らんとな。上手(うま)い具合に明日は会社休みだ」
 そう言って慌(あわた)ただしく夕飯を済ませた里山は、いつもの晩酌(ばんしゃく)もそこそこに部屋へ籠(こも)りきりになった。


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