『防犯装置ってことですね?』
「ああ、そうだ。ドラの場合、別に何もしないから防犯っていうほどのことじゃあない。迷惑防止装置ってとこだ。人間世界では、迷惑をかけるだけでも防止条例違反で警察 沙汰(ざた)になるとこもあるからな。ドラの奴、猫でよかったよ」
『人間だとホームレスってとこですか。僕もそうだったんですが…』
公園に捨てられた経緯(いきさつ)を想い出し、小次郎はテンションを下げた。
「いらんことを想い出させてしまったな」
そのとき、遠くから沙希代の声がした。
「あなたぁ~、大丈夫! 長いお風呂ねぇ~!」
里山は、しまった! と思った。ついつい長話になってしまった。とりあえずシャワーで体裁(ていさい)を取り繕(つくろ)おう…と、里山は慌(あわ)てて脱衣した。
『それじゃ、僕はこれで…。また夜にでも』
そう言ったあと、猫語でニャ~~と鳴き、小次郎は浴室からキッチンへ戻った。
次の日の会社の帰り、里山は、たまに寄る電気街のとある商店で必要部品を見繕(みつくろ)って買って帰った。
「どうだ? ドラは来たか?」
『いえ、今日も来てません』
「そうか…それはよかった。ははは…早く作らんとな。上手(うま)い具合に明日は会社休みだ」
そう言って慌(あわた)ただしく夕飯を済ませた里山は、いつもの晩酌(ばんしゃく)もそこそこに部屋へ籠(こも)りきりになった。