水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ①<33>

2014年12月18日 00時00分00秒 | #小説

 さて、二匹が物置の軒(のき)下へやってくると、与太猫のドラはお構いなしの高鼾(たかいびき)で気分よさそうに眠っていた。小次郎は、子猫を心配させておいて、いい気なものだ…と思った。
『君かね! この家(うち)に迷惑をかけているドラというのは!』
 起こす気もあったからか、ぺチ巡査はやや声高(こわだか)に、ひと声鳴いた。さすがに鈍(にぶ)いドラも、その声の大きさに目覚めたのか、ゆっくりと薄目を開け、普通猫の1.5倍はあろうか…と思える巨体を微動させながら起こした。内心では少しビクつきぎみのぺチ巡査だったが、立場上、弱みを見せられないだけに、見得を張って居(きょ)を正した。
『俺様に、なにか用ですかい?』
『聞いてなかったのかね。この家に迷惑をかけているそうじゃないか』
『猫ぎきの悪いことを言いなさんな。俺様は迷惑なんぞ、かけちゃ、いないぜ。誰が言ったか知らないが…』
 そう言うと、ドラは小次郎をジロッ! と一瞥(いちべつ)した。なんのことはない、目に見えない威嚇(いかく)である。お前がつまらないことを言ったんだろう! …と言ってるような鋭い視線を小次郎は感じ、少し怖(こわ)くなった。
『それなら、訊(たず)ねるが、君はこの家の者かね?』
 ぺチ巡査とドラの問答が始まった。むろん、語られるのは猫語である。小次郎はぺチ巡査の背に隠れるように成り行きを窺(うかが)った。


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