水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (72)汗

2019年12月07日 00時00分00秒 | #小説

 どういう訳か、汗を掻いたあとの食事や一杯は格別に美味(おい)しい。特にコトを成し終えたあとなら尚更(なおさら)である。加えて、そのあとの楽しい気分を熟成(じゅくせい)させる意味で、風呂でサッパリ汗を流せば、あとの楽しい気分は倍増される。人は、この楽しい気分を求めて、苦に耐えて汗し、働くのかも知れない。もちろん、脳内に汗を掻く頭脳労働もあるが、やはり快適なのは身体を動かして掻く汗だろう。^^ スポーツもよし、ジョギングや筋トレ[筋肉トレーニング]も大いに結構だ。ただ、身体を冷やして風邪を引かないうちに汗は処理したいものだ。^^
 とある公園である。いつもの日課なのか、二人の老人がいつもの時間にいつものベンチに座って話し合っている。
「今日も少し、すっかり疲れましたっ!」
「私も、ですっ! 秋は汗をそう掻かずいいですなっ!」
「ところが、あなた。これが、結構、掻いてるんですよっ!」
「そうですか? さほども感じませんがな…」
「いいえ、掻いてるんです。帰ったあと、風呂かシャワー
をすれば、サッパリするでしょ?」
「はい。そりゃ、まあ…」
「サッパリとすれば、そのあとが楽しい気分になります」
「そうですかな? 私ゃ、それほど感じませんが…」
「いや、楽しいはずです。食べたり飲んだりの気分が違うでしょ?!」
「はあ。そりゃ、まあ…」
「汗を掻けば、人間、楽しい気分になりますっ!」
「いやぁ~、汗を掻けば、気持が悪いでしょ?」
「いやいや、あと処理をすればっ! の話ですっ!」
「はあ、それはまあ…」
「熟成っ! 味噌、酒、それに燻製なんかでもそうでしょ!?」
「はあ、確かに…」
「汗は楽しい気分を熟成させる過程[プロセス]になるんですな…」
「そうなんですか…」
 すっかり丸め込まれた老人は、もう一人の老人の顔を見ながら頷(うなず)いた。
 汗が楽しい気分を熟成させるかどうかは別として、汗を掻けば、身体(からだ)の新陳代謝(しんちんたいしゃ)を促(うなが)す効果があり、健康にはよいそうだ。^^

                                


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