水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (81)気がかりなこと

2019年12月16日 00時00分00秒 | #小説

 気がかりなことがあれば、楽しいことも楽しくなくなる。それは当然のことだが、ならば、その気がかりなことを無くせばいいだろっ! という話になる。しかし、世の中の仕組みはよく出来ていて、まあ、この場合は悪く出来ていてになるのだが、^^ 気がかりなことが無くなった途端、また新(あら)たな気がかりなことが出来るようになっている。これは決して、意地悪でもなんでもなく、世の中とはそうしたものなのである。だから、気がかりなことがあっても、そんなに目くじらを立てず、大仰(おおぎょう)に構(かま)えていれば、気がかりなことは気分を悪くしていなくなるのだ。結果、楽しい気分にふたたび満たされる・・と、こうなる。^^
 とある普通家庭である。明日、一家で行楽に出かけようという夜、ご主人は、眠れぬ夜を過ごしていた。
「天気は大丈夫かなぁ~」
「そんなこと、私に訊(き)かれても…」
 奥さんは迷惑そうな顔で言った。
「しかしなぁ~。晴れてもらわないと予定が狂うんだよっ!」
「子供達は、もうとっくに眠ってるわよっ! そんなに気がかりなら、雨でもいいところにすれば?」
「だってな、キャンプ村にはもう予約を入れてるんだぜ!」
「知らないわよ、そんなのっ! あなたの都合で天気が変わるってことはないんだからさ…」
「… まあ、それもそうだが…」
「そんなに気がかりなら、照る照る坊主でも作れば!?」
「ああ! その手があったな…」
 ご主人は、何を思ったのか、ベッドから抜け出た。
「じょ、冗談よっ! 馬鹿(ばっか)ねぇ!!」
「おいっ! 針と糸?」
「針と糸? 針と糸は向こうの部屋だけど…」
 ご主人は、本気でそう思ったらしく、寝室から出ていった。
 次の日の早朝、天気は雲一つない快晴となった。ところが、ご主人は気がかりが祟(たた)ったのか、照る照る坊主を吊るした下で眠りこけ、風邪を引いていた。
 気がかりなことは無視した方が楽しい結果が生まれるようだ。^^

                                


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