水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (92)知らぬが仏(ほとけ)

2019年12月27日 00時00分00秒 | #小説

 知らぬが仏(ほとけ)とは上手(うま)く言ったもので、知らない内が花! 知ってしまえば地獄! みたいなことになるようだ。^^ 怖い事実を知らないから怖くなく楽しいのであり、怖いと分かれば、少しも楽しい気分にはならないだろう。優しく綺麗な女性に絆(ほだ)され、有頂天で結婚した迄(まで)はよかったが、悲しいかな、その女性はその後、豹変(ひょうへん)し、鬼嫁となってしまった・・なんて話もあるが、この場合は知っていた方がいいだろう。^^ その女性の本心は金目当てだったという訳だ。
 とある証券会社に設けられた投資係の一室である。中では一人の顧客が係員と話している。
「ははは…初めてなもんでしてね。株の知識は全(まった)く無いんですよ、実は…」
「でしょうな。妙な株をお買い求めだな…とは思ったんですよ」
「ダメでしょうか?」
「まあ、株を知ってる私らから言いますと、バツですかな、ははは…」
「バツですか…。なんかいいように思えましたが…」
「ダメですな、いや、ダメだと思いますよ。抜毛ホールディングスは二日ほど前も売り注文ばっかりでしたから…」
「そうですか…、ダメですか…」
「いや! お客様がどうしてもっ! と言われるんであれば買いますよ。ええ、買いますともっ!」
「だったら、お願いしますっ」
「損をされると思いますが、どうしてもっ! ということであれぱ…」
「買ってもらえます?」
「ええ、そりゃ、もちろん。私らそれが商売ですから」
 ひと月が経過したとき、抜毛ホールディングス系列のこの会社の株価はストップ高をつけていた。抜毛グループが新しい毛生え薬の発売に踏み切ったためである。
 達成すれば人は誰もが楽しい気分になるが、知らぬが仏は、思いもよらない予想外の達成力を秘めているのである。^^

                                


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