水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (69)雲の形(かたち)

2019年12月04日 00時00分00秒 | #小説

 四季を通じて言えることだが、空に浮かぶ雲の形(かたち)をジィ~~っと眺(なが)めていると、いろいろな物や動植物が見えてくる。自動車やオートバイは危険だからなんだが、燃料の必要ない自転車で走ったり歩いたりしていると、ついついそんなことを感じるのである。あんたっ、暇(ひま)だなっ! …と思われる方もお有りだろうが、それもそうだから、敢(あ)えて否定はしない。^^ 否定はしないが一応、お読みいただきたい。^^
 行楽の秋、ハイキングを楽しむ二人の若者が小道を歩いている。小道の周辺には秋の色づいた樹々(きぎ)がなんとも言えない風情(ふぜい)を醸(かも)し出している。その景観の上空には、青空に浮かぶ様々な雲の幾つかが、ゆったりと流れている。
「おいっ! あの雲の形、お前にそっくりだなっ!」
「…そうか? 俺はあんなに太ってないぜ…」
「いやいやっ!」
「そうか!? 以前は75以上あったが、今は70そこそこだぜっ!」
「… ああ、そういや、そうだな。前の姿か…」
「ああ、確かにっ! 前はあんなメロンパンだったかもな…。あっちの鰯雲(いわしぐも)は、お前そっくりだぜっ!」
「俺は今、あんなに痩(やせ)せてねぇ~よっ!」
「…かっ! やはり、前の姿だ…」
「ああ、退院した頃だな…」
 やがて、広い草原へ出た二人は、腹が減ったのか腰を下ろし、楽しい気分で持ってきた握(にぎ)り飯(めし)を食べ始めた。二人の上には、お握り形の白い雲がポッカリと二つ浮かんでいた。
 雲の形を愛(め)でるゆとりがあれば、楽しい一日が過ごせるようだ。^^

                                


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