水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (89)マンネリ 2

2019年12月24日 00時00分00秒 | #小説

 (18)でも語ったが、2 として、飽(あ)きもせず、また語りたいと思う。^^ いくら楽しいことでも、楽しい楽しい・・と続けば、ちっとも楽しいとは思わなくなる。マンネリである。マンネリは、いわば人間の倦怠(けんたい)、分かりやすく言えば、飽きっぽくなる・・という困った心によって生じるものだ。━ 大悲無倦(だいひむけん) ━ といかいう有り難ぁ~~い仏さまを称(たた)える四字熟語があるようだが、人間とは違い、さすがに仏さまは有り難く、マンネリで人々を救うのを飽きられるということはないという意味らしい。^^ で、当然、その有り難さで後光(ごこう)が射す・・と、こうなるようだ。^^
 とある野球場でナイターが賑(にぎ)やかに行われている。内外野席とも満員で、観戦者が所狭(ところせま)しと場内に詰めかけている。熱狂する多くの野球ファンの中、二人の男がテンションも上げず、静かに両チームの試合を観戦している。
「ほらっ! あんなプレーがあったら、次は絶対、ソウなるぜ…」
「だな…」
「ほらっ! なっ! やっぱり、ソウなったろ」
「ああ…」
 二人には、まったく覇気(はき)が見られず、マンネリ感が濃厚(のうこう)に漂(ただよ)っていた。
「だったら、観なきゃいいじゃないですかっ!!」
 業(ごう)を煮(に)やした後方席に座るファンが、とうとうブチ切れて立ち、声を出した。
「それもそうだな…。どうも、すいません」「どうも…」
 二人は静かに立つと頭を下げながら謝(あやま)り、楚々(そそ)と球場を去っていった。
 人はマンネリにならない程度が楽しいようだ。^^ 

                                


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