挨拶(あいさつ)というのは、別にしなければ悪いとか罰(ばっ)せられるといった性質のものではない。^^ ただ、した方が相手との接触感、スキンシップと日常で使われる言葉だが、その感覚が膨(ふく)らんで楽しい気分となり、お互い和(なご)みやすいことは確かなようだ。相手が挨拶したとき、そ知らぬ態(てい)で無視した場合、『なんだっ!? お高く留(と)まりやがって!!』などと思われ、返って関係が拗(こじ)れることにもなる厄介(やっかい)な儀礼(ぎれい)である。
どこにでも見られるとある駅の、朝の通勤風景である。
「やあ! おはようございます、番傘(ばんがさ)さんっ!」
「おお、これはこれは、お珍しいっ! 蝙蝠(こうもり)さんっ!」
「ですなっ! ははは…」
蝙蝠は珍しいと言われ、『いつも乗ってるけど出会わないだけだろっ!』と、心で突っ込んだが、挨拶で関係が拗れるのも…と、笑って思うに留(とど)めた。
「いやぁ~随分、寒くなりましたな」
「ですなっ! ははは…」
蝙蝠は寒いと言われ、『そうでもないがな…』と思ったが、挨拶で主張するのもな…と、ふたたび笑って思うに留めた。
「先ほどから笑っておられますが、体調の方は大丈夫ですか?」
「まあ、ですな。ははは…」
蝙蝠は『大丈夫に決まってんだろっ!』とは思ったが、楽しい気分が…と、三度(みたび)、思うに留めた。
このように、挨拶をしたからといって、相手が必ずしも楽しい気分になる訳ではない・・という、欠伸(あくび)が出るようなお話である。^^
完