水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (94)兼(か)ねる

2019年12月29日 00時00分00秒 | #小説

 生活していく上で、楽しい気分を誰でも味わいたいだろうが、そう上手(うま)く世間は出来ていない。絶えず、すきま風や世の柵(しがらみ)が人々を楽しませまいっ! と邪魔をする。そこで、何かいい知恵はないものか? と一休さんのように知恵を絞(しぼ)ってみれば、あるにはあることが判明する。^^ その方法とは、兼(か)ねる・・ということだ。分かりやすく説明すれば、すきま風や柵を防いだり有効利用することである。もっと分かりやすく言えば、ついでにホニャララも…ということだ。これは、二度手間(にどでま)を避(さ)けることにも繋(つな)がり、時間の有効利用になる訳だ。^^
 とある高級住宅地に住む主婦が日課の散歩をしている。なにも主婦は散歩しよう! と意気込んで毎日、散歩を続けている訳ではない。そこには愛犬が付き従っていて、犬の散歩の付添い人・・という名目(めいもく)なのだが、その実は軽いジョギングになる…という運動を兼ねるという潜在意識が無くもない。要は、一石二鳥(いっせきにちょう)という恰(あたか)も、生芥(なまごみ)を処理機で肥料にリサイクルする・・みたいな話なのである。? …少し違うようにも思えるが、まあ、そんなことはどうでもいいだろう。^^
 主婦がしばらく歩いていると、対向から別の奥様が近づいてきた。
「あらっ! お散歩ですのっ? 奥様っ!」
「ほほほ…チコちゃんのっ! 奥様はっ?」
 見れば分かるでしょ! という気分をグッ! と我慢して訊(たず)ねられた主婦は笑いながら軽く躱(かわ)すと、長刀(なぎなた)で斬り返した。
「クラシックコンサートでもと…。ほほほ…」
 返された主婦も負けてはいない。クラシックコンサートを兼ねたお食事会なのだが、そこはそれ、サッ! と身を躱し、スゥ~~っと通り過ぎようとした。
「あらっ! いい、ざまぁ~~すこと。それじゃ、ほほほ…」
 返された主婦は、やるわねっ! という気分で軽く往(い)なすと擦(す)れ違った。
 兼ねる場合は、軽く躱せたり往なせるのがいいようだ。^^

                                


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