水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (93)自我(じが)

2019年12月28日 00時00分00秒 | #小説

 自我(じが)という言葉がある。自分の独自性[アイデンティティ]とでも言うべき性質のもので、楽しい気分をジガジガァ~~っとした気分に変えてしまうから厄介(やっかい)な存在だ。ただ、この自我ってやつは、本人ですら自覚しようがなく、困った場面でニョッキリ! と現れる得体が知れない深層心理なのである。自我が強い人ほど世の中には溶け込みにくいが、その人の主張が間違っていない場合もあるから一概に否定も出来ない。世の中の常識が間違っている場合もあるからだ。^^
 日曜討論会がテレビで繰り広げられている。
『いやっ! それは違うと思いますよっ! 領土の返還は鰻(うなぎ)を蒸(む)したあとでタレを付けて焼くか、蒸さずにタレを付けて焼くかの違いだと思いますよ、私はっ!』
『いやいやっ! 領土返還は、鰻の背開きか腹開きかの捌(さば)き方の違いでしょ、絶対っ!』
『まあまあ、お二方(ふたかた)とも…』
 見かねた司会のアナウンサーが、なんという例えだっ! と憤慨(ふんがい)しながら割って入った。
 その番組を観ていた男がボソッ! と呟(つぶや)いた。
「ふ~~ん、どっちも自我が強いな。別にどっちだっていいじゃないか、美味(うま)けりゃ…」
 自我の無い無我な人は深く考えず、楽しい結果を考えるのである。^^

                                


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