人は生活する上で少なからず、することがある。そのすること、というのが、実は楽しい気分を害する曲者(くせもの)なのである。厄介(やっかい)なことに、そのすることは目に見えない教唆的な存在で、逃(のが)れられない。人は、それを世の柵(しがらみ)と呼ぶ。することがなく、自由に世を生きられれば極楽だが、そう上手(うま)く人は生きられないように出来ている。これは、いくらリッチ[富裕]な生活をしていたとしても付いて回る。『逃れようたって、そうは問屋が卸(おろ)さない!』っと、纏(まと)い付くのである。^^
とある財閥の総帥(そうすい)、鴨井(かもい)の大邸宅である。朝から、その邸宅の一室で、鴨井と執事の葱畑(ねぎはた)が話し合っている。
「だから、出ないんだよっ!! 今の私に、他にすることは何もないんだっ! することは、ただ一つ! 食べた物を出すだけだっ! どうにかならんか、君っ!!」
「そう言われましても、ご主人様。そればっかりは…」
話す内容が汚(きたな)いなぁ~…と思いながらも、そうは言えない葱畑が小さく返した。
「ああ、まあ、そうだが…」
「下剤とか、お試(ため)しなさっては?」
「そんなことは分かってんだよっ! そういうことをしないでっ! することをしたいんだ、私はっ!!」
「はあ、どうも…」
葱畑は、ふたたび小さく返した。最初の半分くらいの声である。
要は、することがスムーズにいかないと、楽しい気分には、なれないのである。^^
完