水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (91)当期純利益(とうきじゅんりえき)

2019年12月26日 00時00分00秒 | #小説

 どんなことにも言えることだが、当期純利益(とうきじゅんりえき)を考えて物事をするのは楽しい。別にお金に限ったことではなく、この現象を考えるのは、世の中の総(すべ)ての事象(じしょう)に当てはまるようだ。言っておくが、ケチることではない。^^
 今年で小学校一年になった雄太(ゆうた)はパパの雄一(ゆういち)が帰宅した途端、「ああっ! 当期純利益、当期純利益っ!」と口走るものだから、いつの間にか当期純利益を考えるようになった。雄一は会社の執行役員で常務取締役なのだが、会社の経営が上向く何かいい策はないか…と、絶えず考えていたのである。それが、当期純利益の口走り癖(ぐせ)となり、雄太を当期純利益の信奉者(しんぽうしゃ)にしてしまったのである。^^
「今日は我慢して¥70しか使わなかったから当期純利益は30円でしょ?」
 夕食のとき雄太は雄一に、それとなく訊(たず)ねた。
「んっ? ああ。まあ、そうなるかな。ははは…」
 雄一はあえて否定せず、暈(ぼか)して笑った。
「このぶんでいくと、僕は大金持ちだよね?」
「んっ? ああ。まあ、そうなるかな。ははは…」
 雄一は、また笑って暈した。そして、会社も笑えればいいがと、ボケェ~~っと思った。
 当期純利益が出れば笑える楽しい結果になる訳だ。^^ 

                                


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