水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

涙のユーモア短編集 (52)思い出す

2023年10月05日 00時00分00秒 | #小説

 思い出し笑い・・という言葉があるが、思い出す内容は、何も楽しかったことばかりではない。悲しかったことを思い出すこともある訳だ。悲しかったことを思い出したとき、その悲しさが深ければ、当然ながら涙が頬(ほお)を伝うようなことになる。今日はそんなお話です。^^
 とある講演会が、とある市の会場で開かれている。講演しているのは、とある大学のとある有名大学教授である。
「で、ありまして、そのようなことになる訳であります。そのようなことにならないためには、そのようにならないような対応が政府に求められるのでありますが、そのような内容は閣議に上(のぼ)らず、財源として手当てされることはない・・という結果になります。これは国際的にどの国においても同じ傾向がありまして、結果として人類に衛生的な危機を招く恐れがあるのであります。衛生とは生命を衛(まもる)ということですが、その生命に警鐘を齎(もたら)す財源が手当てされないということは…。ぅぅぅ…」
 そこまで講演したとき、大学教授は何を思い出したのか突然、涙を流して泣き始めた。聴衆は大学教授がなぜ泣き出したのかが分からず、誰もが訝(いぶか)しげに演壇を眺(なが)めザワついている。大学教授が突然、思い出して涙を流した内容は、今朝、家を出る前にこっぴどく妻に叱(しか)られたことだった。
 このように、思い出す涙は、人それぞれ・・ということになります。^^

                    完


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