思わず、ぅぅぅ…と涙することがある。それは突然、感極まったときが多い。今日は、そんな涙のお話です。^^
とある田舎の役場である。
「餅肌(もちはだ)君、言っといた資料は出来てるか?」
「はい、議会用の資料でしたね…」
「ああ、そうだ。見せてくれっ!」
課長の井路目(いろめ)は餅肌にそれとなく小声で言った。明日のことだから、餅肌も用意周到に準備はしていた。餅肌が井路目に言われた資料を取り出そうとしたとき、突然、餅肌の携帯が鳴った。
「はい、餅肌ですが…。えっ! はいっ! すぐにっ! ぅぅぅ…」
突然の電話に、餅肌は思わず涙した。
「どうかしたのかね、餅肌君?」
「妻が出産したらしいです…」
「ええっ! そりゃ目出度いじゃないかっ! おめでとう!! すぐ病院に行ってあげなさいっ!」
「はいっ! しかし、明日が議会ですし…」
「議会は議会だけのもんさ。すぐ行ってあげなさいっ! 届けはあとから出せばいいから…」
「はいっ!」
餅肌は取るものも取り敢(あ)えず 役場を飛び出した。餅肌の目には、思いもしない涙が思わず溢(あふ)れ出た。
※ 本作は(69)のスピン・オフ作品です。^^
完