怒られる事態となれば、誰だって青菜に塩となる。反発して怒り返せば事態はさらに深刻となり、トラブルあるいは口喧嘩へとエスカレートするから注意が必要だ。怒られることで、ぅぅぅ…と涙が出る事態は子供時代が多く、大人になって涙を流す場合は、怒られる内容が本人にとって非常に辛(つら)い場合に相違違ない。今日は怒られるときに出る涙のお話です。^^
(74)に引き続き、とある町役場である。課長の蒲田(かばた)は次長昇進が見送られたのが堪(こた)えたのか、すっかり落ち込んでいた。
「課長、最近元気がないな…」
「ああ、そうだな…」
大船(おおふな)は隣のデスクに座る太秦(うずまさ)に小声で呟(つぶや)いた。その声は敏感な課長の蒲田の耳にも当然、聞こえていた。蒲田はどういう訳か無性に腹が立った。大船と太秦ではなく、ショボい自分の心に腹が立ったのである。
「大船、ちょっと来てくれっ!」
蒲田のそんな心が大船を呼びつけた。
「はいっ!」
少し驚いて、大船は蒲田のデスクへと急いだ。
「この、議事録書な、少し脱字があったぞっ! 注意してくれないと困るじゃないかっ!」
「はあ、どうもすいません、昨日、お渡ししたのも間違ってましたか…」
怒られることになった蒲田は意味が分からず訝(いぶか)った。というのも、脱字があった個所を修正し、昨日、蒲田に手渡したからだった。
「昨日?」
蒲田はそのとき、ふと気づいた。昨日の差し替えの紙を見落としていたからである。怒った蒲田は心で、ぅぅぅ…と涙した。
怒られる人が必ず涙するとは限らないようです。^^
完