天気予報は飽(あ)くまでも予測である。予測は確実にそうなるという性質のものではないから、行動の目安(めやす)になる・・という程度に留め置く内容だ。予測を信じれば、違った結果に涙することもあるだろう。今日はそんな、つまらないお話です。^^
一人の老人が物憂(ものう)げに空を眺(なが)めている。そこへ、息子の嫁が茶盆を手に現れた。
「お義父(とう)さま、どうかなさったんですか?」
「んっ!? ああ、未知子さんでしたか…。いやなに、今日の天気具合が…」
「どこかへ、お出かけになられるんですか?」
この日は遠い過去、恭之介が連れ合いと初めてデイトした記念すべき日だった。そのことを息子の嫁の未知子は知る由(よし)もない。未知子が去ったあと、恭之介は思わず涙した。小粒の雨が降り出したのである。
「あの日も、こんな日だったなあ…」
小雨が傘となり、二人を結びつけたのである。相合傘(あいあいがさ)というやつである。恭之介の予測は雨が降るという確信だった。
「ぅぅぅ…よかった!」
他人には分からない感情が恭之介の胸に迸(ほとば)った。
予測は他人には分からない感情の涙を呼ぶものです。^^
※ (58)話に続き、風景シリーズより、湧水家の皆さんのスピンオフ特別出演でした。有難うございました。^^
完