2012年以降、国際情勢はどうなるか。ひと言で言えば、「世界中が日本に助けを求めてくる」である。
アメリカの影響力が弱まっていることは明らかで、深刻な財政赤字を抱え、ドル安を容認して輸出増大に躍起になっている。TPPへの日本参加を求めたのも、日本を使って自国を立て直そうという意図で、オバマ大統領が自由貿易の発展よりも雇用拡大を国内向けに強調したのはその現われの一つである。さらに今後は、赤字解消のために国防費に手をつけざるを得ず、とてもユーロを救済するどころではない。
そして弱体化がより顕著なのは、ユーロ圏諸国である。そもそも欧州連合(EU)は日本やアメリカに対抗するマーケットの共同体で、そこに根本的な弱点があった。財政規律がない国に対して規律を強制する手段を用意していなかった。
第二次世界大戦後、日本がアメリカと肩を並べるまでに急成長し、ヨーロッパ市場は霞(かす)んだ。そこでスケールメリットだけを考え、市場を統合しさえすれば世界三大マーケットの一角を成せると、とにかく加盟国家を増やしたことが問題なのである。
いまイタリアやギリシアなどは財政破綻寸前で、「カネのある国が支援してくれ」になったが、域内で唯一その力のあるドイツは拒んでいるし、イギリスもそっぽを向いている。このままでは確実にユーロは崩壊するだろう。
EU内で解決できないとなれば、次はIMF(国際通貨基金)を頼るしかないが、最大出資国のアメリカには資金を出す余裕がなく、頼みは日本と中国である。中国に頼めば「出資ならする」「ポストを準備しろ」「担保をつけろ」といった条件を必ず付けてくるので、EUとしては、「何も要求しない日本にお願いしたい」となる。
その中国は、日本の技術を喉から手が出るほどほしがっている。とはいえ、「お金を払います」とはいえない。なぜなら、国内では江沢民一派と胡錦涛一派の政治闘争がいまも繰り広げられており、カネで技術を買えば一気に評価が下がる。大金を使わず、いかに技術を取(盗)ってくるかが問題という変わった国柄なのである。
わが国は中国に対し、「紳士的に振る舞えないのなら投資をしない」といえる立場である。それをいわせないために、中国は、「友好親善」という笑顔と、「日本軍国主義の復活」という怒りの顔の二つを使い分けて日本を揺さぶろうとする。首相の靖国参拝への異議も本音はそこにある。もういい加減に見抜かなければいけない。
(日下公人著書「『超先進国』日本が世界を導く」より転載)
---owari---
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