強く自己主張することを日本人は嗜(たしな)みがないと考えるが、世界のなかで発言する資格があるのは日本である。日本は「お金だけを出す国」から、自分たちの意志を通すための外交を展開する国に脱皮しなければならない。
また、援助でお金を出すなら、日本人の考える「ニュー・ワールド・オーダー」、つまり新しい世界秩序に基づいて、どうしてほしいかをはっきり相手国に示さなければいけない。
ここ数年、日本は(自民党政権時代だが)、非公式な形で「国連の一票を買う」ための経済援助をしてきた。しかし、これが失敗に終わったことは明らかである。南米やアフリカ諸国は、援助は手にしながら、日本の常任理事国入りに一票を投じてはくれなかった。日本は援助に当たってはっきりそれを要求しなかったので、相手国の政治家は票を入れる義理を感じなかった。
逆に中国は、「国連の一票を買う」といって南米諸国に援助をした。それで彼らは日本のために一票を投じなかったが、日本に悪いことをしたとは思っていない。明確に要求した中国の勝ちであり、慎(つつ)ましい態度をとった日本は敗れたのである。
そもそも日本は、国連の常任理事国の席を手に入れるよりも、もっと有効なお金の使い方を考えなければならない。それは日本国のために使うということで、相手国に対して、日本人の持つ「勤勉・努力・正直」といった価値観をきちんと打ち出し、新たな世界秩序を日本が主体となってつくっていくという意志を表明することである。
(日下公人著書「『超先進国』日本が世界を導く」より転載)
---owari---
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます