今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。
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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
「プーチンは、北方領土を返す気がない」
これは、私が昔から書いてきたことです。
しかし、安倍さん時代、日ロ関係が良好なときもあった。
なぜ?
それは、プーチンが「北方領土を返そうか迷っていた」からではなく、
安倍さんが、【 金儲けの話 】をしたからです。
▼これまでの日ロ関係
日ロ関係をざっくり振り返ってみると、
・2013年~2014年2月、日ロ関係は、とてもいい。
理由は、安倍さんが「金儲けの話」をしていたから。
・2014年3月~2016年4月、日ロ関係は、悪い。
ロシアが2014年3月に「クリミア併合」したことで、日本は欧米の「対ロ制裁網」に参加した。
それで、「金儲けの話」ができなくなり、「領土の話」になった。
結果、日ロ関係は、悪化しつづけた。
・2016年5月~2018年10月、日ロ関係は、とてもいい。
2016年5月、安倍総理はソチで、プーチンに「8項目の協力プラン」を提案しました。
要するに、「領土の話」は一休みして、「金儲けの話」に戻った。
プーチンは大喜びで、2016年12月訪日。日ロ関係は、かつてないほど良好になりました。
・2018年11月~現在 日ロ関係は、かなり悪い。
安倍総理は、シンガポールで、プーチンと会談。
「日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を加速する」と宣言した。
これをロシア側は、「4島一括じゃなくていいから、2島返せや!」と理解しました(56年の日ソ共同宣言には、「平和条約締結後、2島を返還する」と明記されている)。
日本側は、「大きな譲歩をした」のですが、ロシア側は、
「また島の話をはじめやがった。金儲けの話がしたいのに」とネガティブに解釈した。
以後、ずっと関係が悪いのです。
それでも、安倍さん時代は、「また反省して変わるかもしれんな」と考え、ロシア側は比較的穏やかにしていました。
しかし、菅さんになると、いよいよ本性を現わしてきた。
▼プーチン、「北方領土は【憲法】で返さない!」宣言
プーチンは2月、「憲法の規定で4島は返せない」と宣言しました。
朝日新聞DIGITAL 2月15日
<ロシアのプーチン大統領が、14日に公開されたロシアメディアのインタビューで、領土の割譲禁止を盛り込んだ昨年7月の憲法改正に関連し、
「日本との関係は発展させたいが、憲法に反することは行わない」と述べた。
北方領土の日本への引き渡しを否定したともとれる発言で、今後の日ロ交渉がさらに難しくなる可能性がある。
インタビューは10日に行われたといい、一部が14日に公開された。
プーチン氏が、領土の割譲禁止を定めた改正憲法に絡めて、今後の日ロ関係についての考えを表明するのは初めてとみられる。
改正憲法は、「領土の割譲に向けた行為やその呼びかけは認められない」と規定している。>
今までは、日本からお金と技術をもらうために、返還の可能性をほのめかしてきた。
ですが、盟友安倍さんは去り、菅さんは
「プーチンは手ごわくてダメだ。ロシアよりも、クアッド(アメリカ、インド、オーストラリア)と仲よくしよう!」となっている。
そして、「ロシア外交」はスタートもしていない状態。
それで、プーチンは、「返すフリをすることもやめた」ということでしょう。
▼ロシア外務省「日本の教科書はウソだ!」宣言
最近は、ロシア外務省の報道官が、「日本の教科書には、ウソが書いてある!」と批判するようになっています。
共同 4月9日。
<ロシア外務省のザハロワ情報局長は9日の定例会見で、日本の高校の地理や公共の教科書に北方領土が日本の「固有の領土」と表記されていることに触れ
「歴史の真実と第2次大戦の結果に矛盾するうそのステレオタイプを、日本政府が若い世代に教えているのは遺憾だ」と批判した。
ザハロワ氏は
「(日本政府が)ロシアに対し根拠のない領土要求のキャンペーンを繰り広げている」と批判。
「南クリール諸島(北方領土)に対するロシアの主権は争いようがない」
と主張、教科書を巡る日本の対応はロシア社会の怒りを呼んでおり、日ロ関係に否定的な影響を及ぼすと警告した。>
一言書いておきます。
日本の教科書で、普通のロシア人は、全然怒っていません。
普通のロシア人は、日本の教科書に何が書いてあるか知りません。
私はこれまで、
・プーチンは、北方領土を返す気がない
・それでも対中国で、中ロを分裂させるべきだ
・日ロ関係を改善させることで、中ロを分断するべき
と主張してきました。
ですが、なかなか厳しいようです。
もちろん、日ロ関係が悪くなると、一番喜ぶのは中国。
ですが、現状日本は、クアッド(アメリカ、インド、オーストラリア)を最重視。
ここに、イギリス、フランス、ドイツ、アセアン10か国を加えていくという戦略で進んでいくのでしょう。
それで仕方ないと思います。
---owari---
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