まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

初めての小樽、運河と建築めぐり(1)

2018-11-11 16:36:55 | 建築まち巡り東北北海道 Tohoku, Hokkaido

 

小樽は運河と建築の町。さあいろいろ見ようと思って小樽の駅に降り立つと、目の前に三角市場の看板が見えます。

ちなみに駅舎は1934年築。登録有形文化財です。背後の山は、小樽の町に平地が少なく、埋め立てによって港湾地帯が作られた町であることを示すものでもあります。このあたりの知識は「ブラタモリ」から・・・。

いきなり寄り道ですが、市場という文字に引かれて階段を上ってみました。

なんとそこにはにぎやかな期待通りの市場がありました。外人観光客も多い。観光施設ですね。ここで海鮮丼の朝食をとり、まち歩きスタート。

港や海の方向に歩いていくと早速、旧安田銀行小樽支店(1930)。世界恐慌の翌年の竣工ですね。簡素なのでトスカナ式オーダーになるのでしょうか、ジャイアントスケールの柱が並びます。小樽市の開設では小樽の建築を「倉庫」「銀行」店舗」「事務所」「邸宅」等に分けて解説しています。まずは銀行建築に遭遇しました。

こういう小さな商店にもいいのが残っています。いかにも昭和初期という構え。様式的な要素とモダンな要素の工夫に満ちた折衷です。構造は木骨鉄網コンクリート造と解説されています。いわゆる木造をラスモルタルで仕上げているかと思いきや、コンクリート(モルタルは砂利がなく、砂とセメントだけ)を使っているそうです。

いよいよ運河に近づくと、小樽運河を象徴する運河群が見えてきます。この倉庫は古いもので明治37年(2004)、これは石造。佐立七次郎作です。佐立は辰野金吾たちと同級、工部大学校1期生です。彼は私の故郷香川県は高松・讃岐藩の武士の出身です。私の曾祖父も藩士で幕末から明治にかけて昌平坂にいたとのことですのでもしかしたらどこかであっているのでは?などと勝手に思っています。

 

こちらは、木骨石造といわれる構造(1904)。先日のブラタモリでもやっていましたね。残念ながら中には入れませんが、同様の構造形式は他にもたくさんあります。北前船「一膳箸」の店印が妻壁上部についています。アーチの入り口と意匠的にあっているかどうか、微妙ですが、そんなことよりダイナミックな造形の力に脱帽です。

そして倉庫群のまち並みの中に密度の高い本格的な建築のテイストを醸し出しているのが日本郵船の小樽支店。堂々たる構えです。

設計は佐立七次郎です。力強い素朴な木骨石造の倉庫群と、本格的な洋式建築が共存しているのが小樽のまち並みの第一の魅力です。

 

運河を歩くと北海製罐の事務所ビルや倉庫群が並ぶ地区へ。この倉庫気になります。横浜の北仲地区の倉庫群を思い出します。コーナーの扱いなど機能的だけではないエレガントさがあります。大正13年(1924)築。

中でも目を引かれたのがこの曲線的なシュート。何かものを降ろしたのでしょうが、実にきまっています。

 

きちんと考え抜いて設計して行こうという意思のようなもの、あるいは大正という時代のエートスのようなものを感じます(そんな気がしてしまいます)。

こういう、立派なファサードをもつ倉庫もあります。バジリカ式の教会のような雰囲気です。十字の替わりに山七の店印があります。木骨石造、明治24年(1881)築。

木骨石造の構造を見たいと思っていたら、市の観光物産プラザが同時期の木骨石造でした。

小屋組みはキングポストトラス。真束(キングポスト)が見えます。

 

中もうまく使われています。

さらに運河に沿って進むと、運河めぐりボートの発着場。

先ほどの安田銀行と同じような小さな銀行。第四十七銀行。驚いたことに木造だそうです。

倉庫、銀行と見てきましたが、商店も見るべきものがたくさんあります。

左は木骨鉄網コンクリート造。1920築。右はおそらく木骨石造。かなり古いと思います。

とりあえず歩きつかれたので小休憩とします。

City walking in Otaru-city of Hokkaido.

高谷時彦

東北公益文科大学大学院 鶴岡市・山形県

設計計画高谷時彦事務所 東京

Tokihiko  Takatani  Architect/Professor

Graduate School of Tohoku Koeki University,  Tsuruoka-City, Yamagata pref.

Tokihiko Takatani Studio Architenture/Urban Design Tokyo

 

 

 

 

 

 

 

 

 


夕張のまちを散策しました

2018-11-10 17:16:12 | 建築まち巡り東北北海道 Tohoku, Hokkaido

JR石勝線の夕張支線(新夕張から夕張)がまもなく廃線になります・・・ということで、かみさんに促され、最後の試乗に出かけました。

ついでに、夕張の町も見たいと思い、ぶらぶらと歩いてみました。といっても夕張の町は広い!いくつかある地区の一つ本町のあたりを歩いただけです。目的地は石炭博物館です。他と同じく本町も谷筋の集落です。カラフルな色彩が意外とうるさくありません。

途中には、予想通り、廃屋が・・・。しかし、実に味があります。腰壁をスクラッチタイルとした医院。昭和のはじめの建物でしょうか。

もう少し時代を降るかも知れませんが、いわゆる看板建築もあります。ただ、本家?(関東大震災後の復興時に建てられた銅版やスレート葺きで外壁を覆い、古典意匠とアールデコなどの混在した『看板建築』)のような凝ったものではありません。しかしこういう建物を見ると、この地区が賑わっていたことが髣髴とされます。

斜面地ですから、こんな迫力ある建築もあります。

こんなスローガンもあります。ただ、まちの再生を「大企業誘致」に託すと言うのはどうでしょうか。こういう思いも否定はできませんが、まずは今あるものを生かしつつ、くらしの基盤をみんなで守っていくという視点も必要だと思います。

途中に市庁舎もありましたが、公会堂(市民ホール?)と庁舎の一部は閉鎖されていました。しかし、丹念に手をかけてつくられ、好感の持てるデザインです。地方都市が「よかった」時代を象徴しています。

まち歩きの最後は、石炭博物館。なかなかよかった・・・・というのは本物?(擬似坑道)の採掘現場を見ることができるからです。今も働いている人がいました(下写真)。お疲れ様です。

私も、採掘の現場に立ち会いました。

坑道を実地で体験できることはめったにありません。

ここにもまだ働いている方が!

時間があれば、町の全体を歩いてみたかったですね。最盛期には11.7万人(1960)、そして現在は8,800人(2016)というまちの盛衰をもう少し見せてもらいたいとおもいました。また次の機会に訪れたいものです。

JR line YUBARI SHISEN is scheduled to be abolished next spring. I vited Yubari city with my wife,  a railroad fan or enthusiast. Yubari city got famous when it went bankrupt several years ago. It is a typical example of Shrinking City. Population decreased from 120,000 in 1960 to 8800 now. 

But it has many things that attract us including the Coal Mine Museum where I enjoyed and experienced the real mining tunnel, exiting!

 

高谷時彦

東北公益文科大学大学院/鶴岡・山形

設計計画高谷時彦事務所/東京

Tokihiko Takatani  Architect/Professor

Graduate School of Tohoku Koeki University. Tsuruoka City. Yamagata Prefecture

Tokihiko Takatani and Associates. Tokyo

 

 

 

 


話題の水田テラス(坂茂デザイン)に泊まってみました

2018-10-08 00:38:44 | 建築まち巡り東北北海道 Tohoku, Hokkaido

山形デザイン山中社長のご厚意に甘えて、水田テラスに一泊してみました。

まさに名の通り水田に浮かぶように立っています。アプローチ道も稲のはさかけがデザインされています(実際の庄内平野は杭掛け(棒掛け)が多いようですが)。RCと木、Sの混構造のように見えます。

本部棟と宿泊棟が離れているようです。ブリッジはフィーレンディールですね。軽快です。秋ですが、水田の方はとりあえず水を張った状態です。今後稲を植えていくと聞きました。ただし、「農地」ではないので食用にはできないそうです。

エントランスは開放的で、さわやかです。2階がレセプション。

ゆったりしています。公共スペースが実に広い。共用部が充実しています。折版状の屋根と張弦のロッドが美しいリズムをつくっています。何より明るい。

ゆったりしているのがなによりいいですね。視線の正面も常に開放されています。庄内平野が常に見えているわけです。

 

宿泊棟が水田の向こうにあります。昔見学した坂さんの二つの作品を思い出しました。ひとつは、お台場か晴海の埋め立て地でやったコンテナを積み上げた仮設の美術館。映像展示が素晴らしかった。もう一つは女川の3階建ての仮設住宅。これもコンテナの積み上げ。

自由に本が読めるコーナーもあります。

本部棟は切妻の屋根が載っていますがその両端に広いテラスがあります(写真を忘れました)。朝食はそこでいただきました。山大のT教授とご一緒させていただきましたが、「外で朝食を食べると海外にいるみたいだ」とおっしゃっていました。私も、イタリア、南フランスやギリシャでの食事を思い出しましたが、朝食を外で食べたことはあったかどうか思い出せません。

最後は部屋から。各部屋は中庭に面しているので明るく開放的です。

内装は木が主体。不思議などこかで見たような置きものが気になりましたが、ライトのタリアセンの照明器具の坂バージョン(紙管でのアレンジ)だと後で教えられました。

次回は子どもの施設、ソライやアスレチック(下階の温泉には夜遅く入りましたが)なども見学したいものです。

I stayed overnight at Suiden Terrace Hotel,  designed by architect Shigeru Ban in Tsuruoka City. "Suiden" means rice field and the principal concept of the architecture is, I think, the lodging elevated over the rice field. The idea is good!

高谷時彦 建築/都市デザイン

設計計画高谷時彦事務所・東京

東北公益文科大学大学院・鶴岡

Tokihiko Takatani  Architect/Professor

Tokihiko Takatani Studio architenture/urban design

Graduate School of Tohoku Koeki University  Tsuruoka City Yamagata Prefecture

 


仙台いろは横丁

2017-10-08 21:37:23 | 建築まち巡り東北北海道 Tohoku, Hokkaido

仙台から鶴岡に移動するバスの待ち時間、少しだけでしたが商店街を歩いてみました。

クラフトフェアー、看板が洗練されています。

中身を見る時間はありませんでしたが・・・・。

出展者の番号表示柱もきちんとデザインされています。

ついでに数年ぶりのいろは横丁探索。相変わらずアートな路地。

懐かしい演出。

デザイナーズブランドのお店?もあります。

2階もあるんですね。

高谷時彦記

Visited Iroha Alley, for the first time in a couple of years.

Old buildings are indispensable for young persons to start his/her business, as  Jane Jacobs taught us half-century ago. 

Tokihiko Takatani

Architect/Professor

Takatani Tokihiko and Associates, Architecture/Urban Design, Tokyo

Graduate School of Tohoku Koeki university ,Tsuruoka city, Yamagata

 

 

 


郡山でも駅前商店街は様変わり

2017-09-07 13:55:58 | 建築まち巡り東北北海道 Tohoku, Hokkaido

久しぶりに郡山駅前商店街をのぞきました。郡山は人口33万人ほど、東北地方でも大きな都市のひとつです。昭和の後期には、駅前に丸光、西武、ダイエー、丸井などたくさんの大型店が出店し、地元百貨店と覇を競っていましたが、先日ぶらっと歩いたところでは、大型店として目立っていたのは地元百貨店やヨドバシカメラでした。商店街も歩いてみました。南東北の中核都市なので小都市のようにシャッターどおりではありませんし、地元百貨店前にも人通りがあります。ただ、かつての「昭和の賑わい」の中核だったアーケード街の物販店舗はほぼ飲食系の店に置き換わっていました。ですので日曜の昼間歩くと下の写真のような風景となります。

昔は洋装店やかばん屋、家具店など買い廻り品の店が多かったのだと推測します。しかし人口構造、都市構造の変化で中心部には飲食店が立地する条件が整ってきたということでしょう。買いまわり商店街を懐かしむ声もあるかもしれませんが、私は、飲食店街が悪いとも思いません。昼間もやってもらえればよいのではないでしょうか。そのためには中心部に住む人の数や来街者数を増やす努力を続けるしかありません。

少し歩くと、屋台なども出店したイベントをやっていました。ジャズ演奏もあります。不思議な人形も販売に一役買っています(椅子に腰かけています)。ご主人の双子の弟さんでしょうか?

高谷時彦記

Visited the downtown area of Koriyama city, the third largest city in Tohoku Region.

The revitalization of the area is one of the biggest challenge they face.

The key issue, I think, is how to make various and vibrant places for young families to live in and visit! 

Tokihiko Takatani

Architect/Professor

Takatani Tokihiko and Associates, Architecture/Urban Design, Tokyo

Graduate School of Tohoku Koeki university ,Tsuruoka city, Yamagata