2、王の夢を解く預言者ダニエル
ダニエル書2章は、非常に興味深い預言を含んでいます。その預言はとても単純に見えますが、研究すればするほど神様だけが考え出すことのできる知恵であることが分かります。読者の皆さんは、是非、ダニエル書の1章から2章、そして7章を読んでから、この記事を読んで下さい。預言の研究に入る前にまず、その歴史的な背景について説明したいと思います。
ダニエルはユダヤ王国の王族の血統で、才能豊かな思慮深い青年でした。しかし、バビロンの王ネブカデネザルの攻撃のとき、捕虜になってバビロンに連れていかれます。そのような状況の中でも、彼は、神様に対しての忠誠を捨てず家庭で学んだ教育の通りに、純粋な信仰を守りながら神様のみ心にかなった信仰の生活を送ります。彼は共に捕えられていた三人の友だちと一緒に、バビロンの最も良い教育機関で教育を受けることになりました。その理由は、彼らをバビロン方式の教育を受けさせて再びユダヤに帰し、彼らを通して、ユダヤを属国として治めることが有効であるとの、バビロン王の計画のためでした。
彼らは、その学校でも忠実に神様の戒めとみ言葉に従って生活しました。酒に酔ったり、放縦な食生活をしたりするよりも、主の栄光のために生きることを彼らは選んだのです。彼らの敬神の念と、原則に従った生活様式、そして、勤勉な学びを神様は祝福されました。彼らは、当時の最も優秀な学者たちとくらべても、はるかに傑出した品性と知恵を持った人物となります。そのような背景の中で、当時の世界帝国バビロンの君主、ネブカデネザルに不思議なことが起こりました。もともと彼は、このような憂慮を持っていました。「自分が築き上げた、世界最強の国として君臨しているバビロン王国が果たしてこれからも続くのだろうか?この国の覇権は、永遠に持続するのだろうか?この世界の歴史は、どのようになっていくのだろうか?」。王はそのような思いを持って寝床に着きました。そしてある夜、彼は一つの夢を見ました。その夢は通常の夢ではありませんでした。彼はこの夢が、特別な意味を持つ神様からの啓示だと確信しました。
事実、その夢は、この地球の歴史の流れを表していて、世界歴史における強大国家の興りと滅亡が、あらかじめ預言された夢でした。彼に最も大きなインパクトを与えたのは、この世界の歴史がどのように終わるのかを示す、夢の最後の部分でした。彼はびっくりして眠りから覚めました。ところが不思議なことに、彼が目を覚ますと、その内容をすっかり忘れてしまっていました。いくら思いだそうとしても、それは、不可能でした。あきらかに重大な意味を持つだろう夢を思いだせないことは、彼を苦悩させました。
この夢をお与えになった神様が、ネブカデネザルが夢を思い出すことが出来ないようにされたのです。それは、誰が真の神様であり、誰がこの地球の歴史を導いているのかを明確に示すためでした。世界に君臨する大帝国の王である彼が、真の神様についての知識をを持つならば、福音を世界に伝えることにおいて非常に有利になるからです。しかしバビロンの法術士や異教の学者たちが、その夢を自分勝手に解釈するか、曖昧にして、ごまかす可能性があったためにその夢を忘れさせて下さったのです。そして真の神様の僕であるダニエルを通して、正しい解釈を聞くことが出来るように導かれたのです。
気が気でないネブカデネザルは、バビロンのあらゆる宗教指導者と最高の学者たちを直ちに招集します。そして自分が、昨夜とても大事な夢を見たが、どうしてもその夢を思い出せない旨を伝え、その夢の内容を解き明かすように命令します。彼はこのように言ったことでしょう。「お前たちは、どんなことでも解き明かすことができると、常に豪語していたな、そして、この世の歴史の流れを予見出来ると私に言い続けてきた。同じくお前たちが仕えている神(バビロンの神)が真の神であり、この神が世界の歴史を支配しているのだと、言い続けてきた。私は、昨晩、神からの啓示だと思われる夢を見たが、もし、お前たちの仕える神が本当の神であるなら、その神は私が見て忘れたその夢を再び知らせるであろう。ゆえに、直ちにその夢と夢の解き明かしを私に告げ知らせよ!」
そのとき、バビロンの学者たちや宗教指導者たちの困惑した立場を想像出来ますか?このような要求は、彼らにとって全く無謀とも思えるものでした。困惑した彼らはこのように言います。「王様、そのようなことは、とても難しい要求でございます。どうぞ、その夢をしもべたちにお話し下さい。私たちはその解き明かしを申しましょう。夢も知らないのにどのようにして夢の解き明かしができましょうか?」。その時、王は激しい怒りをあらわにします。「わたしの言うことは必ず行う、あなたがたがもしその夢と、その解き明かしを、わたしに示さないならば、あなたがたの身は切り裂かれ、あなたがたの家は滅ぼされる」(ダニエル2:5)。
この死刑宣告のような王の厳命が通達されると、宮廷内は、険悪な雰囲気に包まれます。そして、この命令の影響は、バビロンの学者たちのグループに属していたダニエルと、三人の友人たちにも及びました。しかしそのとき、真の神、聖書の神様のしもべであった知者ダニエルは、王の命を受けた将軍アリオクの前に進み出て、自分を王様のもとに連れていくように頼みます。