「レスキューワンコ その壱」 「レスキューワンコ その弐」より
「南アルプス山岳救助隊k-9シリーズ」(樋口明雄)は、日本第二位3190メートルの北岳で、犬と人間がお互いを相棒(バディ)として信頼し合い山岳救助を行う物語だが、登山者の遭難救助だけでなく、山で起り得る問題を取り上げているので、テロや火山が取り上げられることもある。
最新作の
「レスキュードッグ・ストーリーズ」の第四話
「神の鳥」では、犬連れ登山が自然界に与えるインパクトから動物と人との共生問題が提起され、更にはその背後にある人間の身勝手さが書かれている。
蝶が岳山頂の神の鳥 2016年 夏
第四話「神の鳥」には、あまり豊富とは云えない私の山歩きで見聞きすること全てが書かれている。
本ストーリの事の発端である、「犬連れ登山の問題のせいで山岳救助犬まで槍玉にあげられる」ことが理不尽であるのは勿論だが、動物持ち込み禁止を謳っている山域に、堂々と犬や猫を持ち込む人がいるという問題はたしかにある。
ねぇワンコ
ワンコは穂高連峰に名を頂いたほどに上高地に縁があるけれど、その上高地にワンコは行ったことはないんだな
なぜなら、上高地の公式ウェブサイトには「介助犬以外のペットの同伴はご遠慮願いたい」と記されているし、
現地の自然案内人さんが「オコジョなどは嗅覚が優れているため、外界からペットが持ち込まれると悪影響がでる」と仰っていたし、
そもそもお世話になるホテルの方が、それを絶対に許されなからね
だから毎年家族で上高地を旅する時は、ワンコは泣く泣くワンコ実家両親の元にお預けの身になっていたよね
ワンコをお預けにするのが忍びなくなった時、家族そろっての旅行を我が家は取りやめにしたよね ワンコ
でもさ ワンコ
いざ上高地に行くと、どうみても介助犬とは思えない犬をつれた旅行者が大手をふって歩いているのを目にしてしまうんだよ
上高地は自然保護の為マイカー乗り入れが禁止されているから、全ての旅行者は麓の駐車場で 低公害バスか許可されたタクシーに乗り換え、上高地入りすることになっているんだよ ワンコ
にもかかわらず上高地をペットが闊歩してしまうのは、
ペットを連れた観光客を乗せてしまうタクシーがあることも問題なのだろうし、
持ち込みを禁止するためには、麓の駐車場にペットの一時預かり所を設ける必要もあると思うんだよ
だけど何より問題なのは、
自然保護のために様々な規制がある場所を、その自然の恩恵を受けるために訪問しながら、自然を脅かす動物を持ち込もうとする人間の存在だと思うんだよ ワンコ
持ち込まれる動物が悪いのではなくルールを守らない人間が間違っていると思うんだよ ワンコ
本書に書かれている猿害の問題も同様だ。
北アルプスで、「神の鳥」と云われる雷鳥が猿に補食された事例が初めて発表された時(※)には驚いたが、それを昨年の蝶が岳では実感することになった。
初めて蝶が岳に登ったのも、そこで初めて雷鳥に出会ったのも、たった13年ほど前のことだったが、その時 初めて見た雷鳥は、私のほん隣でゆったりと寛いでいた。
あまりに人を警戒しないことに驚いている私に、居合わせた登山者が「その鳥は雷鳥といい、昔から日本では ’’神の鳥’’として大切にされてきた。だから雷鳥はまったく人を警戒しないのだ」と教えて下さったのだが、昨年蝶が岳にいた雷鳥は、決してハイ松から出てくることはせず、そこから絶えず周囲を見回し警戒を解くことはなかった。
その姿は、たんに猿を警戒しているだけでなく人間をも怖れているように見えたが、それは私が、猿が増えすぎたのも、猿があまりに傍若無人になってしまったのも、人間に原因があると考えているからだと思う。
河童橋周辺でくつろぐ猿 2016年 夏
上高地では至る所に「猿に餌をやらないで下さい」というポスターを見かけるが、それでも餌をやる観光客は後を絶たない。注意でもしようものなら、「それをアンタが言う法的根拠はあるのか」と言い返されることさえある。
たしかに、多くの観光客で賑わう河童橋周辺で、猿の親子ずれを見て喜んでいる分には、猿は珍しく かわいいかもしれない。
だが、河童橋から歩くこと2時間を過ぎ、徳澤~横尾あたりで出くわす猿には、違う気持ちを持つかもしれない。
登山者が十数人でもいれば心強いが、数人で歩いている時に、数十頭のサルに囲まれれば恐怖感すら湧いてくる。
数年前2300メートルの涸沢で出くわした猿の大群は狂暴でもあったため、山小屋の人が猿追いをせねばならず、30分近く停滞したしたが、そのようなことは涸沢に初めて登った15年ほど前にはなかったことだ。
猿が雷鳥を食べたと騒いでみたところで、その原因は、人間にあるように思えてならない。
自然は厳しいけれど、人が手を加えなければ、厳しいなかでバランスを保っている。
それを身勝手な理由で崩しているのが私たち人間なのだ、それを肝に銘じて「今年もワンコのお山を登りたい」そんな計画を立て始める水無月最初の休日である。
参照※<恐れていたことが…サルがライチョウ食べる>
2015年8月31日 21:31日テレNEWS24より一部引用
ライチョウの保護を目的に調査を行っている研究者のグループ「信州ライチョウ研究会」が、長野県の北アルプスでニホンザルがライチョウを食べている姿を確認した。
25日、ニホンザルがライチョウのヒナを捕まえて頭から食べている瞬間の写真を、松本市と安曇野市にまたがる北アルプス東天井岳で、信州大学の中村浩志名誉教授が撮影した。中村名誉教授を会長とする研究者のグループ「信州ライチョウ研究会」が、長野県庁で緊急の会見を開き発表した。
もともと標高2500メートル以上の高山帯にはいなかったニホンザルが、ここ20年ほどの間に生息範囲を広げているという。ライチョウを食べている姿が研究者によって確認されたのは全国で初めて。
サルは群れで行動するため、ライチョウを食べる習慣が広がっている場合には、ライチョウの個体数の減少に深刻な影響を及ぼす可能性があるという。
今回の確認を受けて長野県では、今後、環境省などの関係者と協議を行い、対策を検討していくことにしている。
http://www.news24.jp/articles/2015/08/31/07308384.html