何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

心に、ももを ①

2020-08-13 14:33:57 | 

毎年「山の日」の頃は、お山に登っている。
それが今年は、お山に登れないどころか、上高地訪問すら諦めなければならない事態になっている。
それで、というと仏様には叱られそうだが、今年はお寺さんのお盆のお参りに出席した。
後輩部下の一人にお寺(浄土宗)の息子がいるので、「今年のお参りはどうなのか」と訊くと、「マスクをして読経するらしい」とのことだったので、そうなのかと思っていたが、(同じ浄土宗だが)我が家のご住職も小坊主さんもマスクなしで朗々と読経された。
有り難い読経なので、感染の心配などせずともよいのか。
この状況では茶菓も迷ったのだが、アルコール消毒ジェルとともにお茶と水菓子をお出しすると、(出しておいて、こう言うのも変だが)驚いたことに、お茶もピオーネもペロリとお召し上がりになったので、このところの仕事場での厳重な感染予防対策についてのアレコレを色々思ってしまった。                読経の後に話題となった経机の桃

ご住職との会話だけに、仏教寺院の入り口に立ち門番の役目を果たす神を、桃の木で作ったのは(桃符)、桃には邪気の払う力があるからだ等が、話題となったが、私の頭は違う ’’もも’’ が浮かんでいた。

「モモ」(ミヒャエル・エンデ)

児童小説のジャンルに分類されるのかもしれないが、本書は「星の王子様」(サン・テグジュペリ)と並んで、大人でも考えさせられる、というより大人だからこそ深く考えさせられる本である。

主人公のモモは、廃墟の円形劇場に住むようになった貧しい少女。
モモと交流すると、街の人々は心が軽くなり幸福感を感じるのだが、ある日街に’’灰色の男たち’’がやって来て、大切な時間を節約し時間銀行に貯蓄すると命が長くなる、と吹聴し始める。
街の人々は、大切な時間を効率よく使い 浮いた時間を貯蓄することで寿命が延びるという、一見するとケチのつけようのない魅力的な宣伝文句に惹かれ、寸暇を惜しんで働き、忙しくイライラした生活をするようになる。
 
街の人の異変や ’’灰色の男たち’’の陰謀に気付いたモモが、時間泥棒から街の人の時間を取り戻す闘いに挑むなかで、時間や幸福や仕事への向き合い方についての珠玉の言葉に出会うことができる本書「モモ」
 
有難い読経や仏教と桃についてのお話を伺いながら、「モモ」を思い出したのは、経机の桃が、応援するということの流儀を教えてくださった人生の先輩からの贈り物だったからだと思う。
 
それは、忙しさのあまり怒りっぽくなり、待つということができなくなっている私に、とても良いタイミングで届けられた教えでありエールのように思えたからだ。
 
そんな有難い教えは、少しばかり時間ができたお盆休みに、記しておきたいと思っている。