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伝承は神の教え其の弐

2015-05-16 11:17:59 | 
火山と伝承について書くきっかけとなった、箱根山の現状

<1日455回 箱根山で“最多”火山性地震> 日本テレビ系(NNN)5月16日(土)0時37分配信より一部引用
 活発な火山活動が続いている神奈川県の箱根山で15日、455回の火山性地震が観測された。温泉地学研究所によると、先月末に火山活動が活発になってから1日で観測された火山性地震の回数として最も多くなった。



「神坐す山の怒りの火」「破局に終わらせない知恵を」「つよっしーを信条に」「伝承は神の教え其の壱」
このところの、つづき

「死都日本(石黒耀)では、聖書のヨハネ黙示録が火山噴火の影響を受けて書かれたという説が紹介されている。
では、日本の「古事記」は?と書いてきて、「ワンコ」と「葵祭」をはさんだが・・・・・。

「古事記」と火山に話を戻す。

「死都日本」で繰り広げられる「火山神伝説」は、古事記の様々な表現について火山活動と関連付けて説明している。
そもそも神武東征を、高千穂火山の噴火により被害を受けた天孫族を率いた神武天皇が、活火山のない近畿地方へ大移動し大和政権を樹立したものと位置付けており、それは神武天皇が眠る橿原神宮の場所からも推測できるとしている。曰く、神武天皇が眠る橿原神宮は、死火山である畝傍山と香久山に抱かれた場所であることから、神武天皇をはじめとする天孫族が如何に火山噴火を恐れていたかの証左である、と。

これより「古事記」が伝える火山の噴火の表現方法をみていく。

<日本列島を形成した夫婦神イザナギとイザナミ>
古事記でイザナミは、炎に包まれ生まれてきた「火の神カグツチ」を産んだため黄泉の国(死者の国)に堕ちるが、そもそも日本には黄泉の語源となった黄土地帯がないため、定説では中国の古代思想の影響を受けたものだとされているそうだ。
しかし本書の「火山神伝説」は、火山を女神と崇める風習が世界各地にあることからイザナミを火山神ととらえたうえで、「火の神を産む=噴火する」「黄泉に堕ちる=山体崩壊する」「黄泉=硫黄が噴き出す熱泉地帯」とする。
古事記の創世伝説を火山噴火を表したものと解釈すれば、中国思想を云々しなくとも、天孫降臨伝説のある地帯の火山から吹き出す硫黄の蒸気こそが「黄色い泉」つまり「黄泉」だというのだ。
霧島・硫黄山の「賽の河原」、雲仙の「地獄」、那須の「殺生石」など熱泉地帯に縁起でもない地名がつけられているのは、大和民族にインプットされた冥界、つまり黄泉のイメージだから、と解釈される。


<天の岩屋戸伝説>
定説では、スサノオの乱暴に怯えた太陽神アマテラスが岩戸に隠れたため高天原が暗闇に包まれた事象は、冬至の日照不足を意味し、アマテラスが岩戸から引き出され明るさが戻る事象は、春の到来を意味するとされている。別には、一連の事象を皆既日食ととられる人もいるという。

これに対し本書は3つの例をあげ反論している。
「常夜往さき」と「スサノオの涕泣」と「狭蠅」
唐突な暗黒化が始まって「常夜往さき」だったと古事記にあるが、「常夜往さき」とは来る日も来る日も夜が続くという意味であることから、冬至や皆既日食は考えられない。それよりは、「破局に終わらせない知恵を」で紹介した1815年のタンボラ火山噴火のせいで3日間暗闇に包まれた事象の方が類似点があるとしている。

更に直接的に火山活動を表現していると思われるものに「スサノオの涕泣」と「狭蠅」があるという。
古事記には、「スサノオが泣き喚くと山が枯れ、川が乾き、海が干上がり、万の災いが世に満ちた」とあり、
定説は「泣く」を豪雨と捉えてスサノオを暴風雨神とする。
しかし豪雨が起こって、山が枯れ川が乾き海が干上がることはないことから、本書はスサノオもまた火山神と捉えたうえで、「泣き喚く」を噴火の轟音、降灰で山川海が枯れ干上がったと解釈する。

そして、「常夜往さき」と「スサノオの涕泣」記載で共通する「狭蠅」の存在。
『これにより常夜往さき。ここに万の(邪)神は狭蠅なす満ち、万の妖悉に発りき』
(スサノオが泣き喚き山が枯れ川海干上がり)『悪しき神の声、狭蠅の如く皆満ち、万の妖悉に発りき』

高天原の神々は狭蠅が其処ら中を飛び回っている状況をこの上なく恐れているが、古事記に登場する正体不明の「狭蠅」とは何か。
定説は、「五月(さつき)の蠅」を語源としている。
しかし、冬至の頃の高千穂に五月蠅が群をなして飛び回わったとは考えられないことから本書では、文字通り「体幅の狭い蠅のような物が空間を満たすほど飛んでいた」と解釈し、その形状から火山灰だと結論付ける。 爆発的噴火がもたらす火山灰は帯電しており長時間空中を浮遊するため、陽を遮り、真っ暗な「常夜往さき」状態になる。更にこれは硫黄・硫酸を含んでいるので長期的には呼吸疾患をも引き起こす。この状態は、
まさに『これにより常夜往さき。ここに万の(邪)神は狭蠅なす満ち、万の妖悉に発りき』

つまり、『「古事記」に記される事象を火山活動によるものだと解釈すれば、古事記の表現は科学的に的確であり、その確かさから考えれば、「古事記」は天孫族の先祖が子孫に当てた噴火災害警告の書だ』という説を、「死都日本」で著者石黒氏は述べている。

この天孫族の先祖が後世に伝えたもの、皇太子様が水運のご研究から「災害と歴史」に幅を広げて研究成果を
発表されていることなどについては、
つづく

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