このところのつづき、最終稿
『古事記に記される事象を火山活動によるものだと解釈すれば、古事記の表現は科学的に的確であり、その確かさから考えれば、「古事記」は天孫族の先祖が子孫に当てた噴火災害警告の書だ』という説を、「死都日本」で著者石黒氏は述べている。
「破局に終わらせない知恵を」で紹介したが、破局噴火がもたらす暗黒化現象と小氷河期現象の凄まじさを改めて記しておく。
1815年4月11日インドネシアのタンボラ火山の破局噴火
『噴火のためにジャワ一帯は3日間闇に包まれ、更に拡散した浮遊火山灰が地球規模で太陽光を遮り、世界を小氷河期に陥れてしまった。夏になっても気温は上がらず、アメリカのコネチィカット州では7月5日から連日雪が降り、外に干していた洗濯物が凍ってしまったそうである。ヨーロッパも同様で、夏にパリ市内に積もった雪が翌年まで溶けなかったと記録されている』
この暗黒現象こそが古事記でいう「常夜往さき」だと認定すると、アマテラスが「常夜往さき」状態を「万の妖悉に発りき(万の災いが世に満ちた)」と如何に恐れたかは、天皇家の三種の神器のうち二つ(勾玉と鏡)が暗闇から太陽神アマテラスを誘い出すために使用されたものであり、残る神器も出雲から送られた火伏せの宝剣・草薙であることからも分かる、と「死都日本」では書いている。
「死都日本」は、「古事記」は神話と言うよりは祖先が子孫に贈る日本最初の噴火災害心得だったのではないかと語りかけ、祖先の知恵を活かすべく希望を示している。
少し長くなるが引用する。
『国民が災害の悲しみに沈んでいては明日への希望が見えてこない。災難を豊かな新生の祭りに変えてこそ視野も浮かばれるし、出雲をはじめとする諸外国も信頼してつきあってくれる、という社会危機対応マニュアルだったのではないでしょうか?
私達の祖先は何千年も前から幾度も火山災害に遭い、何度もやり直してきました。この火山国の住民である限り、火山との付き合いが終わることはありません。これから来る災害は確かに恐ろしいものです。何百万人の国民が死ぬか、それさえ見当がつきません。
しかしこの試練を乗り越えれば、国土は実り豊かな大地に生まれ変わり、確実に明日が開けるのです。
日本国民の皆さん、哀しみを振り払い、顔を上げ、もう一度、美しい日本と、美しい日本人の姿を取り戻してみませんか?
古事記には、イザナミが「毎日千人殺す」と脅かすと、イザナギが「それでは千五百人子を産む」と答える場面があります。先祖から受け継いだ勇気と知恵があれば、我々はきっと失った以上のものを生み出すことが出来ます』
地球規模で地殻変動が生じていることを考えると、これから日本を襲う災害の規模も凄まじいものかもしれない。
しかし我が国は、長い歴史と、それを伝える文化が育まれてきた国であるゆえ大丈夫だと信じたい。
なぜなら、先人が困難を乗り越えてきたことは、次なる困難に打ち勝つ知恵と勇気となるからだ。
「死都日本」には次のような一文もある。
『鏡と勾玉には暗黒化現象に伴う社会不安を解決するヒントが隠されており、それを実行する者こそが天皇にふさわしい』
私はこの文章に出会った時、近年の皇太子様のご研究に想いが及んだ。
皇太子様は「水」の研究者として数々のご講演をされており、初期はご研究の契機となった水運を柱とした内容であったが、気候変動が世界的問題となって以降は、徐々に環境問題にご関心を広げられ、東日本大震災以降は明確に「水と災害」、とくに災害を伝える歴史的資料についてご研究と発表をされている。
皇太子様のご講演を拝読すると、時代的には、紀元前後の弥生時代に洪水制御のために発展した環濠遺跡や、「日本書紀」に記される仁徳天皇の時代の河川の氾濫対策についてまで遡って言及されている。
過去の地震については幾つも紹介されているが、東日本大震災と震源域が重なる869年の貞観地震については、現在の被害の画像にあわせて「日本三大実録」における被害の描写を示され、1498年の明応地震については徴税史料「船々聚銭帳」から復興の様子を例にひいて講演されている。
国語の授業で馴染み深い「方丈記」(鴨長明)や「太平記」も、災害を伝える資料という点から講演されている。
無常観漂う冒頭を暗記させられた「方丈記」には大火に竜巻に飢饉に地震が描かれていることや、軍記物として知られる「太平記」には康安元年(1361年)の地震津波が描かれていることも紹介されているが、これは何も闇雲に災害の数とそれを記録している資料を羅列されているだけではない。
皇太子様があげておられる様々な分野の資料は、我が国が幾多の災害や飢饉に見舞われながらも一歩一歩前進してきた証しであり勇気の源となるのだ。
第6回世界水フォーラムにおける皇太子様の御講演より
何よりも学ぶべきことは,私たちの祖先が災害によって私たちと同じような困難に直面し,立ち向かい,克服してきた事実そのもののように,私には思えます。先人たちが幾多の災害にかかわらず,たゆまない努力によってこの社会と街を作り上げてきたことが,私たちに多大な損害と困難,大きな悲しみを乗り越え,前へ進む勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
古事記が神武東征を余儀なくなれるほどの破局噴火を伝えるものだとして、祖先はそれを乗り越えより発展した国を作り上げた。それ以後も水害に遭っては備え、数々の地震や津波から立ち上がってきた先人がいるということは、これから益々地球的規模の災害に遭うかもしれない現代の我々にどれほど力を与えてくれることか。
歴史ある国でありそれを伝える文化があることは本当に有難い。
科学的には個々に優れた研究や(災害の)生々しい映像や画像もあるが、それらの理解を深めるために、過去の軍記物や随筆や徴税帳など様々な分野の資料をもちより、総合的な災害心得を編纂され国内外に発信される
皇太子様。
伝承が神の教えだとすれば、その伝承に新たなページを加えられるのは、神の教えを継いでいかれる方の使命かもしれない。
「死都日本」より
「鏡と勾玉には暗黒化現象に伴う社会不安を解決するヒントが隠されており、それを実行する者こそが天皇にふさわしい」
昨年は皇室と出雲に特別な御縁が誕生し、皇太子ご夫妻は出雲に嫁がれたお姫様のご家族を非常に大切に思われているという。
古事記も伝えるように、出雲をはじめ皆と力をあわせ困難を乗り越え、より良いものを伝えていくためには、
神の教えである知恵を継いでいかれる方こそ天皇にふさわしい。
先人の足跡を勇気に変えるため、新たな智慧の書を編纂されている皇太子様を、心から信頼申し上げている。
『古事記に記される事象を火山活動によるものだと解釈すれば、古事記の表現は科学的に的確であり、その確かさから考えれば、「古事記」は天孫族の先祖が子孫に当てた噴火災害警告の書だ』という説を、「死都日本」で著者石黒氏は述べている。
「破局に終わらせない知恵を」で紹介したが、破局噴火がもたらす暗黒化現象と小氷河期現象の凄まじさを改めて記しておく。
1815年4月11日インドネシアのタンボラ火山の破局噴火
『噴火のためにジャワ一帯は3日間闇に包まれ、更に拡散した浮遊火山灰が地球規模で太陽光を遮り、世界を小氷河期に陥れてしまった。夏になっても気温は上がらず、アメリカのコネチィカット州では7月5日から連日雪が降り、外に干していた洗濯物が凍ってしまったそうである。ヨーロッパも同様で、夏にパリ市内に積もった雪が翌年まで溶けなかったと記録されている』
この暗黒現象こそが古事記でいう「常夜往さき」だと認定すると、アマテラスが「常夜往さき」状態を「万の妖悉に発りき(万の災いが世に満ちた)」と如何に恐れたかは、天皇家の三種の神器のうち二つ(勾玉と鏡)が暗闇から太陽神アマテラスを誘い出すために使用されたものであり、残る神器も出雲から送られた火伏せの宝剣・草薙であることからも分かる、と「死都日本」では書いている。
「死都日本」は、「古事記」は神話と言うよりは祖先が子孫に贈る日本最初の噴火災害心得だったのではないかと語りかけ、祖先の知恵を活かすべく希望を示している。
少し長くなるが引用する。
『国民が災害の悲しみに沈んでいては明日への希望が見えてこない。災難を豊かな新生の祭りに変えてこそ視野も浮かばれるし、出雲をはじめとする諸外国も信頼してつきあってくれる、という社会危機対応マニュアルだったのではないでしょうか?
私達の祖先は何千年も前から幾度も火山災害に遭い、何度もやり直してきました。この火山国の住民である限り、火山との付き合いが終わることはありません。これから来る災害は確かに恐ろしいものです。何百万人の国民が死ぬか、それさえ見当がつきません。
しかしこの試練を乗り越えれば、国土は実り豊かな大地に生まれ変わり、確実に明日が開けるのです。
日本国民の皆さん、哀しみを振り払い、顔を上げ、もう一度、美しい日本と、美しい日本人の姿を取り戻してみませんか?
古事記には、イザナミが「毎日千人殺す」と脅かすと、イザナギが「それでは千五百人子を産む」と答える場面があります。先祖から受け継いだ勇気と知恵があれば、我々はきっと失った以上のものを生み出すことが出来ます』
地球規模で地殻変動が生じていることを考えると、これから日本を襲う災害の規模も凄まじいものかもしれない。
しかし我が国は、長い歴史と、それを伝える文化が育まれてきた国であるゆえ大丈夫だと信じたい。
なぜなら、先人が困難を乗り越えてきたことは、次なる困難に打ち勝つ知恵と勇気となるからだ。
「死都日本」には次のような一文もある。
『鏡と勾玉には暗黒化現象に伴う社会不安を解決するヒントが隠されており、それを実行する者こそが天皇にふさわしい』
私はこの文章に出会った時、近年の皇太子様のご研究に想いが及んだ。
皇太子様は「水」の研究者として数々のご講演をされており、初期はご研究の契機となった水運を柱とした内容であったが、気候変動が世界的問題となって以降は、徐々に環境問題にご関心を広げられ、東日本大震災以降は明確に「水と災害」、とくに災害を伝える歴史的資料についてご研究と発表をされている。
皇太子様のご講演を拝読すると、時代的には、紀元前後の弥生時代に洪水制御のために発展した環濠遺跡や、「日本書紀」に記される仁徳天皇の時代の河川の氾濫対策についてまで遡って言及されている。
過去の地震については幾つも紹介されているが、東日本大震災と震源域が重なる869年の貞観地震については、現在の被害の画像にあわせて「日本三大実録」における被害の描写を示され、1498年の明応地震については徴税史料「船々聚銭帳」から復興の様子を例にひいて講演されている。
国語の授業で馴染み深い「方丈記」(鴨長明)や「太平記」も、災害を伝える資料という点から講演されている。
無常観漂う冒頭を暗記させられた「方丈記」には大火に竜巻に飢饉に地震が描かれていることや、軍記物として知られる「太平記」には康安元年(1361年)の地震津波が描かれていることも紹介されているが、これは何も闇雲に災害の数とそれを記録している資料を羅列されているだけではない。
皇太子様があげておられる様々な分野の資料は、我が国が幾多の災害や飢饉に見舞われながらも一歩一歩前進してきた証しであり勇気の源となるのだ。
第6回世界水フォーラムにおける皇太子様の御講演より
何よりも学ぶべきことは,私たちの祖先が災害によって私たちと同じような困難に直面し,立ち向かい,克服してきた事実そのもののように,私には思えます。先人たちが幾多の災害にかかわらず,たゆまない努力によってこの社会と街を作り上げてきたことが,私たちに多大な損害と困難,大きな悲しみを乗り越え,前へ進む勇気を与えてくれるのではないでしょうか。
古事記が神武東征を余儀なくなれるほどの破局噴火を伝えるものだとして、祖先はそれを乗り越えより発展した国を作り上げた。それ以後も水害に遭っては備え、数々の地震や津波から立ち上がってきた先人がいるということは、これから益々地球的規模の災害に遭うかもしれない現代の我々にどれほど力を与えてくれることか。
歴史ある国でありそれを伝える文化があることは本当に有難い。
科学的には個々に優れた研究や(災害の)生々しい映像や画像もあるが、それらの理解を深めるために、過去の軍記物や随筆や徴税帳など様々な分野の資料をもちより、総合的な災害心得を編纂され国内外に発信される
皇太子様。
伝承が神の教えだとすれば、その伝承に新たなページを加えられるのは、神の教えを継いでいかれる方の使命かもしれない。
「死都日本」より
「鏡と勾玉には暗黒化現象に伴う社会不安を解決するヒントが隠されており、それを実行する者こそが天皇にふさわしい」
昨年は皇室と出雲に特別な御縁が誕生し、皇太子ご夫妻は出雲に嫁がれたお姫様のご家族を非常に大切に思われているという。
古事記も伝えるように、出雲をはじめ皆と力をあわせ困難を乗り越え、より良いものを伝えていくためには、
神の教えである知恵を継いでいかれる方こそ天皇にふさわしい。
先人の足跡を勇気に変えるため、新たな智慧の書を編纂されている皇太子様を、心から信頼申し上げている。