ライカを使い始めて1年が経った。
M11を手に入れ、最初で最後だからレンズに妥協はすまいとアポズミクロンM50mmを手に入れたものの、
もともとあったズミルックスM35mmへの憧れがおさまらず、腕時計を売り、他のマウントのカメラを全て売り、なんとかかんとか工面した結果、ズミルックスM35mm、ライカSL2-S、アポズミクロンSL35mm、ゾフォート2まで揃っているという自分でも想像できない1年後のこの現状となってしまった。
資産性が高いから最悪売ればなんとでもなる、と思うようになったのも大きかったと思う。
これほどにまでなんでライカに夢中になっているんだろう。
昔から僕はせっかく経験するなら一度は最上の経験をしてみたいという思いがあり、身の程もわきまえずTVRに手を出したり、ポルシェに手を出したり、Kitonに手を出したり…
最近ライカ繋がりで読ませていただいている方の影響で「Die with zero ゼロで死ね」という本を読む機会があり、それは人生を豊かにするお金の使い方を説いた本なんだけど、自分って若い頃から大変だけど人生が充実する選択肢を選んできてて、普通じゃ経験できない忘れられない思い出をたくさん残してこれたよね、本に書いてあることを結構やってきたな、と思う節があった。
閑話休題、そんな感じで身の程をわきまえなかった自分でも、デジタルなカメラは寿命が早そうだから…という理由で一旦は諦めた憧れのライカの夢。
夢が叶い撮り始めて実感できたのは、素晴らしいということに尽きる。
趣味のMT車と同様、マニュアルでピントを合わせる作業は今どきのAF機に慣れた人にとって面倒で無駄な労力だろう。
でもそれを積極的な理由をつけて愉しめる人にとっては、機械に頼らず自分の意志でカメラを操り撮影を愉しむことができるカメラとして、原理原則に則った、今や忘れられかけている最上の体験をもたらしてくれる授業料の高い先生だと思う。
ピント合わせに戸惑うから時間が掛かるし、それでもピンボケになってしまうこともしばしば。
たとえピントが外れてたとしても仕上がった写真は自分の意志がしっかり込められた写真なので納得のいい出来に思えてしまう不思議さ。
お気に入りのカメラを使っているというバイアスは大いにかかっていると思う。
「ライカじゃなくても撮れるでしょ」外から見た人が批判する理由も想像はつく。
その点に関しては思うことはあって、通常写真を撮るときは基本絞ってしっかり全体がように撮るのがデフォルトだと思う。レンズは絞った時に一番性能が発揮されるように造られていると聞く。
でもライカは「安心して開放で撮って、必要なときだけ絞れば良い。開放から最高性能を発揮するように造ってある」という言葉が印象的だった。
F値のデフォルトがライカ以外のカメラと違うのが、基本的な仕上がりの違いにあると思う。
主題を見つけ、基本の開放F値で撮影すれば主題が際立つボケの活きた写真が仕上がるので、ストーリー性のある写真ができあがる。
白飛びしやすく暗部に強い特徴があるから、基本暗めの写真ができやすいのも特徴の一端としてあると思う。
結果、他とは異なるライカスタイル(と僕が思っている)があり、我々がそれに従って撮影するのでライカらしい写真が仕上がりやすいのじゃないかな。
特徴に合わせて撮った写真は結果としてライカの求めるスタイルとなり、それっぽい写真が撮れたことが嬉しいし、より好きになる。
カメラはレンズが命で、その実力がいかんなく発揮された美しい写りに魅了される。
美しい仕上がりだと思う。
ここに上げることはほぼ無いけれど、憧れのライカで撮る家族の思い出は一生に残る思い出になることは間違いない。
iPhoneで取った写真だって一生の思い出だけど、ライカで撮ったら尚更精神的な満足度が高い。
結局は自己満足なんだろうけど、自分の人生で自分が満足できるものを使えればOKでしょう。
僕は元々総合的に優れているものよりも際立った特徴があるモノが好きだ。
デメリットにめげず気にせず、拘りを貫き通した特徴的なもの。
マーケティングすらまともにせず痛快なスポーツカー・タスカンを世に送り出したTVRなんてその典型。よく壊れたけど最高で、僕の価値観をぶっ壊してくれた人生の師匠だとも思っている。
ライカはそれに類いする傑出した製品だと思う。
今どきレンジファインダーにこだわり、こだわり続けたからこそカメラ界のオンリーワンの存在となったカメラ。
SLという今どき路線もきちんと抑えてるのが素晴らしいところで、そういう選択肢もあるからこそM型はM型を貫き続けているのだと思う(M型もデジカメとしてしっかり進化もしてるけどね)
色々と的外れかもしれない事を書いたけれど、何はともあれ自分が素敵だなと思えるカメラ。
これはデジタル一眼の集大成とも言われるD850を使っていて得られる満足度とはベクトルが異なるかな。
ライカを手にする切欠をくれた大切な友人、そして予想通り素晴らしい体験と思い出を残してくれているカメラ達には心から感謝を。
これからも大切にし、人生の相棒として素敵な思い出を残していってもらおう。