
聞いたことも無い街の駅に降りた。
ちょっとした打ち合わせで行ったんだ。
打ち合わせは2時間くらいだったので、ほとんどミニトリップだったよ。
世の中の殆どの駅をオイラは知らない。
電車オタクではないので駅名を知らないし、土地の名前だって知らない。
駅前は閑散としていて、ジリジリと太陽の日が容赦なく照りつける。
老人のグループがバスを木陰で待っていて、
客待ちのタクシーの運転手が3人ほど車から降りてベンチに座って話し込んでいた。
ロータリーの植え込みの木の緑がとても深く、
花壇のヒマワリが元気よく太陽に向かっていた。
駅前から国道に続く道路の上の空気は熱せられてその向こうの景色がユラユラしていた。
空には雲ひとつなく木陰に立っていても汗が流れてくる。
ランチを食べようと思ったけど店なんて全く無い。
喫茶店が駅前に1件あったけど、怖くて入れなかった。
カレーランチ味噌汁つきは頼みたくない。
少しだけ真夏の街を歩いた。
とてつもない大きなものを忘れてきたような、
ここに大切なものを置きに来たような、
なんか不思議な気分になった。
真夏に知らない街を歩くと不思議な気分になる。
オイラは今、ここで文章にしない限り、オイラ自信も忘れてしまう、そんな小さな旅だよ。
オイラは一人だということがしみじみ心に染み込んできた。
とてもビールが飲みたくなった。
友達を誘った。
二つ返事でOKが返ってきた。
茅ヶ崎の駅に着くと潮風が身体を覆った。
駅に降りると待ってくれている友達がいる。
ビールで乾杯した。
真夏のビールは胃にしみ込んだ。
嬉しいビールだった。
逢いたくなったときに君はもうここにいないけど、
知らない街で忘れそうになったものは、この海辺の街にある形でしっかりあったよ。