
俺は冬はしんどかったのだ。
吹きつける西風に身も心も凍てついた。
でもでも、熱い熱いボトムターンが全てを吹き飛ばしてくれた(ように思えた)。
夏になると、灼熱の太陽が全てを焼き尽くしてくれると思った。
でもそれは違っていた。ただただ暑いだけじゃないか!
熱い砂や、とろけるようなオーバーヘッドの波や、火照った身体を潤す冷たいビールは、
俺をますますブルーにした。
マイナス100度の太陽というのは本当にあるんだ。
心を湿らす夏もあるんだよ。
目の前を歩くビキニの女や、ココナツオイルやセックスワックスの香りは、
俺を狂おしくイライラさせた。
本当は一番好きな季節だったんだけどな、夏は。
自転車で通る海沿いの道や
エアコンの効いた部屋や
夜遅くに見終わったDVD
グラスに残ったビールの甘ったるい匂い
松林の中から響くウクレレ
そういうものや光景や体験はとても切なくて
胸が押しつぶされそうになるんだ。
風は全く吹かない。
でも風が吹かないせいじゃないけど、
風が吹かないと心が淀む。
こういう思いはしたくないし、させたくない。
夏が辛いサーファーは気の毒なものだ。
それは、ちょいとばかり非常に稀にかなりとっても酷なんだよ。
summertime ってスタンダードな曲があって、よくカバーされている。
かったりぃ、憂鬱になる曲だ。
ジョージ・ガーシュウィンの生んだ曲で、ジャニスジョップリンの名唱が有名だ。
これはポール・マッカートニーでとてもブルース色が強い。
歌詞はこんな感じだ。
夏は生きることすら簡単に思える
海面を優雅に魚が跳ねて、
綿畑はたわわに実る
パパは金持ちで、ママは美人
だからいい子におしよ
泣くことなんかなにもない
そんな夏の朝に
お前は目を覚まし
その小さな翼を広げ
大空へと巣立っていくだろう