今、物を買うときに便利だというのでカードを使う機会が多くなっている。あまりそのことに抵抗はないのだが、枚数が多くなると何が何だか分からなくなるので増やさない。多くて何が何だか分からなくなるのはパソコン内のファイルだけで充分だ。
タバコを買うのにもカードが必要となっている。タバコに関してはそれ専用のもので、他のカードで置き換えることができない。タスポという名で、初めその名を訊いたときは「タバコ、スポスポ吸ってね」というような意味かと思っていた。今でもそう思っている。未成年者が購入することへの対策かもしれないが、不便だと思う。それでという理由ではないが、それは持っていない。
昔はタバコは子供でも買うだけなら買えたのである。私は4~5歳の頃に既にタバコは買っていた。父親のタバコを買いに使いに出されるのである。7~800メートルくらい離れたタバコ屋まで母親に渡されたお金を持って歩いて行くのである。桜並木の通りを行く。この桜並木は春になると花見の場所となる。その間、道ゆきには特に難所はない。当時は野良犬が多くいてそれがまだ小さいこちらと眼の高さが同じくらいでこれを刺激しないように、そそと歩いて
ゆくだけである。父親が吸っていたタバコは、いこい、という銘柄で薄茶色のパックに包まれたものだったと思う。
タバコ屋は典型的なタバコ屋、といった木造の建物で、小さなガラスの入った、タバコ屋ですといった風の窓が眼の高さより高いくらいのところにあった。そしてこれまた典型的にその中には、おばあさんが座っていたのである。忘れそうになるその銘柄を暗がりのそのおばあさんに言うと、特に未成年とか何とかは訊くこともなく売ってくれたのである。おもちゃとかそういった自分と関係のあるものでないことはチビでも分かっていたので、実につまらない往復だった。特に駄賃もなくあまり有難がられもしなかったように思う。ただのお使いだった。おそらく当時、子供はみなそんな感じだったのだろうと思う。

