元興寺という名さえ知らなかった。
歴史の教科書には書かれていたらしいが記憶にない。それを訪ねたのは、春日大社、東大寺、興福寺などの喧噪に飛び込むのを避けるべきだという、ただそれだけの理由だった。
否、もうひとつの大きな理由は逗留先からの徒歩圏にあったということである。
とにかく建物が美しい。
写真上は、国宝の極楽堂。ご本尊が智光法師感得の浄土曼荼羅であるゆえに曼荼羅堂とも呼ばれたらしい。
靴を脱げば中へ上がることも可能なのだが、国宝のなかに直に足を踏み入れたり、古よりの太く立派な柱を掌で触れてしまえることも、考えてみたら凄いことである。
国宝の禅室越しに眺める極楽堂。後ろ姿もまた凜々しく、大らかだ。
目の当たりに、飛鳥時代の古代瓦を拝むことが出来るというのも感動である。
博物館に陳列された瓦の一部ではなく、あるべき場所で今なお己が務めを果たす瓦の力強い美しさ!
天気も良く、日の光を色とりどりに反射しては、嬉しそうであった。
お休み処(小子坊・極楽院旧庫裏)の庭園で見かけた鬼。
悶絶しているようなエロティックさ、滑稽さが堪らなく愛おしい。
帰宅してから、境内にはあと4体の鬼があることを知った。また、出掛けて探さなくては。
蛙石は、秀吉によって大阪城にもたらされた奇石。大阪城落城の折には、この下に淀君の亡骸が埋められたという説もあるあるらしい。
とまれ、秀吉に見出され、愛されただけの魅惑のある石であることには変わりない。
さて、その後の散策では、福智院の地蔵大仏、新薬師寺の十二神将などをじっくり眺めることだできた。
いずれも、人出は少なく、心静かな時を過ごせたことを喜びたい。