今朝、宇野功芳先生の訃報が舞い込んできました。
喪失感。
いまは多くのことを書くことができません。
まだ中学生だったわたしが、石橋メモリアルホールで聴いた日本女声合唱団との第2回リサイタル(メインは「水のいのち」)。そのアンコールで演奏されたレーガー「マリアの子守歌」の究極のピアニシモが今も耳朶から消えません。
「眠れ、我が子・・」
あのような純粋でひたむきで、そして張り詰めて透明な女声合唱の響き。気が付けばそれを追い求める自分がおりました。人の人生を決定付けてしまうほどの魅力が、宇野功芳先生の女声合唱指揮にはありました。
その女声合唱の達人である宇野先生のもとで、跡見学園のコーラスでヴォイストレーナーをさせて頂けたことも大きな歓びでした。
「魔笛ファンタジー」でモーツァルトの哀しみと微笑みを教わりました。「ねむの花」「石臼の歌」など中田喜直作品の音楽の作り方は、いまも大きな指針としてわたしの中に生きています。
実際にお話しすると、その文章のような毒はなく、お酒、食事、電車、女性を愛するお茶目な方でした。ご執筆においては締切に1日たりとも遅れることなく書き上げる職人中の職人でありました。
その魅惑的かつ独断に満ちた文章によって、我が青春の日々を豊かにしてくださったこと、合唱指揮の素晴らしさを教えてくださったこと、音楽評論の世界にに誘ってくださったことに感謝を捧げたいと思います。
どうぞ安らかにお休みください。
合掌。
追記
最近の宇野先生の文章しか知らない方には、「たてしな日記」のご一読をお薦めしたい。ここには瑞々しい感性による美しく純粋な魂の叫びがあります。