明鏡   

鏡のごとく

『どんぐりはえぐいか』

2013-11-01 23:22:08 | 小説
秋祭りに、どんぐりクッキーを買いに来た女の人がいた。

色が透けるように白く、程よく乾いた団栗のような愛くるしい目をした人であった。

彼女は、クッキーモンスターの描かれたシャツを着て、昔見たことの有るできるかなといいたげに工作をするテレビ番組でなにもしゃべらない男の人がかぶっていたようなカラフルな帽子をかぶり、たたくとビスケットが出てくるという歌に出てくるポケットがほしかったのか、穴がいくつも空いているジーンズを履いていた。

どんぐりクッキーを食べるには、これ以上ない出立ちに見えた。



どんぐりクッキーありますか。


ありますとも。
どんぐりを拾って、重曹といっしょに煮て、皮を剥いて、砕いてクッキー生地に混ぜて、こねて、焼き上げたクッキーであります。


クッキーはいつまで持ちますか。


食べられるまで持ちますとも。
なるべく早めにおたべください。


それじゃあ、少し周りを見てきます。


彼女は、秋祭りの他の場所に行ってしまった。

クッキーモンスターは確かに二次元のシャツの中で明後日の方向に目をひんむいて(結構、あの正直な貪欲さは好きなのであったが)向こうに行ってしまった。

なぜかしら、クッキーモンスターの中で蠢いている誰かの見えざる手を探すような心持ちで彼女の後ろ姿を見送っていた。




祭りの後。

彼女は、片付けている場所にきた。


もう、クッキーはないのですか。


はい、残念ながら、売り切れてしまったのです。


彼女は、目に涙を浮かべながら、亡くなってしまったどんぐりクッキーを頬張っているように、ぼそぼそと話しだした。


実は、どうしても遠くに住む姉にクッキーを食べさせたくて。


幾つか頼まれて別にしておいたものを思い出し、彼女とお姉さんの分を作業場に取りに帰った。

彼女もついてきたので焦げかけて売り物にしなかったクッキーをつまみ、お茶をいただきながら、お話をした。

彼女が話しだした。


姉が持っていた昔見た子供用日本の歴史の本に、古代人が団栗を食べていたという話が出てきて。
団栗はどんな味なのか、食べてみたかったので。
団栗ってえぐいんですよね。
其の歴史の話に、えぐいって書いてあって。
どんな味なのかなって、子供ながらにすごく興味があって。


もちろん、古代にどんぐりクッキーはなかったであろうが、古代の人はここいらに有るのと同じような団栗を食べていたということは米などといっしょに遺跡から出てきたからには確かであろうが。

団栗にもブナ属のおいしくたべられる「くり」や、コナラ属の「くぬぎ」みたいなえぐいものと、えぐみの少ないマテバシイ属の「まてばしい」のようなものがあって、そのえぐみのすくない「まてばしい」を使っているのでおそらく?大丈夫。

そういえば、自分もその彼女の見たという歴史の本を誰もいない図書館のようなところで読んだことがあったのを思い出した。
ぐえーといいながら、吐いているようなイメージも不意に浮かんできた。

えぐい団栗の話は、彼女に言われるまで、ちっとも覚えていなかったが、あの歴史の本は妙に端折っているところが小気味良く何度も読み返した覚えはあった。

いわゆるマンガ的歴史の本の話ではなく、実際、食べている今があり、そのまま、そこにいる古代人の踏みしめた泥をかぶり、泥にぬかるみ、米を植え、刈り、団栗をひろい喰らうのは、何も特別なことではない。
妙な時の繰り返しの中の少しづつの変りようの果てが今であり、これからも、端折って語られつつ、少しづつ変わっていくだけである。

たとえ戦争があろうがなかろうが。たとえ原発が爆発しようが。

そこに暮らす限り、どれだけ端折られようが、踏みつけられようが、続いていくものなのであろうが。


いつのまにか、借りて読んでいた本と団栗を守る場所にいることには気づいた。


それから、とめどない話をしばらくして彼女は帰っていった。


どんぐりはえぐいか。


彼女にききそびれたままであった。

泥棒天国ではいけない。

2013-11-01 21:22:22 | 日記
下村文部科学相は1日の閣議後の記者会見で、日本の重要美術品が中国のオークションに出品され、落札されていたことを発表し、「美術品市場やインターネットを随時確認するなど、重要美術品の無許可での輸出防止に努めていきたい」と話した。

 文化庁によると、落札されたのは、京都・高山寺が所蔵していた中国の仏教文書「辨非集(べんひしゅう)」。1936年に重要美術品に認定されたが、その後、行方がわからなくなっていた。今年7月に中国浙江省で開かれたオークションに中国人所有者から出品され、約8000万円で落札されたという。

 重要美術品は、文化財保護法施行以前、国外への古美術品の流出防止を主目的として認定した文化財で、今も効力がある。重要文化財に次ぐもので、輸出には文化庁長官の許可が必要。

 同庁美術学芸課は「ネット上で写真を見て、中国のオークション会社とやりとりしたが、現物は確認できていない。落札者は非公表のため追跡の手だてはないのが実情」としている。

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勝手に持ちだされては、いけないものが多い中、行方が分からなくなっていたものが、出てきたら返すべきである。

泥棒天国ではいけない。

1970年に採択された文化財不法輸出入等禁止条約は、盗難文化財の返還義務

2013-11-01 07:50:30 | 日記

 【大田(テジョン)(韓国中部)=吉田敏行】長崎県対馬市の寺社から仏像2体を盗んだとして、韓国の文化財保護法違反などに問われた韓国人窃盗団3人の控訴審で、大田高裁は30日、懲役3~4年の実刑とした1審・大田地裁判決を支持し、控訴棄却の判決を言い渡した。

 3人が判決を不服として上告しても、最高裁で数か月以内にも判決が出るとみられており、仏像返還を巡る日韓の政府間交渉が視野に入ってきた。

 国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)で1970年に採択された文化財不法輸出入等禁止条約は、盗難文化財の返還義務を定めており、日韓両国は批准国だ。日本政府は同条約などに基づき、窃盗団が昨年10月に対馬から持ち込んだ仏像の返還を求めたが、韓国の寺側は「14世紀に略奪された」と主張。大田地裁が今年2月、寺側の訴えを受け、国に移転禁止の仮処分を命じているため、返還は実現していない。仏像は刑事訴訟の証拠品として保管されており、政府間の返還交渉が本格化するのは、訴訟確定後となる。