明鏡   

鏡のごとく

こわれもの

2009-11-25 21:32:59 | 小説
街にいながら遭難しそうな朝
霧がいつまでたっても消えないのは
太陽のせいばかりではなかった

寒くなったと言って厚着をしすぎ
周りに気づかない女はコートの裾で
雑貨屋のショーケースのショットグラスをこわした

ショットグラスのお詫びにカップを幾つか買った女は
ひとつだけ違う色のカップを買ったその日に
男にこわされた

そもそも その朝 女は男の作っていた機械仕掛けの
とりけらとぷすの片足がもげてこわれているのに耐えられず
ゴミ箱に捨てていたのだった

女は 女王陛下万歳と歌いながらつばをはく
男の目を見ながらこわれていたのは 
ロボット踊りをする人ではなく

ゴミがたまっていようがむしをする
ゴミ箱のそこのそこをのぞく敬意のかけらもない
穴の向こうの目だという事に気づいた

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。