あまぐりころころ

主に漫画やゲーム等の感想や考察を。
時に旅行記等も交えながらの、のんびりのほほんブログ。

『食戟のソーマ』単行本第2巻感想

2013-10-31 23:31:08 | 単行本感想

 はい、お待たせいたしました。
 『食戟のソーマ』単行本第2巻の感想、いってみましょう!



 この第2巻の発売日は2013年6月4日。
 第1巻の発売から丁度二ヶ月後ですね。
 これまで週刊誌に連載の漫画は3~4ヶ月サイクルで単行本化されていると思っていたので、これは結構早く感じました。
 それだけ早くも人気が出ていたということなのでしょうかね?(それとも『少年ジャンプ』では、そう珍しくないことなのでしょうか?)

 第1話が新連載ということで大増ページ。加えてプロトタイプ版読切や番外編等も収録されていたため、本編は5話しか掲載出来なかった第1巻でしたが、いよいよこの第2巻から、最初から最後までフルで本編を満喫可能に。
 そんな今巻は、第6話【極星のマリア】~第14話【恵の庭】まで、たっぷり九話分が収録されています。



≪表紙≫
 第2巻の表紙を飾るのは薙切えりな。
 どうやら表紙には毎回メインとなるキャラクターが1人抜擢され、背景もそのキャラクターの設定やイメージを反映したものになる模様です。
 内容的にも確かに彼女が相応しいですしね。
 グラス片手に玉座のような椅子に座っているえりな。
 そんな彼女に献上される、高級な料理の数々。
 まさに「食の女王」といった感じです。
 これでえりながドレスでも着ていたら、誰もが彼女を王女様かお姫様と間違えてしまうことでしょう。

 このイラスト、かなり第1巻の表紙イラストと関連付けてますよね。
 それは。
 創真との因果関係。
 第1巻では料理を“差し出す”創真が。
 で、この第2巻では料理を“差し出される”えりなという。
 なんつー関連性かと。(おまけに差し出される料理も肉料理と、共通だし)

 ですがそんな因果が暗示されつつも、雰囲気は見事なまでに対照的。
 赤がベースだった1巻に対して、この2巻は青。
 素朴で庶民的ながら、皆に囲まれ、賑やかで温かな雰囲気の中笑顔の創真。
 対してえりなは豪華で高級な物品に囲まれていながらも、1人という冷たい雰囲気の中で、無表情。
 本当にこの2人、因縁はかなりあれども正反対です。


≪裏表紙≫

 この巻から、カバー下の裏表紙に描き下ろしイラストが入りました。
 どんどん単行本ならではのお楽しみが増えてきて、嬉しい限りです♪
 カバー表紙がえりななら、カバー裏は誰が・・・?と思っていたら、抜擢されたのは、この巻初登場にして創真の初の食戟相手『水戸郁魅』。
 思いっきりカメラに迫り、舌なめずりな郁魅さん。
 ・・・う~~~ん・・・。
 男性からしたら郁魅のこの姿態はセクシーに思えるんでしょうねえ・・・多分・・・。
 狙いすぎな感があって、個人的には全くセクシーさを感じられませんけども。

 その裏表紙の後ろには、単行本103ページで丼研主将『小西寛一』を威圧する郁魅のシーンが。
 なるほど、裏表紙のイラストも、この時の丼研主将の視点からの郁魅の姿だったというわけですか。
 郁魅の威圧に怯えながらも、内心では彼女のワガママボディにドキドキだった小西サン。
 何時如何なる時でも女性の胸に目がいくのは、もはや男の性[さが]なのでしょうか?


≪附田先生コメント≫ 

 子ども時代、学校に行くのが好きではなかったと仰る附田先生。
 でも、嫌だったのは学校に行くことで、学校自体は嫌いではなかったと。
 この附田先生の経験は、そのまま創真にも反映されています。
 創真も学校ひいては遠月学園に行くことへの意味が分かりませんでした。
 ですが、楽しく話せる極星寮の仲間達がいて。シャペル先生等の信用できる先生がいて。他にも想像すらしていなかった事が色々あって。
 遠月学園という場所は決してつまらない所なんかではなかった。
 そしてその事実が、彼の世界を変えていくことに繋がっていくわけですね。 


≪中表紙≫

 今回の中表紙は調理姿でベッド?に仰向けに倒れているえりな。
 これもセクシーポーズっていうんでしょうかね?(同性だとそこらへんがよくわからん)
 一応無防備な姿ですが、その瞳は冷たく。
 選出されたサブタイトルも第9話の【氷の女王と春の嵐】。
 「氷の女王」とは、これまた言い得て妙ですな。


≪特別付録≫

 今回紹介されたレシピは、26ページに「ゆきひら印 鯖缶ハンバーグ」、46ページに「鰆の山椒焼き 春キャベツのピューレ添え」、70ページに「ゆきひら流 鰆おにぎり茶漬け」、そして198・199ページに「ゆきひら流 シャリアピンステーキ丼」「田所ちゃん特製 3種のおにぎり」の計5品と、前巻に比べ大幅増量。
 各レシピに附田先生画によるキャラクターがコメントを入れてくれてます。


 更に加えて話の間の空きページに、おまけ的挿絵がかなり充実した内容で掲載。
 94ページには第9話の扉絵の後日談が。
 豆まきに使ったお豆は、一色先輩が炒って美味しく食べてくれたとのこと。
 はい。食べ物は大事にね。(^^)

 114ページでは、小西先輩の切られたリーゼントをくっつける作業を恵ちゃんがお手伝い。
 リーゼントが重いのは理解出来るんだけど、よく包帯巻いただけでくっついたこと。
 

 134ページには「食戟当日!朝の肉魅さん」という4コマ漫画まで。
 食戟当日の朝、鏡の前でブラを選考中の郁魅さん。
 いつものアメリカ国旗柄、ヒョウ柄、カウガールバージョン・・・。
 最終的には本編で着ていた炎柄に決定。
 以降も外せない調理の際には、炎柄のブラで挑むことに。
 とまあ、気合を入れるのはいいんだけどさ。
 そもそも調理の服装がソレというのは、如何なものかと。

 154ページには食戟で司会を務めていた女の子の詳細が。
 食戟の司会担当である以上、これ以降も登場するでしょうし、ここで紹介しておいてくれるのは有難いですね。
 名前は『川島麗』。創真らと同学年ですか。
 郁魅の人気に舌打ちした時点で腹黒キャラということは察知してましたが、予想以上のブラック具合でした。
 なんでしょうこの男子からの好感を得ようとする計算に満ちたプロフィール(汗)。
 なんなんでしょう内心の超暗黒ゼリフ(大汗)。
 外見ヤンキーで内面乙女の郁魅と真逆だなとも思ったり。
 まあ、これでキャラはしかと立ちましたけども。
 これからも度々存在を(自分から)アピールしてきそうな予感です。

 「食戟当日!朝の肉魅さん」の続編「食戟翌日!朝の肉魅さん」は174ページに。
 食戟にて創真の料理から、「思うままにでいい、自分らしく」と語りかけられた郁魅ちゃん。
 本来はしとやかな女の子であった彼女は、その翌日普通の制服を着てみることに。
 あの露出の高い服装は、彼女にとっては“強い自分”であるためのコスチュームのようなものだったのですね・・って。
 かわいーーー!
 なにこれこっちの方がよっぽど良いじゃないですか!裏表紙の郁魅とはまるで別人!
 大抵の場合、ある程度の露出がある方が女性としての魅力が引き出されるものなのに(特に郁魅のようなプロポーションが良い子なら尚更)、普通の服を着た方が魅力的だなんてなんのマジックですかこれは!?
 だけど郁魅は気恥ずかしさに耐えられず、ブレザーを脱衣。
 でもやっぱり・・・ということで、第13話ラストの服装に至る・・・と。
 まさか郁魅がこんな可愛い子に化けるとは、彼女の初登場時には思いもしませんでした。
 そんなヤンキー娘をこんな純情乙女に変えちゃうとは、創真はなんてミラクルボーイ


≪佐伯先生コメント≫
 フェレットかわいいですね~。
 ほんとかわいいですね~。(ひたすら同意)



                                                                           



 序章であった第1巻から、遂に本格始動するのがこの第2巻。
 とは言いつつも、舞台である遠月学園のルールや「遠月十傑評議会」の仕組み等、第1巻に引き続きこの作品の土台となるものが説明されています。
 この作品のタイトルにある「食戟」という名とその仕組みも、この巻で披露。
 そんな土台固めと同時に、創真が在することになる極星寮の存在や寮の仲間達、えりなを頭とする敵対勢力、研究会等、これからの展開の伏線的設定も次々と登場していき、なかなかに先の予想を促す内容になっています。

 この巻の見どころは大きく分けてふたつ。
 まずは極星寮の個性豊かな仲間達との出会い。
 なかでも、遠月十傑第十席のえりなを上回る実力者である十傑第七席『一色慧』との勝負は、今後の展開への様々な含みが込められています。
 そして創真にとって初の食戟となる、『水戸郁魅』との対決は必見。
 プロトタイプ版読切を連載用に練り直した内容となっていますが、読切版の対戦相手では説得力がまるで無かった“繊細な調理を行う”という設定を、女性である郁魅に変えたことでその設定が説得力あるものへと改良されています。
 一色先輩も郁魅も、創真と関わる魅力的なキャラクターとしてこれ以降も多々登場することに。


 そんな新しい環境と出会いによって広がっていく世界観ですが、それは創真自身にとっても。
 彼のこの変化については、第3巻以降からはっきりと明示されていくことに。
 その一方で、戦うべき相手には悪役と見まごうばかりの見事なダークフェイスを見せたり、人情に厚いところや、人の話を一見聞いていないようで実はしっかり聞いているところ、そして結構自由気質なところなど、1巻では見られなかった面が続々と発覚。
 そんな創真のダークサイド顔ですが、慄きつつも私は結構好きだったり♪
 第1巻では無敵っぷり全開といった感じの創真でしたが、この巻から引き分けに思えた勝負が実は相手が手加減していたり、メニュー作りに四苦八苦し、仲間達の何気ない発言によって助けられたりと、勝負が一筋縄ではいかなくなることに。
 ですがその一方で、高級志向の強者に庶民的な料理をもって勝利を収めるその様は、相変わらず気持ち良く爽快です。
 ストレートさと奥深さ。それらが上手く組み合わされたメリハリあるバトル展開となり、俄然面白みが増したと思います。

 そしてこの第2巻全体を通して描かれているのが、創真とえりなの対照性。       
 この巻では創真の食戟と同時にえりなの食戟も描かれていますが、同じ勝利を収めるといっても、その動機や敗者への接し方はまるで対極です。
 一方はもはや我が儘としかいえない個人的な理由で食戟を行い、もう一方は直接的には自分と関係が無いにも関わらず、自身の退学も賭けて食戟の肩代わりを買って出て。
 一方は自分の才能[神の舌]にて相手の料理の欠点を指摘し、もう一方は仲間の発言から相手の料理の至らぬ点を指摘。
 敗北を喫した対戦相手への礼儀と非情、その一方で、対戦相手への無遠慮と懐っこさ。
 なにより決定的だった2人の違い、それは。
 決着後、えりなは負けた部下を冷酷に切り捨て、創真は戦ったばかりの敵を温かく迎え入れたこと。 

 上記でこの巻の見どころは極星寮の仲間達との出会いと郁魅との対決と述べましたが、実績派なえりなと温情派な創真、この2人の違いこそがこの第2巻の最も注目すべき点だと思います。

 えりなの食戟の後に残るのは“屈服”。
 創真の食戟の後に生まれるのは“絆”。
 これらの違いが、後々2人に大きな差となって関わってくる、そう確信しています。





 さて・・・。
 それではこの作品の主要キャラクターについての感想&考察を述べさせて頂きましょうか。
 前回は我らが主人公創真について語ったので、今回はヒロイン二人について。

 これまでの料理漫画はヒロインが重要視されることはあまり無かったと思うのですが、この作品は違います。
 その理由は、創真の父親にして彼の目標であり、この作品全体のキーパーソンでもある『幸平城一郎』氏のこの発言。
 「いい料理人になるコツは・・・、自分の料理のすべてを捧げたいと思えるような そんな女と出会うことだぜ―――」
 料理人は、自分の料理を食べてくれる人がいてこそ成り立つもの。
 
このことから、創真の料理人としての成長を握る鍵はヒロインであることが示されました。


 
そんな重要な役割を担うヒロインは、二人。
 その一人が『薙切えりな』。
 えりなはとにかくルックス抜群。
 この作品上で一番美人で華のある子ですよね。

 しかも[神の舌]と呼ばれる天性の超味覚を持ち、成績は主席というトップエリート。おまけに遠月学園総帥の孫娘という生粋のお嬢様と、まさに完璧超人。
 性格以外は。
 
外見の完璧さに反し、性格はほぼ最低といえるほど欠点だらけなえりな。
 高慢で不遜、高飛車で我が儘で理不尽。
 おまけに実は幼稚で意地っ張りで素直じゃないという。
 まさに「残念美人」という言葉のお手本のような子です。

 創真とは彼の編入試験の際に試験官を務めたことがきっかけで出会うことになりますが、えりなはまさに創真と対極に位置する存在です。
 上流階級の中でも食のエリートであるえりなと、一般階級で大衆食堂出身の創真。
 高級志向で気位の高いえりなに対し、創真は一般志向でフレンドリー。
 えりなは偏見と一方的な思い込みで物事を判断するのに対し、創真は物事を分け隔てなく真っ直ぐに捉え、判断します。
 高貴で悠然とした振舞いとは裏腹に、人としての器は極小なえりな。
 飄々とした軽薄そうな態度の裏で寛大な器を持つ創真。
 まさに背中合わせといった2人ですね。

 
 個人的に好感度最低のえりなですが、唯一の命綱ともいえるのが創真とのやりとり。
 普段は氷の女王と呼ばれる彼女が、創真と絡む時だけはただのツンデレな女の子に。
 すました態度から一変、創真の一挙手一投足にアタフタと振り回される様は、見てて至極痛快です♪(※栗うさぎはかつて占いで「ドS」と診断された経歴の持ち主)

 まあ・・・、創真に逐一ムキになって反応してしまうあたり、根はピュアな子だとは思ってますがね。
 秘書の女の子への態度は柔らかいものがありますし。
 これまでプライベートな部分はほとんど描かれていない分、今まで見えていなかった一面が発覚する可能性は充分にあるでしょう。(実際読切版では、祖父との会食に出す料理の試作に精を出すという、祖父思いな面が見られましたし)
 えりなは性格の欠点や未熟さが目立つ分、精神的成長の伸び代が非常に大きい子ですね。

 えりなのイメージは「氷山」。
 下界はその氷山を見上げ、氷山はその下界を見下ろす。
 冷たく、美しく、そして脆い山岳。
 果たしてその山岳は崩れることになるのか。
 もしくは溶かされるのか。
 溶けた場合、その氷の下には果たしてどんな姿が隠れているのでしょう。



 そして、えりなと並ぶもう一人のヒロインが『田所恵』。
 えりなは創真と対照的な子ですが、恵はえりなと対照的といった感じの子です。
 高貴で華やかな外見のえりなに対し、純朴で質素な外見の恵。
 今時三つ編みおさげにヘアピンなんて子、探してもそうそう見つからないと思いますよ(笑)。
 性格も女王様気質なえりなとまるで違って、臆病で弱気な泣き虫さんというみそっかす気質。
 しかも成績においては、堂々の最下位という始末。
 外見、性格、成績と、見事なまでに三拍子揃った正反対振りです(苦笑)。
 ですが。
 
よく見れば土台はなかなか良質な可愛い子ですし、料理の方も実力を発揮できずにいるだけで、本当は確かな腕の持ち主。
 そして何より、素直で頑張り屋。なおかつ常に相手を気遣うといった、思いやりのある気立ての良い子です。
 一見パッとしないものの、地力はかなりのものを持っている。 
 恵はそんな侮れない子なのです。

 東北の村出身の彼女は、余裕が無くなると方言が出るという癖が。
 個人的には、もうこれだけで応援したくなりますね。(←同じく東北育ち)
 立派な料理人になるため、故郷を離れて遠月学園にやってきた恵。
 地元の家族や友人知人、そして遠月学園で出来た友人達。そんな大切な人達の期待に応えたい。
 それが恵の原動力となっています。

 最初の授業でペアになったのが、恵の創真との縁の始まり。
 
以降、幼馴染の真由美ちゃんを凌駕する勢いで創真とは身近な関係になります。
 同じ学校、学年なのはもとより、同じ一般庶民という立場であり、授業の際もペアで、おまけに同じ寮、極め付けは部屋がお隣同士。
 もうどんだけ。
 
クセの強いキャラクター達の中でも常識人かつ良識派である恵は、それ故にマイペースで大胆不敵な創真にしょっちゅう振り回されることに。
 最初こそ創真を苦手に思っていた恵ですが、創真の高い実力と懐っこさを知るにつれ、次第に信頼と親睦が。
 そして今では、創真と一番の仲良しになりました。(^^)


 創真を「荒野」、えりなを「氷山」とするならば、恵のイメージは「田
 それはほとんどの日本人の心の中にある“故郷”の風景。
 素朴で温かい、心安らぐ癒しの地。
 そして、始めは注目を浴びないものの、水を引き、日の光を浴び、長い目で見守っていけばいつしか豊かな実りとなる。
 恵はそんな大器晩成の子であるに違いありません。


 
 それではここで、二人のヒロインらと創真との関係性を見てみましょう。

 えりなにとって創真は「排除すべき異分子」。
 ただでさえ軽蔑する要因の一つである一般庶民だというのに、立場なんて全然わきまえない態度と無遠慮な物言いをしてくる創真。
 しかもそんな彼の実力に屈服してしまったという、おそらく人生で初めて受けたであろう大きな屈辱。
 そういった経緯から、えりなはあからさまに彼を敵視し、反発しています。
 もっとも、そんな反抗的な態度は、それだけ彼を意識しているということの証明でもありますが。

 創真にとってえりなは「自分の料理を絶対に認めさせる相手」でしょうね。
 創真の料理によってプライドを傷つけられたえりなですが、それは創真にとってもです。
 自分の料理を「不味い」と言われてしまったのですから。 
 これまで自分が不味いと自覚している料理を不味いと言われてきたのは多々あれども、旨いと自信を持っている料理を不味いと言われたのは多分初めてでしょう。
 そんな仕打ちを受けながらも、えりなのように意固地になったり反発したりしないのが創真の立派な所です。
 常に自分に真っ直ぐ接してくれる創真がどれだけ尊い存在か、えりなが気付くのは一体いつになるのでしょうか?

 これまで述べてきたように、立場・性格・料理に対する考え方と全てが正反対な創真とえりな。
 ・・・ですが。しかし。それなのに。
 結構共通点も多いんですよね、この二人。
 自信家でプライドが高いところを始め、強気で「世界が狭い」という点も同じ。
 しかも案外気が合う所も多いという。
 それは3巻から始まる合宿編で露呈されていきますが、まさか「自分の中で大きな意味を持つ存在」まで同じとは思いませんでした。
 対立しながらも、強い因縁で繋がっている。
 創真とえりなの関係はこう言えますね。


 恵にとって創真はなんでしょうね・・・。「心強い存在」・・・でしょうか。
 勿論それ以前に大事な同僚であり仲間であり友人でもあるのですが。 
 退学寸前という、どん底の出だしから始まった恵の高校生活。
 そんな時に創真と出会ったのは、彼女にとって最大の不幸にして最大の幸運でもありました。
 
以降、恵は創真にいつも助けられることに。
 ここまで親しい間柄で、料理面でも精神面でも大きく支えられているというのに、いまだに創真に恋愛感情を抱いていないのが不思議で堪りません(笑)。
 まあ、それでも恵の中で創真は少しずつですが確実に特別な位置になりつつあるようなので、これからの進展に期待、ですね。

 そして創真にとっての恵は、同じく同僚で仲間で友人。
 そして。
 「自分が認めた料理人」。
 これは個人的に確信していることですが、創真の“人を見る眼”はかなりのものだと思っています。
 そんな彼の眼にかなった人物、それが恵です。
 恵の実力を認めていると同時に、彼女の成長を見守ってくれている創真。
  “料理人”という道を共に歩む関係。
 
創真と恵の関係はこう言えるのではないでしょうか。



 さて、ここで公言させて頂きますが、個人的に、えりなは創真と結ばれてほしくない子No.1で、恵は創真と結ばれてほしい子No.1です。
 勿論、創真が選んだ子なら認めたい、応援してあげたい・・・という気持ちはあります。
 それにえりなは創真のブレなさや器の大きさを、そして恵は創真の頼り甲斐さと優しさをと、二人とも創真の魅力をそれぞれの形で引き出してくれる存在ですしね。
 だけど。
 だ・け・ど・も。
 「女の子は素直が一番」と考える私にとって、意地っ張りで嘘つきでことある毎に創真を侮辱してくるえりなは、どう頑張っても創真と結ばれてほしいとは思えません。(ちなみに男は誠実が一番☆)
 しかもただでさえ女王様気質なえりなに、創真が自分の料理の全てを捧げる・・・。そう考えただけで拒絶反応が起きてしまいます。
 根は悪い子じゃないと思ってはいますが、頭では分かっていても心が認められないといった感じです、正直なところ。
 個人的な希望としては、彼女にはあくまで“ライバル”として、最後まで創真と関わっていってもらいたいです。
 それでもえりなのようなツンデレタイプは、後半からの大逆転が怖いですからねえ…。
 普段創真との接点が少ない分、要所要所で大きな印象を与えてくるえりな。
 それだけに油断なりません。

 対して恵は、いつも創真と一緒にいて、ジワジワと親密さが深くなっていくといった形ですね。
 個人的に、本当にお似合いに思えてならない創真と恵。
 並んでる姿がごく自然というか、絵になっているというか。
 えりなが因縁で創真と繋がっているなら、恵は性格や雰囲気が創真とピッタリ嵌るといった具合。
 きっとこれから後、二人は安心して互いの背中を預けられるような、そんな最高の“パートナー”になれるとほぼ確信してます。
 とても安定した仲の良さである創真と恵。
 でも。
 だからこそ。
 恋愛関係までには発展しなさそうな予感もしてしまい、不安になってしまいます。

 創真そしてえりなと恵の関係を考えるたびに、頭に浮かぶ言葉が。
 それは某有名少女漫画の「望みは癒しか挑発か」というフレーズ。
 困難にぶつかり挫折してしまった時、どちらを選ぶか。“癒し”で傷を回復してもらうか、それとも“挑発”で自分の限界を超えさせてもらうか。
 勿論“癒し”は恵で、“挑発”はえりなです。
 なんといっても創真は「ああいう子」ですからねえ~。
 当然のように“挑発”を選びそうで、そこがまた恵派の私にとっては心配になってしまうんです。
 個人的には「ああいう子」だからこそ、“癒し”が必要に思うのですが…。

 創真と恵が結ばれることを願いつつも、えりなと結ばれる予感も拭いきれない。
 どうやら相当長く、こんな悶々とした日々を過ごすことになりそうです(苦笑)。
 


 では最後に、もう一度城一郎氏の発言を振り返ってみての考察を。
 あの発言から、城一郎は「大切な女性(創真の母親)」によって良い料理人になれたようですが、私からしてみれば、創真はこれに当て嵌まらないと思うのです。
 創真と城一郎は確かによく似ています。それは最近本誌の方でもよ~くそれを感じました(笑)。
 でも、創真と城一郎は似てはいますが同じではありません。
 勿論これからの展開の中で、創真がヒロイン達に影響を受けたり、教えられたり、助けられたりする機会は多々あることでしょう。
 ですが。
 創真は女性によって変えられる子というより、女性を変えていく子です。
 この第2巻では郁魅、そして続く第3~4巻では恵と、彼女らは創真によって今まで潜んでいた魅力や実力が引き出されています。
 そしてそれは、きっとこの先えりなも。(12月発売の第5巻では「あの子」も)
 創真によって変わったヒロイン達が、どう創真に影響していくか。
 私はその相互関係を重視していきたいと思います。
 




 ・・・とまあ、ここまで長々と語ってきましたが、これらの考察も今のところほっとんど無意味なんですよね。

 いかんせん。
  

当の創真くん御本人が色恋皆無な方なので。


 

 恋愛感情が欠けてるとか、色恋沙汰に鈍いとかじゃなく元から無い、もはやそーゆーレベル。
 ま、彼のこんなところもまた「ひたすら料理に一途」といった感じで私は好きですけども。(^^)
 はてさて、そんな彼の「特別な女性」は一体誰になることやら。
 願わくば、私も素直に認められるような子と結ばれてくれますように・・・(祈)。



 個性的なキャラクターの連発と、創真の初の食戟に心惹かれた第2巻。
 どうもご馳走様でした!!
 さあ、次巻からは合宿編の始まりです!


≪今巻のベストシーン≫
 93ページ ・・・ 1コマ目

 底の知れ無さを漂わす創真。彼はまさに春に訪れた“嵐”。



≪今巻の“裏”ベストシーン≫
 153ページ ・・・ 6コマ目
 
この創真の笑みが今の私の原点!
          
 182ページ ・・・ 4コマ目
 
上(↑)のような不敵な笑みが多い中、この無邪気な笑顔は超絶レア☆


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『食戟のソーマ』単行本第1巻感想

2013-09-28 19:00:29 | 単行本感想

 それでは『食戟のソーマ』の単行本感想、張り切って語らせて頂きましょう!

 記念すべきこの第1巻は、2013年4月4日に発売されました。
 掲載されている内容は、第1話【果て無き荒野】~第5話【その料理人は笑わない】までの五話を収録。
 『少年ジャンプNEXT!』2012年SPRING号に掲載された「読み切り版」も特別枠として掲載されています。 
 おまけに巻末には、描き下ろしの番外編『倉瀬さんの日記』も。


 この1巻は、主人公である『幸平創真』が本作の舞台となる遠月茶寮料理学校に入学し、最初の授業を受けるまでの、いわば“序章”。
 創真の基本的キャラクターと彼の目標、そんな創真が編入することになる遠月茶寮料理学校とは如何なる所か、そしてメインヒロインである『薙切えりな』『田所恵』との出会いという、この作品の根幹でありベースとなるものが描かれています。

 この単行本感想では、前半は単行本の個々の感想(表紙やおまけ漫画等)について、後半はこの作品または単行本全体の感想や考察を述べていきたいと思います。



≪表紙≫
 第1巻ということで、表紙を飾るのは勿論主人公創真!!
 場所は彼の実家である「お食事処 ゆきひら」。
 そこでの日常の一場面的なイラストですね。
 作中に出てきた料理「なんちゃってローストポーク」を差し出す創真。その後ろにはクラスメイトで幼馴染の『倉瀬真由美』ちゃん。最奥には創真の父親『幸平城一郎』氏も、後姿だけですが描かれています。
 この幸平創真くん、本編中の白黒描写では黒がベースですが、カラーになると赤髪に金眼(黄眼とは意地でも言わねえ)という、なかなか華やかなカラーリングの子なのですね。 
 作画の綺麗さが高く評価されている本作。
 そんな作画の魅力をも引き出せる主人公に思えました。



≪附田先生コメント≫

 附田祐斗先生は、この漫画の原作を担当なさっているお方。
 お話を作るにあたって、料理人の自伝を読むようになられたという附田先生。
 ふと思ったのですが、創真のモデルになった人物とかっておられるのでしょうか?
 私個人の勝手な意見を言わせてもらえば、創真は道場〇三郎先生のイメージですね。
 これまでの“常識”にとらわれない、料理界の異端児。
 飽くなき好奇心とチャレンジ精神で料理に向き合う、感性の人。
 そんなイメージがピタリと創真と重なるのです。 



≪中表紙≫

 中表紙には包丁を構えて決めポーズの創真くん。
 どうやら中表紙には、表紙に取り上げられた人物が描かれる模様ですね。
 創真が手にしている包丁に映り込んでいるのは、この巻のナンバーと代表する話のサブタイトル。
 この第1巻では第1話の【果て無き荒野】が。
 まさに第1巻に、何より創真に相応しいタイトルですね。
 この創真くんの不敵に挑戦的な表情。
 大好きです。



≪特別付録≫

 単行本独自の特典として、作中で出てきた料理のレシピが実用的に応用されて紹介されています。
 この巻では130ページに、第3話で登場の「ゆきひら流ふりかけごはん」が掲載。
 作品中では手羽先は取り除いた形で提供されていますが、ここでは手羽先も一緒に食べる形にアレンジされていますね。
 うんうん、食べられる部分は無駄なく使う。これはとても大事なことですもの。 



≪読切版「食戟のソーマ」≫

 連載版『食戟のソーマ』のプロトタイプといえるこの作品。
 話はというと、料理指南の最高責任者(いわゆる先生)である薙切えりなに編入生の幸平創真が侮辱発言をしたことによって、えりなは勿論のこと周囲の怒りも買い、発言の許しと自身の退学を懸けてえりなの側近と食戟を行うといった内容。
 連載版では主人公創真を中心にして話が展開されていきますが、この読切版ではえりなの視点を中心に話が進んでいきます。
 ここでは読み切り版と連載版との違いを挙げていきましょう。

 まず創真についてですが、まず言いたいのは老けてる!(核爆)
 眉毛がやや太めなせいか、それとも輪郭がやや角ばっているせいか、高校生というより大学生くらいに見えてしまいます。
 性格の方も、父親という上の存在がいないため、連載版創真に輪をかけてマイペースで、輪をかけて無敵(笑)。
 そんな読切版創真と比べると、連載版創真は「少年」っぽさが外見的にも性格的にも付加されていますね。
 喜怒哀楽の感情表現が豊かになり、料理と関係ない日常風景では年相応の少年らしく振舞う様子が2巻目以降から見られます。
 髪型も、少年漫画の主人公の王道ヘアースタイルである、ツンツン頭に(笑)。
 調理の際の服装に関しても、読切版創真の方は和食料理人といった感じの服装でしたが、連載版創真は店名入りのTシャツと、カジュアルな感じに変化しています。実際連載版の方が、和食も洋食も分け隔てなく作るという創真のスタンスに合っていますね。
 左眉にある傷は新旧とも共通ですが、読切版では連載版と違って額に巻く手ぬぐいを腕に巻いていない、「お粗末!」という締め言葉を言っていないなどの違いも。
 あ、でもゲソと七輪、そして強烈な新作料理は相変わらずですね(笑)。

 ちなみに読切版を執筆なされた当時、佐伯先生はまだ男性の体格を描き慣れていなかったのでしょうか。創真の下っ腹が少々出ている(爆死)ように見える描写が時々見受けられました。
 そんな新旧創真の描写の違いは、78ページの「作る品は何でもいいの?」と聞く創真くんと、173ページの「いいよ戦ろうか」と言っている創真くんとを見比べると分かりやすいかと。
 やはり連載版の方が、体格、顔つき共により格好良くなってますね♪
 それと、150ページの互いを「?」と見ている新旧創真くん達は、なんだか兄弟みたいでほっこりしましたv

 次にえりなについてですが、創真に対してえりなの方は外見上の変化はさほど見受けられません。
 それでもよく見れば、髪型が両サイド部分が垂れている等の変更が加えられています。
 あとは制服も多少ですが、リボンとハイソックスが変わっていますね。
 性格も新旧全く変わらずで、高飛車でエリート意識の強い、高慢なツンデレ娘のままです。
 強いて言えば読切版の方が連載版よりもよく「動いている」感じですね。
 大きく変更されたのはむしろ設定の方。
 設定は変わっていない創真に対して、読切版のえりなは料理指南の最高責任者という事実上学園のトップという立場だったのが、連載版では『遠月十傑』の第十席(末席)に在する生徒に変更という、いわば格下げに。
 ですが、これは中々興味深い変更かと。
 だって頂上に居たら、あとは見下ろすことしか出来ませんもの。
 “料理の頂”の頂上から中腹に彼女の立ち位置を移動させたことで、これから上ることも下ることも出来るという、彼女の動きに大きく幅が利かせられるようになったと思います。

 そんなえりなですが、189ページの「賑やかで鮮やかな味わい・・・!」と感想を述べている様子は大変可愛らしいですね。
 朗らかな笑顔と清楚な服という、作中で全く見られないその姿は新鮮さも相まって結構印象に残りました。
 これで性格も良かったらねえ・・・。 
 つくづく残念な子です。

 その他については、『遠月十傑』の設定も変更されてましたね。
 読切版では「イタリアン部門」等、各料理部門の首席生徒達によって構成された委員会でしたが、連載版では学内評価上位10名の生徒達によるものに。
 これもまた、一つの枠に縛られない形になっていて、より自由度が増したと思います。
 そんな『遠月十傑』の一人として、読切版では「ジュリオ・ロッシ・早乙女」というキャラが登場していましたが、少々ツッコまさせて頂いて宜しいでしょうか。
 彼ホントに高校生ですか?
 ゴツいわムサいわ五月蠅いわで、 単なるえりな信者のマッチョさんにしか見えませんでした。
 「フライ返しの“輪舞曲”」なんて、派手な動きの割にはただオムレツ返しただけじゃんと思いましたし。
 まあ読切りでしたから、インパクトのみ重視のキャラに落ち付かせたのは仕方ありませんけども。
 176ページに彼を含む十傑メンバー達がシルエットで登場していましたが、連載版では「高校生」という常識の範囲内でのキャラクターに改正されていることを切に祈ります。 
 左端の巨漢と、右端の帽子小僧なんて、これで「高校生です」と言ってきたら「嘘つけーーー!!!」と全力でツッコませて頂きますよ。 

 最後に、この話全体について。
 この読切版では創真とえりなの出会いと衝突が描かれていますが、連載版でも設定や状況の違い等あれども、根本的には読切版に沿ったものとなっています。
 ですが。
 読切版のラストシーンでえりなは創真に、自分こそが料理の究極だと証明してみせると宣言してますが、連載版ではこれが逆になり、創真の方がえりなに自分の料理を認めさせると宣言しています。
 ここもまた大きく興味を引かれる点ですね。
 読切りでは創真とえりなのやり取りはほとんどえりなの一本通行でしたが、連載版ではこの流れに運んだことで、創真の方もえりなの存在をある意味で気に留めることになりました。
 とはいっても、そこは流石の創真くんなので(笑)、えりなほど固執してはいないのですけども。

 そんな要所要所が連載版に巧みに組み込まれている読切版ですが、実は読んでみて気になったことが2つ。
 ひとつはえりなの料理に対しての、創真の意見。
 この発言が引き金になって食戟へと展開していくのですが、只今連載中の本編において、創真はいまだにえりなの料理を口にしていないのですよね・・・。(2013年9月現在/第40話まで)
 もしこの後創真がえりなの料理を食す機会があった場合、この読切版の流れが反映され、創真とえりな両者のぶつかり合いへと展開していきそうな予感が。
 もうひとつは、181ページ4コマ目のえりなの発言。
 ここではまだ詳しくは述べませんが、えりなが今以上に創真の存在を否定する時がいつか、でも必ず訪れるものと思われます。
 その時が訪れた際、えりなは創真の料理人としての未来を懸けて勝負を挑んでくるのではないでしょうか。
 勿論その時が訪れるまで、創真とえりなの間にどんな紆余曲折があるかは分かりませんがね。

 とまあそんなこんなで、読切りとはちょっと思えないほどの完成度に仕上げられた、中々に読み応えのある読切版『食戟のソーマ』でした。



≪番外編 倉瀬さんの日記≫

 本編の補足ともいえるおまけ漫画が、単行本の最後に掲載されています。
 こういう点が単行本ならではのお楽しみですよね♪
 ここで主役に挙げられているのは、倉瀬真由美ちゃん。
 初めて第1話を読んだ時、初見で「ああ、この子がヒロインなんだな」と思っていたのですが、それ以降出番無しとなり、加えて名前も分からず仕舞いになってしまうとは夢にも思わず。
 そんな色々と不憫な子(苦笑)でしたが、ここでようやく名前共々少しだけスポットが当たってくれましたね。
 肝心の内容ですが、本編第1話の裏側が、真由美ちゃんの視点から見た創真の姿と並行して語られています。
 ここで創真と真由美ちゃんが、幼稚園からの付き合いという筋金入りの幼馴染だったことが判明。
 そして、創真くんは昔から「創真」くんだったということも(笑)。
 真由美ちゃんの回想に幼い頃の創真くんが登場しておりますが、彼の左眉の傷は、小学生の時に付いたのですね。
 同い年でありながら、既に自分の道を決めて真っ直ぐに歩んでいる創真を純粋に尊敬してくれている真由美ちゃん。良い子です。
 数分後惨劇が起きることになりますが(合掌)。
 最後に明かされる、誰にも語られることは無かった創真への積年の想い。
 本当にこれだけでも、このままお役御免となってしまうのは勿体無い子ですよね・・・。
 何より、創真のあの新作料理がちょっとだけ気持ち良いと思えるのは、ヒロインとして大変相応しいかと(笑)。



≪佐伯先生コメント≫

 この漫画の作画の方を担当なされている佐伯俊先生。  
 「原作(=脚本)」は附田先生、「作画」は佐伯先生、となると、漫画の設計図である「ネーム」は一体どちらが担当なさっておられるのでしょうか?
 この作品の演出・構図にはとても感嘆しているので、結構気になってます。
 ※後日談:ネームは附田先生が作成なされているとのこと。
        ですが、肝である食事のシーン(=リアクションシーン)はイメージを伝えた上で佐伯先生にお任せしているそうです。



                                                                           



 単行本単体の感想が終わったところで、次はこの『食戟のソーマ』を全体的に見ての感想を述べさせて頂きたいと思います。


 連載開始当初、作画の綺麗さ、そして何より食後のリアクションに大きな注目が集まったこの作品。
 勿論私もその一人でした。悪い意味で(苦笑)。
 そのせいもあり、正直この作品は丼研編までほとんど読み飛ばしてしまっていました。
 そんな私がどうしてこの作品をこれほど好きになったのか、それは。
 単行本第2巻に収録されている第12話のラストページ。
 不敵な笑みを浮かべる創真。
 そんな彼に惹かれたのが全ての始まりです。


 よって、私もこの作品が好きになったきっかけは作画の綺麗さによるものといえますね。
 ですが、ちゃんと読んでいくうちにその「画力」よりも感嘆させられることになったのが、「演出」です。
 脚本、作画、演出、キャラクター等、“作品”を形作る要素は数多くありますが、私が一番重視しているのが演出。
 演出、それすなわち「魅せ方」。
 この『食戟のソーマ』という作品はとにかくその「魅せ方」が秀逸!!
 分かりやすくもテンポの良い展開の仕方、キメる所、抑える所のメリハリの素晴らしさ。
 特に私が感服させられた演出表現が、「体の一部分だけで魅せること」。
 口元だけ、背中だけを読者に見せ、表情全体は見せないという手法。
 特に用いられているのは「眼だけは見せない」というやり方ですね。
 眼は時に口以上に語る部位。
 この演出によって、“余白”や“溜め”が生まれ、私達読者はその“余白”をキャラクターの全体の表情やその時の心情として“予想”し、“推測”することによって、そのキャラクターの深い読みへと繋がっていくわけです。
 ちなみに、逆もまた然り。
 この作品の「眼力」には言葉を失うほどに圧倒されました。 
 この「眼だけは見せない」という演出。一見簡単なものに思えるかもしれません。
 ですが、実際は少しでも使い方を誤れば、キャラクターに“魂”を感じられなくさせる、作品自体を冷たい無機質なものにさせてしまうという、大変危険な効果も併せ持っています。
 それを一切感じさせることなく、完璧にプラスとして用いている作者の実力には、本当に舌を巻くばかりです。

 次にこの作品の魅力について語りたいのは「作画」。
 これはもはや言わずもがなといったところですがね(笑)。
 もう綺麗というか、美麗というか、秀麗というか。
 個性のある絵柄とはいえませんが、その分老若男女問わず受け入れられる絵柄ともいえましょう。
 キャラクターの喜怒哀楽は勿論、心の動きに伴う繊細な表情の変化等も大変見事に描かれていますし、服や料理といった小道具の描写もバッチリ。キャラクターの体の動きも軸がしっかりしていて、基礎力の高さも充分に窺えます。
 そんな魅力溢れるキャラクターの表情ですが、それと同じくらい私が惹かれたものがあります。
 それは、「手」。
 絵画にとってそこは人体の中で最も描くのが難しい部分。
 そして。
 料理人にとって命と同等に大切な部分。
 現実の料理人の手というものは、切り傷や火傷、あかぎれやタコなど、色々なものが刻み込まれているものです。決して「キレイ」な手ではありません。
 ですが、往々にして描かれる手はため息が出るぐらい綺麗だったり、気圧されるぐらい“力”を感じられたりと、キャラクターの顔と同じくらい“表情”が強く感じ取れます。
 これまでにも他作品で手の描写に惹かれた機会はありましたが、これほど常に惹きこまれるのは初めて。
 それだけ作者の方々が、料理漫画における手の重要性を深く理解して下さっているのでしょう。
 料理を創るには必要不可欠の
 実際この単行本の中表紙でも、手が前面に強調されていますものね。



 それでは最後に、この作品の主人公である『幸平創真』について。
 といっても、この単行本感想を書くにあたって一番語りたかったのが彼の事なのですがね(笑)。
 私が抱いた彼の第一印象は
 「なんとま~~~大した子だこと」
 これに尽きます、もう全ての意味で(笑)。
 この創真って子、本当に今日び珍しいタイプの子ですよね。
 とにもかくにも自信満々。大胆不敵。遠慮や謙遜なんてものは微塵も無し。とどめとばかりにめっちゃマイペース。
 彼の半分は挑発で出来ているのではとちょっと本気で思えるぐらい、天然に、無自覚に周囲の反感と怒りを煽るその様に、見てるこっちはしょっちゅうハラハラさせられます。
 話題を集めたあの料理のリアクションに負けていないキャラクター、もはやそうとしか言いようがありません(笑)。

 そんなある種問題児とも云え、やや共感しにくいだろう性格をした創真。
 既に述べてある通り、外見から彼に惹かれた私ですが、彼の内面で私が彼に最初に惹かれたもの、それは。
 “料理人”としての心構え。
 実は私も「食を提供する」ことを生業とする人間だったりします。
 なので、度々語られる彼の料理人としての信念や考え方にはいつもハッとさせられてばかり。
 本物の“料理人”として、そして“プロ”としての彼の姿勢に、素直に尊敬させられ、そして憧れます。
 料理を相手に出す際、創真が必ず言う「おあがりよ」「お粗末!」という決め台詞。
 彼らしい言い回しになっていますが、これらは「料理を提供する側」としての礼儀に沿った言葉。
 こういうところもまた、彼の確固とした“料理人”としての姿勢が感じられて好感が持てます。
 “真[まこと]”を“創る[つくる]”。
 まさにその名前に相応しい人物といえましょう。

 そして彼のブレなさ。
 「退かない」「媚びない」「臆さない」
 この三大基盤を創真はとにかく徹底して貫いてますよね。
 最初のうちは彼のこういった点は傍若無人なものとして見えるかもしれませんが、読み続けていくうちにそれが次第に爽快なものへと変わっていくのですからあら不思議。
 始めから無敵感バリバリな創真ですが、だからといって彼が「天才型」かといえば決してそうではなく、その実力は長年の現場経験を経て培ってきたものであり、彼はむしろ「努力型」といえます。
 自信過剰ともとられそうな彼の高い自信とプライドにも、そうしたきちんとした説得力が付随しているため、それらがとても澄んだものであるのが次第に分かってくるのですよね。
 初見では反感を抱くかもしれませんが、知れば知るほど好感が持てる子。
 そんな人物だと思います、創真という子は。

 創真の特徴は左眉にある傷。
 そしてもう一つは、左手首に巻いてある手ぬぐい。
 ここ一番といった際には、創真はこの手ぬぐいを額に巻いて調理に挑みます。
 この「手ぬぐいを額に巻く」という行為、結構多くの意味合いがありますよね。
 ひとつは「衛生上」。これは至極尤もなこと。
 ふたつめは「気合の充填」。いわば鉢巻きのような役割。これは少年漫画において結構大事。
 そしてみっつめ。これが漫画という、視覚を必要とするものにおいて一番重要なことと思います。
 それは「絵面が映える!」(爆)
 マントや旗が良い例ですが、「はためく物」があると、それだけでかなり画面が華やかになるんですよね~。
 おまけに巻く時だけでなく、解く時も大きく魅せてくれるという。
 一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなる、まさにスペシャルアイテムです。
 そんな手ぬぐいですが、左眉の傷と共に、その「由縁」が明かされる時がいつか訪れるのでしょうね。
 その際には果たしてどんなエピソードが紡がれるのか、今から期待しています。

 
 周囲の学生達とは違い、1人だけ中学からの学生服(学ラン)を着用している創真。
 これもまた彼の「異端性」を示すものとなっていますね。
 英才教育を受けてきた料理業界のサラブレッド達が集う中での、たった1人の外部からの編入生。
 エリート意識が高い風潮に真っ向から対立する創真の特異さを、彼だけ違う服装にすることによって表しています。
 実際、創真はブレザーよりも学ランの方が似合ってるし(笑)。

 
そして創真がその制服の下に着ているのが、実家である「お食事処 ゆきひら」のTシャツ。
 料理の際は当然のこと、通学中もプライベートな時でも着ていますが、寝る時まで着ているのにはさすがに驚かされました(笑)。
 その店員服を常に着ていることから、創真にとって「お食事処 ゆきひら」はとても大切な存在なのだということが窺えます。
 そしてこの事は、自分が「お食事処 ゆきひら」の店員だということの誇りにも繋がっているのでしょう。


 彼の武器は型に嵌らない、自由な発想による料理。
 その料理の腕をもって、立ちはだかる敵を痛快に倒していきます。
 そしてその料理以上に強力なのがその「お口」(笑)。
 倒すべき敵に対して、その料理で屈服させ、そのお口で容赦無く攻める。
 そんな彼の発言スタイルを、私は「言葉責め」ならぬ「言葉攻め」と命名(爆)。
 この作品において、彼に口で勝てる相手はいないと本気で思っています。
 
 そんな創真の料理の腕前と口の達者さは、いうなればフィジカル的な武器。
 では彼のメンタル的な武器はというと、純粋なポジティブさと屈強なタフネスさ。
 
失敗を「非」としない。むしろそれさえも受け入れ、自分の糧とする。
 角ばった形式や偏見に全く囚われない、真っ直ぐな物の見方。
 権力等に絶対動かされない、自我の強さ。
 それでありながら
軟な考え方や発想力も併せ持っているという。
 それは料理だけに留まらず、周囲の物事に対しても。
 フィジカル的なものよりも、創真のこのメンタル的なものこそが彼の最大にして最強の武器と言えましょう。

 第一話の冒頭から語られ、大きな印象を与えた彼の壮絶に不味い失敗作。
 これを他人にも食べさせるのが創真の最大の悪癖といわれてますが、この事も上記の理由に裏付けられているのですよね。
 料理への偏った先入観を持たないからこそ、明らかに合わないであろう食材の組み合わせにも挑戦する。
 失敗を否定しないからこそ、「不味さ」も「美味しさ」と同様にひとつの“味”として受け入れている。
 
だから他人にも喜んで失敗作を勧めるのでしょう。
 その“味”を知って欲しいから。
 本当に、本当に創真は心から料理が好きな子なのですね。

 飄々としてるのに熱血漢で、至ってマイペースなのに常識人的な部分もあったり。
 プライドが非常に高いけど、人の話はきちんと聞く素直な子でもあったり。
 大人顔負けのプロの料理人でもあれば、普通の少年でもあったり。
 見ててどうしようもなくハラハラさせられるのに、何故かとても安心も出来るという。
 物凄く絶妙な子です、創真は。
 しかもそれでいてキャラクターが全く破綻していないという。
 まったくもって、附田先生は大した主人公を生み出してくださったものです。
 創真への褒め言葉は無尽蔵に出てきますが、一言でいうならばかっこい!!!
 
これに尽きます。


 彼はまさに「荒野」そのもの。
 それは第一話のサブタイトルにして、最初に語られている通り。
 湿り気の無いカラッと乾いた世界。
 時に嵐が巻き起こる。
 無限に広がる大地。

 とんでもない大器を感じさせる主人公、幸平創真。
 そんな彼の成長と活躍を、最後まで見守っていきたいと思います!!!


 とにもかくにも、これからが大いに期待できる『食戟のソーマ』第1巻。
 どうもごちそう様でした!!



≪今巻のベストシーン≫
 126ページ ・・・ 1&2コマ目
 
この宣告が全ての始まり☆



≪今巻の“裏”ベストシーン≫

 119ページ ・・・ 12コマ目
 「女王」の顔がブッ壊れた瞬間(爆笑)


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