愛知学院大学青木ゼミのブログ

愛知学院大学商学部青木ゼミの活動を報告するためのブログです。

行学一体

2011年01月06日 | 運営
日本の私立大学の雄といえば,早稲田大学と慶応大学です。私立大学の中でこれらだけが名門国立大学に対抗できる存在であるといっても過言ではありません。この両雄,入学難易度,卒業生の活躍度,研究教育の水準,社会的威信,歴史などで拮抗しているのですが,実は校風はかなり異なっています。

慶応大学は現役学生・卒業生間のつながりが密なことで有名です。3人寄れば三田会(同窓会)ができるといわれる程同窓会活動が盛んです。そして卒業生の愛校心が強く,多額の寄付金が集まるといわれています。その一方で,早稲田大学は,現役学生・卒業生間のつながりは薄く,卒業生の数は慶応大学より多いにもかかわらず,比較すると稲門会(同窓会)の結成は低調です。それ故寄付金集めに大学は苦労するといわれています。

なぜこのような違いが生まれたのか不思議に思っていたのですが,それが建学理念に起因することに思い至りました。慶応大学は社中協力という理念を掲げています。教職員,現役学生,卒業生が肉親兄弟のような関係を持って協力し合い,大学を支えていくという理念です。三田会の隆盛はこの理念の具現化なのです。建学のころから,理念に近づくよう関係者は努力してきたわけです。早稲田大学にはこのような理念はありません。

その一方で早稲田大学には模範国民の造就という理念があります。国家エリートを養成することが目的だった官立大学に対抗して,在野のリーダーを養成しようという考えでした。各地から学生を集め,それを教育して各地・各界・各層へ人材として送り出すことを目指したのです。そのためか一匹オオカミ的な人材が多く輩出され,現役学生・卒業生間のつながりは薄くなったのです。

近年,大学の人材輩出力を測る指標として就職率,それも有名企業への就職率を用いて,大学を評価する動きが雑誌メディアで見られます。それによれば,慶応大学は私立大学トップで東京大学にも匹敵するほどの抜群の就職力(人材輩出力)を持つ一方で,早稲田大学は見劣りがすると述べられています。人材輩出力は慶応圧勝という記事すらあります。早稲田側からすると(卒業生の1人としては)ずいぶん一面的な見方のように思われます。そもそも早稲田大学は在野のリーダー養成が理念なので,有名企業への就職者輩出を必ずしも重要なことだとは考えていないのです。そして校風も有名企業への就職率を高めるものではないのです。そのため,有名企業就職率は慶応と比べれば低くなるのです。慶応大学の有名企業就職率の高さはその校風によるもので,とくに三田会の充実によって,現役学生の意識,卒業生のサポートが向上しているためだと指摘されています。校風の違いは,学生の就職行動の違いにも現れているのです。

ところで,愛知学院大学の建学理念はどんなものなのでしょうか。それは行学一体・報恩感謝です。仏教精神、特に禅の考え方に基づいて,行学一体の人格育成に努め,報恩感謝の生活のできる社会人を養成することを目標としています。行学一体とは,修行すなわち人間形成と知識習得が一体であることを意味してます。単に知的な理解だけに満足しないで,進んで身心を傾けて真に身についた学問を体得して人間的に立派になることをめざす修学態度が重要だというのです。立派な理念です。愛知学院大学は行動力のあるビジネスマンを多く輩出して中部経済界では一定の評価が得られています。この理念が重要な役割を果たしてきたと思います。しかしながら,この理念が校風形成にどのように影響を与えていきたのか,あるいは人材育成にどのように関わってきたのか,実はよく分からないでいます。

ただ,今年は,この理念を意識した教育をしようと思っています。まずはゼミで,日常の行いは皆学問習得に結びついているのという考えを徹底したいと思っています。ゼミ生には,本を読む,講義を聴く,ノートを取る,それらだけが学修ではないということを知ってもらいたいと思っています。日常の一コマ一コマを大事にしてもらえるようなゼミの雰囲気を作っていきたいと思っています。行学一体の私なりの解釈です。その実践によって,建学理念が校風形成にどのように影響を与えていきたのか,あるいは人材育成にどのように関わってきたのか,自分なりに答えを出してみようと思っています。
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