春休み中,読書の機会があるならば,ゼミ生たちにはマーケティングに関する専門的な本も読んで欲しいと思います。せっかく大学で専門的な講義を聴いても,自分で進んで関連する内容の文献を読まなくては,専門知識が定着しません。
ここではお勧めの専門書を紹介します。ただ,あまりに難解な内容では,理解することができず,時間の無駄になってしまいますので,大学生の学力レベルで十分読みこなせるものを紹介します。激安商法や原材料価格高騰など,昨今価格に関するニュースを目にすることが多いので,それに関連する本です。
第1は,エレン・ラペル・シェル『価格戦争は暴走する』筑摩書房。これは,近年あらゆる消費財に広がってきた低価格化現象を取り上げて,その実現の仕組み,消費者の購買心理,産業や経済全体に及ぼす影響を説明しています。激安商法の創始者たちという章では,現在の小売業界を席巻しているディスカウント・ストアの仕組みと経営史を簡単に解説しています。こうして価格にだまされるという章では,脳科学や心理学の知見を用いて,安売りがどのように人々を魅了するのか説明しています。ますます貧しくなる生活という章では,安売りを実現するための企業のコスト削減努力が労働コストの引き下げにも及び,賃金の引き下げによって私たちが貧しくなってきた状況を説明しています。安い食べ物の落とし穴という章では,安売りされている商品の危険性を指摘しています。
この本(訳本)の原題は Cheap:The High Cost of Discount Culture です。安売りがもたらす高い代償という意味ですが,これを読むと安売り商品を買うことは実は高くつくことが理解できます。無駄な出費をし,危険な商品を入手するという意味で売買面で我々は得をしているとはいえないことが分かります。そして,低価格化が我々の生活を破壊して,社会全体で大きな犠牲を払うことになっているかもしれないことも分かります。まさに今の我々の経済のあり方を警告しています。
第2は,大崎孝徳『プレミアムの法則』同文舘。この本は,低価格化が進行する現在,あえて高く売ることができる商品のマーケティングに関心を寄せ,同じカテゴリーの中で高価格を維持している商品の事例を分析して,高価格マーケティングの法則性を導き出しています。分析している事例は,フジパンの本仕込,サントリーのプレミアム・モルツ,花王のアジエンス,トヨタのレクサスなど我々におなじみの「ちょっといい商品」です。分析から,消費者ニーズを捉えつつも,消費者の想定を大きく超えた品質が実現されていること,その結果機能的価値がきちんと実現されているので明確なメッセージの広告が展開されていること,企業においてトップの強いリーダーシップや全社一丸体制が見えることなどを導き出しています。
著者の大崎先生は名古屋マーケティング・インカレを一緒に運営している仲間です。仲間の本を推薦するのは,仲間ほめということでほめ言葉に信憑性がないと感じられるのかもしれませんが,実際に読んでみると事例収集に多大な労力を傾たことが分かり感心します。面白そうな事例をつまみ食いして読むだけでも学ぶことが多いといえます。うちのゼミ生にはおなじみの先生が書かれた本なので,とくに注目して欲しいと思います。
ここではお勧めの専門書を紹介します。ただ,あまりに難解な内容では,理解することができず,時間の無駄になってしまいますので,大学生の学力レベルで十分読みこなせるものを紹介します。激安商法や原材料価格高騰など,昨今価格に関するニュースを目にすることが多いので,それに関連する本です。
第1は,エレン・ラペル・シェル『価格戦争は暴走する』筑摩書房。これは,近年あらゆる消費財に広がってきた低価格化現象を取り上げて,その実現の仕組み,消費者の購買心理,産業や経済全体に及ぼす影響を説明しています。激安商法の創始者たちという章では,現在の小売業界を席巻しているディスカウント・ストアの仕組みと経営史を簡単に解説しています。こうして価格にだまされるという章では,脳科学や心理学の知見を用いて,安売りがどのように人々を魅了するのか説明しています。ますます貧しくなる生活という章では,安売りを実現するための企業のコスト削減努力が労働コストの引き下げにも及び,賃金の引き下げによって私たちが貧しくなってきた状況を説明しています。安い食べ物の落とし穴という章では,安売りされている商品の危険性を指摘しています。
この本(訳本)の原題は Cheap:The High Cost of Discount Culture です。安売りがもたらす高い代償という意味ですが,これを読むと安売り商品を買うことは実は高くつくことが理解できます。無駄な出費をし,危険な商品を入手するという意味で売買面で我々は得をしているとはいえないことが分かります。そして,低価格化が我々の生活を破壊して,社会全体で大きな犠牲を払うことになっているかもしれないことも分かります。まさに今の我々の経済のあり方を警告しています。
第2は,大崎孝徳『プレミアムの法則』同文舘。この本は,低価格化が進行する現在,あえて高く売ることができる商品のマーケティングに関心を寄せ,同じカテゴリーの中で高価格を維持している商品の事例を分析して,高価格マーケティングの法則性を導き出しています。分析している事例は,フジパンの本仕込,サントリーのプレミアム・モルツ,花王のアジエンス,トヨタのレクサスなど我々におなじみの「ちょっといい商品」です。分析から,消費者ニーズを捉えつつも,消費者の想定を大きく超えた品質が実現されていること,その結果機能的価値がきちんと実現されているので明確なメッセージの広告が展開されていること,企業においてトップの強いリーダーシップや全社一丸体制が見えることなどを導き出しています。
著者の大崎先生は名古屋マーケティング・インカレを一緒に運営している仲間です。仲間の本を推薦するのは,仲間ほめということでほめ言葉に信憑性がないと感じられるのかもしれませんが,実際に読んでみると事例収集に多大な労力を傾たことが分かり感心します。面白そうな事例をつまみ食いして読むだけでも学ぶことが多いといえます。うちのゼミ生にはおなじみの先生が書かれた本なので,とくに注目して欲しいと思います。